2008年06月26日オバマの演説力

カテゴリー中島孝志の不良オヤジ日記」

 6月1日にこのサイトで、マイコミ発行の「COBS」というフリペから「オバマのスピーチについて語ってください」と言われちゃってさ。

 今月末に発行されるから、ここではあまり詳しい分析結果を紹介できないんだけど、と書いたんですけど、昨日、発行されたから、いったいどんなこと書いたのか、紹介しちゃいますね。

 めちゃくちゃ演説がうまい。ハスキーなセクシーボイス。韻を踏んだ英語。だんだん盛り上がって熱を帯びてくるメッセージ。
 これはウケるわなあ。綾小路きみまろみたいな面白さはないけど、お金を出しても聴きたくなる魅力がある。
 アメリカ人は好きだろうなあ。たぶん演説会は超満員。どうもボブ・ディランのフォークソングを聴いてるような気分になっちまうな。

 英紙「タイムズ」の元編集長ウィリアム・リース=モッグは「ケネディより優れてる」と絶賛してた。

 ケネディ?
「Ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country(国が何をしてくれるかではなく、国のために何ができるかを考えよ)という名演説で有名なあのカリスマか?

 たしかに、オバマかニューハンプシャーで負けた後のスピーチは凄かった。

「Yes we can to justice and equality.
 Yes we can to opportunity and prosperity.
 Yes we can heal this nation.
 Yes we can repair this world.
 Yes we can.」

「Yes we can〜」の連発はヒップホップ・ミュージシャンの心を打ち、すぐに唄となって全米に流れた。You-tubeでは600万回も流れたらしい(サブタイトルの英文がその一部)。

 かつて日本には「言語明瞭、意味不明」と自戒する総理大臣がいた。いまブレイク中のDAIGOは「祖父はアイムソーリ、ボク総理」と1人でウケてたというけど、アメリカ大統領(候補)選は内容がなくちゃ話にならない。
 アメリカ人はわかっていてもいなくても、人の話はしっかり聴こうとする姿勢があるからだ。

 さて、オバマのスピーチのどこがそんなにウケるのか? 彼の演説力をとくと分析してみよう。

 政治家のスピーチは、言葉によって聴衆を鼓舞しなければならない。ファンにするという目的があるからだ。

 空疎な話じゃ聴くだけムダ。内容があって当たり前。だが、それだけではライバルには勝てない。プラスαの魅力=聴いててワクワクどきどき、元気になる、感動したい。なぜなら、アメリカ人はいつも教会で神父や牧師のスピーチを聞き慣れているからだ。彼らよりエネルギーがチャージできるスピーチでなきゃダメだ。

 ポイントは3つ。
1声質(オバマの声はハスキーでウケる)
2ボディランゲージ(アメリカ人はみな得意)
3そしてなによりも重要なのは?演出・・・だ。

 アイオワでの勝利メッセージ等を分析すると、ほかの候補者には見られない、したたかな「オバマの法則」を発見した。

1 表現はシンプルに!
 なるべく、好感度の高いキーワード、メッセージ性の高いキーワード、だれもが知ってるキーワードを選ぼう。そして多用しよう。たとえば、HopeやChangeである。

2 盛り上げよう!
 スピーチは1ツカミ、2だんだん盛り上がって、3ラストはクライマックスのエンディング。この3部構成がベスト。

3 リズムに乗せよう!−−「津波効果」のあるスピーチにするには、何度も繰り返せるフレームワークを持とう(=リフレイン効果)。するとリズム感が出てきて聴衆を乗せることができる。

4 3部構成で共感させよう!−−同じリフレインでも主語と時制を微妙に変えている。前半は「They said〜」。中盤は「You have done〜」。「あなた=聴衆」に主眼をおき、しかも現在完了形。いちばん重要なラスト部分は「I will〜」。1人称+未来形(意志の表現と兼務)だ。過去から現在、未来へと夢をつなげ、「皆さんの中の私」という同志意識をアピールしている。

5対立言語を上手に使おう!−−「恐怖よりも希望を」「分断でなく団結を」「過去ではなく未来を」「停滞よりも変化を」というように対立言語を使うと、後者(希望、団結、未来、変化)がより目立つのだ(=コントラスト効果)。

 あとは、大きな声でゆっくりと(オバマは少し早口!)、わかりやすい言葉で明るく話せば・・・あなたも今日からオバマになれる?

 こんな原稿でした。でもね、私ゃいちばん心を打つのはやっぱマルティン・ルーサー・キング=キング牧師ですね。あまりに好きなんでiPodにも入れてます。オバマにしてもそうだけど、アメリカの政治家はほとんどキング牧師の演説をベースにしてると思うよ。


キング牧師。抜群のスピーチ。

「I have a dream.
 いつの日か、ジョージアの赤土の上で
 かつての奴隷の子孫たちと、かつての奴隷主の子孫たちが
 ブラザーとして同じテーブルに向かって腰掛ける時がくる
 という夢」
「I have a dream.
 いつの日か、私の4人の子供たちが肌の色ではなく
 人となりによって評価される国に住むという夢」

 このリフレインの後に締めのフレーズが来ると、ボルテージはピークに達するわけ。

「私たちが自由の鐘を鳴らす時
 私たちがアメリカのすべての村
 すべての教会、すべての州、すべての街から
 自由の鐘を鳴らすその時
 すべての神の子、白人も黒人も、ユダヤ人も非ユダヤ人も
 プロテスタントもカソリックも
 みなが手を取って古くからの
 黒人霊歌を歌うことができる日が近づくだろう」

 なんともすばらしいね。でね、大切なことはこういう真言は、人格から発せられるものなんだということ。ここが大切。