2018年05月22日電力会社に注目。。。

カテゴリー中島孝志のとってもいい加減な市場観測日記」

 「世界中の要人でいちばん外交(「交際」ではなく「交渉」という本来の意味)が巧いのはだれ?」
 「金日成。それから金正日」
 当時、国連NY本部に勤務してた友人への質問。いまなら金正恩というかもしれませんね。

 機を見るに敏というか抜け目ないというか狡猾というか、口先だけで凌いできた連中ですから命懸けです。
 若親分ではなくチンピラの口からですけど、「南北閣僚級会談ドタキャン」に続いて「米朝首脳会談中止」まで囁く始末。

 それにしても、北はアメリカをよく研究しています。このくらいの諜報活動をわが国政府にも期待したいところです。

 イスラエルとサウジのためにイランとの戦争を覚悟しているトランプにとって、中東と北朝鮮の二正面作戦は避けたいところ。はっきりいえば、極東よりも中東のほうがはるかに重要です。だから、とりあえず北朝鮮とは和解しておきたい。
 金正恩はリビアのカダフィの二の舞だけは避けたい。リビア方式だけは受け容れられないと駄々をこね、中国に保険をかけています。

 核査察にも応じているイランが核開発などできるはずがない、とヨーロッパは核合意離脱を決めたトランプと距離を置いていますが、イランとのビジネスよりもアメリカとのそれを優先するのは当然。せっかくイランとのビジネスが動き始めたヨーロッパにとっては痛し痒し。

 トランプは、FRBに対して急激な利上げをセーブするように指示しているのではないか、と思います。





 5月16日に10年物債券が3.09%まで上昇。結果、上げ続けていたダウは191ドルの下落。調整となりました。先週末には長期金利が下がり、ダウは上昇となっています。
 米朝首脳会談と当てた6月12、13日のFOMCは「利上げ」発表があるでしょう。しかし、年内あと2回。トータル4回の利上げとなるかどうかは、インフレ率云々(落ち着きつつあります)というより、やはり、LIBORの上げ次第となるのではないか、と私は考えています。



 アメリカの米国債発行残高は増え続けています。もちろん、1.5兆ドルずつの減税、インフラ投資をするからにはそれだけの負債を膨らませるしかありません。連邦負債残高は2030年には37.8兆ドルまで増える、というのが当局の予測です。
 金利圧力が強くなれば、当然、個人には住宅金利、法人には投融資金利が上昇します。なんのための減税か、となってしまいますから、長期金利をトランプは上げたくないのが本音。トランプの腹づもりを「忖度」したFRBの議長、副議長、理事たちが一斉に利上げトーンを落とし始めています。日本以上の「忖度社会」ですが、「忖度」とは、そもそも権力者に対する役人の「おもてなし」のことですから、昇進意欲の強い人間には本能的に備わっている素質なのです。



 金価格については、トランプリスクで上昇しなければならないのに、現実には1250ドルから1350ドルのボックス相場。金利が上がれば1200ドルもありえる、という噂も出てくるほど下げ基調で、1300ドルをあっという間に切ってしまいました。原因は、米朝首脳会談の成功予測ではなく、中国が手持ちの金をそっと売っているから、というのが私の予測です。

マーケットにおける地政学的影響度は、北朝鮮よりも圧倒的にイラン問題です。金価格は上がらねばならないにもかかわらず下げ続け、原油価格だけが上がり続けるとはどういうことか? バレル80ドル超ではまさに対極です。



金価格と原油価格はほぼ順相関でしたが、プラザ合意以降のドル高是正を過ぎると、「強いドルが国益」と方針転換したのがクリントン政権の財務長官ロバート・ルービンでした。原油価格も金価格も抑圧された時期です。ブッシュ・ジュニア時代からはじまった湾岸戦争(第二次)からリーマンショックまで一方的に上げ続けます。

 リーマンショックを境に金価格と原油価格が乖離するようになりますが、トランプ政権になると、サウジアラムコの上場、中東の戦争危機、なによりサウジをはじめとした産油国の談合(OPECとロシアの協調減産と急激な在庫の落ち込み)、シェールオイルの生産調整、なによりマーケットが日銀のテーパリング転換可能性を捨てきれないでいますから為替はしばらくドル安が続いていましたからね。原油価格の上昇圧力になりました。



では、金価格はこれからどう動くのか?

 長期金利は上げ基調。中国が金を売ってまでドルを猛烈に欲しがっています。となれば、ドル安からドル高への転換。そもそも、去年の10月からFRBはテーパリング。日銀は相変わらず長期金利にはふたをしています。日米金利差が広がる一方ですからドル高円安になるのが理屈。ようやく理屈通りになりつつありますが、「イベント」1つであっという間に円高に逆戻り。つまり、金価格上昇となります。

 「米朝首脳会談は破談する」という予測を前回お話しました。金正恩が決めるのではなく、これはトランプが決めるのです。金正恩は破談に追い込まれる、という立場です。
 トランプは、半島から核と長距離弾道弾を廃絶するつもりでいます。完全に従うなら黄金のキャデラック。従わないなら消えていなくなります。「会談キャンセルもありうる」というのは国内向けのパフォーマンスにすぎません。金正恩に選択肢はありません。

 さてさて、原則は金現物をベースにしておいて、遊休資産で乱高下する株式投資で儲ける、です。
 私は今年は為替で大きく左右される輸出株より内需株(為替鈍感株)を勧めています。この7月から「ぴよこちゃん倶楽部(第5期)」をあらたにスタートさせますが、内需株銘柄のオンパレードになるかもしれませんね。

 早ければ米朝首脳会談直後、遅くとも9月あたりから為替が大きく変化します。それまでは鈍感株でいく。これが基本です。



 中でも、「95シリーズの電力株」が注目です。戻り相場を牽引した銘柄も少なくありません。



 先週の「銘柄研究会」でチラッとお話しましたけど、とくに福島原発でミソを付けた東電の潜在的実力がようやく注目されてきました。

 元もと、スペアの電源が津波に呑み込まれたのが炉心溶融を引き起こしました。地震には耐えられる設計なんですよ、日本の原発は。 
 岩を削って海までの高さを大幅に削ったのが失敗の元。欠陥商品をアメリカから売りつけられ、しかも事故が起きても設計部分はブラックボックス。使い物にならない原発を東芝等の技術屋がなんとか改善してここまで育ててきたのです。

 原発を廃棄させ、小型原発まで日本から取り上げることがアメリカのエネルギー戦略です。あのジジイ首相2人はその手先です。

 この先、EVが主流になるでしょう。そのとき、電源はどうするのでしょうか。夜間電力が安いのはいまだけです。だれもがEVを使うようになれば、夜間電力価格は昼間と変わらなくなるでしょう。
 重要なことは、EV時代は電力消費激増が予想されることです。使えば使うほど安くなるのではなく、「原発を減らす」と政府が計画書で発表したのですから、エネルギー源は確実に減ります。10万キロワット程度の超小型原子炉(東芝製)が華々しくデビューできればいいですが、福島原発大事故のおかげで日本人は原発を信頼していません。まさにアメリカの戦略にしてやられた、というわけです。





 電力会社の株価をチェックしますと、ボリンジャーバンドでみると、いまのところ、偏差値70の優等生といえます。上がりすぎた中部電力がいったん調整かしらん、と見られますが、電事連の中でも商売上手と決断、動きの早さでは定評がありますから要注目でしょう。


 今日の「通勤快読」でご紹介する本は「 人は死ぬとき何を後悔するのか  2500人を看取った医師が知る『間際の心』」(小野寺時夫著・823円・宝島社)です。