2007年09月09日「ホームレス中学生」 田村裕著 ワニブックス 1365円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

「地獄で仏」ってあるもんですなぁ。

 けど、会うには条件があるんですねぇ。それは、自分からアピールする。話すこと、伝えること。黙っていたってだれも気づいてくれないもの。
 だから、自分からメッセージを発信することが大切なんですよね。

 麒麟・田村による「貧乏自叙伝」。これ、読んだほうがええで。

 「ご覧の通り、まことに残念ではございますが、家のほうには入れなくなりました。厳しいとは思いますが、これからは各々頑張って生きてください・・・解散!!」

 子ども3人を集めて父親がそう宣言するわけ。これ、漫才のネタにしてますもんね。有名ですよね。
 
 父親は元もと製薬会社の課長さん。不器用で愛情表現ができない人。金持ちではないけれど、晩ご飯の後にメロンを食べることもあったくらいの家庭が差し押さえをくらっちゃった。
 妻(田村にとっては母親)を癌でなくし、自分も癌になり、入院中にリストラされちゃって、「頑張るモード」も電池切れ。

 で、解散!!だもの。

 一家離散の憂き目になったとき、ホームレスにならざるをえない時、どうすんだろ? やっぱり、公園? 親戚を頼るにも頼れない事情があるし、先生に相談して行政の保護を受けるとか?

 けど、この3兄姉弟は自分たちで各々なんとか生きよう、としたわけ。
 いちばん辛いのはメシが食えないことよ。お金ないんだもん。
 「公園で暮らした」「ウン○の神様」「草で腹を満たした」「段ボールを食べた」・・・すべて実話。あの段ボール肉まんのニュースを世界でただ1人、実感をもって聞いてた人だろうね。

 けどさ、捨てる神あれば拾う神もいるんですなぁ。これ、人徳だと思う。明るい性格が幸いしたんだよ。
 たまたま会った同級生に
「メシ、食べさせてくれんやろか?」。
「どしたんや?」
「実はな・・・」
 だれにも言えなかったことを話す。恥より食欲が勝ったわけだ。この子が親に話す。親がいい人でな。
「そしたら、ここで暮らしたらええ」

 ほんわかとした大阪の下町人情が伝わってきまっせ。貧乏なんかに負けへんで。死なんでぇ。気張るでぇ、というド性っ骨かな。

 小泉政権5年の間に、日本はアメリカ同様、一握りの勝ち組と多数の負け組とにくっきり分かれてしまいました。1億総中流社会なんて、いまは昔。「ホームレス」なんて言葉は大人の世界の話だけだと思ってたんだけど。

 本書にはいい大人がたくさん出てきます。みな、貧乏だけど、子どもの友達を助けてやろうという心の余裕がありますな。
 アルバイトを紹介してくれたり、決まりかけてた里親問題を白紙に戻すように行政に掛け合ってくれたり、みなで少しずつお金を出し合って3人一緒に暮らせるようにしてくれたり・・・。「いい大人たちの物語」でもあるんよ。
 
 やっぱり、これ、「人間喜劇」ですな。吉本新喜劇、松竹新喜劇を地でいってまっせ。貧乏なのに暗くないもん。だから、読んでて救われるのかも。
 これ、吉本、舞台にかけたらええねん。全国の中学生が舞台見まっせ。出張演劇で儲けられまっせ。

「がばいばぁちゃん」「タケシくん、ハイ!」レベルやろか。たぶん、2時間枠のドラマになるやろな。もしかすると映画までいくかもしれんな。
 視聴率が取れる条件が山ほどあるもんな。今どき珍しいテッパン企画でっせ。10月の番組改編に合わせて頂戴。
 民放では2時間枠しか考えられんけど、NHKの銀河ドラマはどやろ? 「タケシくん、ハイ!」もこの帯でしたな。私がプロデューサーならもう動いてるな。
 期待してまっせ。300円高。