2018年01月08日「通勤快読」てこんな感じです。

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 「通勤快読」をオープンします。今年初の本=『北朝鮮 核の資金源「国連捜査」秘録 上編』(古川勝久著・1,836円・新潮社)」です。

 下記のようなお話なのよ。460頁もあるんで3回連続でお届けした1回目の分です。

 「北朝鮮はどこかの国が制裁を強化すれば、必ずそれを出し抜いてきました。

 「日本は北朝鮮関係者の巣窟だ!」

 2013年7月、パナマ運河通過中の北朝鮮貨物船「チョンチョンガン(清川江)号」を捜索。
 容疑は違法薬物の密輸でした。

 ところが見つかったのは、ソ連製のミグ21戦闘機や地対空ミサイルシステムなど大量の兵器。31ものトレーラーとコンテナに隠されていたんです。大量の砂糖袋で隠されていました。

 ブツはキューバの軍港マリエル港で積まれ、北朝鮮に向かう途中。ギリギリで回避できたからいいようなものの、こんなのは例外。ほとんどはまんまと北朝鮮に運び込まれています。

 だから、核実験もミサイルも完成したんですよ。

 著者の任務は国連の制裁違反事件の捜査です。

 主犯は北朝鮮の海運会社OMMと断定しました。この会社は世界中に北朝鮮のエージェントを配しています。外交官として北朝鮮大使館に赴任しながら、実際にはOMMの現地代表者をしていたり、地元企業の従業員になりすましていたり、西洋風のニックネームを使って偽装したり、なんでもありです。

 新橋の駅前ビルにもエージェントがいました。内偵していて(完璧な証拠を揃えてから絶対ここに戻る!)と決意して1カ月後。1007号室はもぬけの殻。

 こんなことの繰り返し。

 国連安保理のもとで様々な制裁違反事件の捜査に携わってきました。

 なぜ北朝鮮は『最強の制裁』を何度も受けながら、強力な核兵器やアメリカにまで届く長距離弾道ミサイルを開発することができたのでしょうか?

 最初の制裁が決議されたのは2006年10月14日。あれから12年。この間、6度も核実験を繰り返し、ミサイルの性能を向上させ続けることができたんでしょう?
 なぜ中国とロシアをはじめ、多くの国々が制裁に違反したり、北朝鮮をかばったりするのでしょうか?
 国連加盟国は、どのように制裁を実行してきたのでしょうか? そして北朝鮮はいかにしてそれを逃れてきたのでしょう? なぜ北朝鮮の非合法活動に積極的に加担する国がたくさんいるのでしょう?

 事前に少し説明しておきますと、国連の制裁委員会は、すべての安保理メンバー国の同意がないと何も決定できません。中国と露西亜もメンバーです。彼らが反対するとなにもできません。

 オバマ政権時代、イラン核開発問題やアルカイダ等のテロ対策が優先課題とされました。欧米の関心はイラン。北朝鮮にはありませんでした。

 かといって、安保理が機能停止してしまうと中ロにとっても問題です。ですから、北朝鮮が核・ミサイル事件を行った時だけ、中ロは最低限の制裁に協力してくれました。

 いつもは制裁妨害する「サボタージュ要員」ばかりが送られてきます。中国人曰く、「優秀なロシア人が来ると捜査妨害されかねない。だからアイツでいいんだ」。

 せっかく入手した違反容疑の証拠にしてもコピーできない。筆記で書き写すしかない。しかしそれが判決文に採用されることはありません。情報公開制度がここまで異質なんです。

 国連では「弾道ミサイル技術を使用した発射」は明確に禁止しています。ロケットもその対象です。
 しかし正当化する擁護者がいました。
 北朝鮮の軍事パレードにお目見えした新型ミサイル(火星13型)を「あれは模型だ。本物じゃない」「張り子の虎だ」と擁護する。

 軍事パレードで実物のミサイルが登場すると思うほうが世間知らずです。こんなものは共産国家の伝統的手法じゃないですか。

 北朝鮮は中国から輸出された特殊車両を改造して「新型移動式発射台計6台」を作り上げています。

 そういう違反容疑をまとめた報告書は中ロに邪魔され、「幻の報告書」にしかならない。オンライン上にリークされても法執行上の根拠にはならないんです。

 中国人の委員は強く反発します。ロシア委員も加勢します。「似ている」というだけで報告書に書くのは早計にすぎる、というわけです。国連安保理で議論が延々と続いていました。

 多くの中国企業が制裁違反に加担しています。中国企業の関与を記述すると中国の委員がすべて消去します。
 著者とは敵対関係にすらなっていました。安保理で拒否権を持つ中国が反対すれば決議は通らないからです。
 相手は人民解放軍大佐。若手エリート。制裁違反事件を捜査する任務を負いながら、中国企業の違反については指摘してはならない、という役目です。

 あれだけ調べ尽くした制裁違反の実態が「なかったこと」になるわけです。それどころか、中国政府は著者を「過激分子」として専門家パネルから追い出そうとしていました。

 外交ゲームと引き換えに幕が引かれました。どの政府からも支援を得られないなか、公開情報だけを頼りに中国側と渡り合っていたことを知ります。

 日・米・韓の政府は著者たちが探していた証拠を持っていました。持っていながら追及をさっさとあきらめていたんです。

 容疑のある中国航天という会社には反省の色はみじんもないどころか、ミサイルや移動式発射台の宣伝をさらにエスカレートする始末。

 発射台はどんな悪路でもミサイルを水平に保てるようコンピュータで姿勢制御されています。悪路を走り続けますからタイヤやサスペンションは消耗しているはずです。交換部品がなければ話になりません。
 いったいそれらの部品をどこから調達しているのでしょうか? スペアは、安保理の対北朝鮮禁輸リストには明記されていません。

 17年11月29日、北朝鮮はアメリカ本土を射程に収める新型ICBM「火星15型」を発射しました。ミサイルを搭載した新型の移動式発射台は9軸18輪の車両でした。

 いままで見たこともない代物です。

 欧米のメディアは、核兵器を持っていないイランには強い関心を持ってるのに、北朝鮮にはなんの関心も示しません。

 明日も続きます。」

 てな感じなんすよ。政治、経済、社会、投資、歴史、文学、宗教、漫画など、雑学の塊です。ぜひ一度ご視聴ください。。。