2007年10月02日「エディット・ピアフ 愛の讃歌」

カテゴリー中島孝志の不良映画日記」

 う〜ん、2時間30分が一瞬に感じられる映画ですな。そうとういいですよ、これは。
 シナリオの構成、カメラワーク、メイキャップ・・・こりゃかなわねぇや。実像以上に正確なエディット・ピアフ像を描き出してましたなぁ。


かなりの秀作です。スクリーンで観ないと絶対に損!

 主演のマリオン・コティヤールが巧いのなんの。外側も内側もくりそ。こういう役者、いるんだねぇ・・・。乗り移ったな。

 142センチしかないピアフをみごとに演じてた。猫背、ハンガーを入れたような歩き方。ピアフってロボットみたいなの。くりそなんだ。
 彼女、47歳で死ぬわけだけど、晩年のあの老け方は・・・さすが。

 なにより、癇癪持ちでいきなり爆発する性格。あの感情の起伏の激しさは絶品だよね。

 アカデミー賞って、国籍にうるさいの? 外国語映画という枠を超え、オスカーを受賞するんじゃない? あんだけの演技、だれができる?

 ピアフについては先週金曜日に触れましたね。私ゃ、パトリシア・カースのほうが好きだ、なんてね。好みの問題でしてね。シャンソンを世の中に広く知らしめた功績からすると、ピアフに並ぶ人なんていないのよ。
 ピアフの前にピアフ無し、ピアフの後にピアフ無しなの。

 シャンソン修行のため、フランスに行った越路吹雪さん。彼女の歌を聴いて自信喪失したのも無理ないわ。ある意味、毒薬じゃない? 彼女の歌に魅せられて、人生、棒に振った歌手が何人いるか・・・。

 映画は秀作です。こんだけ惜しみなく次々に大ヒット曲を披露されるとほぽコンサート。思わず、拍手してしまいそう。
「ミロール」(これ、ムスタキの作品)「日曜は嫌い」(アズナブール)、「アコーディオン弾き」(ミシェル・エメール)「私の回転木馬」・・・もうたまりまへん。

 映画のタイトルだけど、ホントは「ラ・ビアン・ローズ(バラ色の人生)」なのね。けど、日本では岩谷時子+越路吹雪コンビの「愛の讃歌」が有名だからねぇ。まっ、どっちでもいいよ。
 ご存じの通り、「バラ色の人生」はイヴ・モンタンとの恋愛の時、そして「愛の讃歌」は彼女が生涯かけて愛した男。世界ミドル級チャンピオンのマルセル・セルダンとの悲恋を、彼女が歌った作品ですな。あまりにも有名だよね。

「愛の讃歌」だけど、岩谷時子さんの詞は越路吹雪さん、本田美奈子さん亡き後、封印しちゃいました(原詩は全然違うんだ)。

 ラストソングは、やっぱ、ミシェル・ヴォケール+シャルル・デュモンによる「水に流して」でした。まっ、私はけっして後悔しない、という意味なんだけどね。

「水に流して」

♪いいえ ぜんぜん
 いいえ 私は何も後悔していない
 私が人にした よいことも悪いことも
 なにもかも、私にとってはどうでもいい
 いいえ ぜんぜん
 いいえ 私は何も後悔していない
 私は代償を払った 清算した 忘れた
 過去なんてどうでもいい♪

♪私のいろいろな 過去を束にして
 火をつけて 焼いてしまった
 私の苦しみも喜びも
 今となっては 必要ない
 私は過去の恋を 清算した
 トレモロで歌う恋を 清算した
 永遠に 清算してしまった
 私はまた ゼロから出発する

 私の人生も 私の喜びも
 今は あなたといっしょに始まる♪

 こういう歌はCDで聴いちゃもったいない。ピアフのDVDでどうぞ。
 それにしても、あの眉毛は笑える。いくらなんでも、あんなにひどくはないと思うんだけどねぇ。