2007年10月04日「らせん階段一代記」 丹道夫著 講談社出版サービスセンター 1575円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 この本ね、自費出版なの。自費出版なんて、書店にはほとんど並ばないよね。
 じゃ、どうして知ったか?
 アマゾン・クルージングだよね、そこは。アマゾンていっても、南米のアマゾンじゃないよ。まっ、昔、3カ月くらいパンタナールとかマナウスをクルージングしてたけど。書店のアマゾンね。

 ほら、前、東海林さだおさんの「立ち食いそば本」をご紹介したでしょ。
 で、彼は富士そばの全メニューを制覇しようと試みたわけ。西荻の南口店に通い詰めたわけだ。だけど、途中で店舗改装の工事が始まって、リニューアルオープン後に入ってみたら、なんと立ち食い店じゃなくなってた。つまり、座り食い店(椅子席)になってたつうわけね。
 もち、そこで中断。元々の狙いは立ち食いそば店「富士そば」を食い尽くすということだからね。

「富士そば? 本くらい出てんだろう」って検索したらビンゴ。この本、富士そばの創業者による「私の履歴書」なのよ。

 著者は四国は愛媛の西条市の出身。苦学してね。勉強意欲満々だけど、商売で身を立てるしかなかったんだろうな。
 故郷に錦を飾るというか、田舎で埋もれたくないという若者マインドもあるだろうし、「仕事がない!」という現実もあったのでしょう。4回も上京し、この間、調理師学校で資格とって給食センターに就職。ここで仲間ができます。で、やっぱり給食や弁当屋さん。あるいは不動産屋等々で成功。創意工夫とガンバリズムで生きてきた人なのよ。

 そのうち、仲間で事業をシェアする話になり、著者は立ち食いそば専業でいこうと決断するわけ。
 それが富士そば。

 富士そばってのは、私の地元だと伊勢佐木町の有隣堂本店の向いにあるだけ。神奈川県はここしかありません。どうだろ。この店より伊勢丹の裏の店の方が回数が多いかも。
 
 有名なのは、カツカレー丼か? カツ丼にカレーがかかってるってヤツ。いま、あんのかな?

 それにしても、堅実な経営してますなぁ。ガンガン出店してるのかと思ったら、営業マンなんていないんだって。立ち食いそば屋は絶対に駅前の1階じゃなきゃダメなのね。
 こんな物件、年に1回あるかどうかだって。だから、営業マンなんて雇って、回転率の悪い出店されても困るわけさ。

 いま、全国66店舗。もち、ほとんどが東京だけど。こんだけ売れてると、そばだって自家製にすりゃいいじゃん。
 だけど、しないの。2つのメーカーに作ってもらってるわけ。自分でやりゃコストも下がるだろうけど、在庫をさばくという感覚になっちゃうからね。結果として、お客さんを裏切っちゃう。だから、あえてアウトソーシング。2つのメーカーに工夫してもらってわけさ。

 意外だったのは、椅子席店にしちゃうと回転が悪化して儲からなくなるんじゃないかと思ったら、どうも違うみたい。立ち食い店では来ない女性が来るし、「立ち仕事でちょっと休みたい」というお客が入ってくる。
 考えてみりゃ、立ち仕事してさらに立ち食いそば食べたら、休む暇ないわな。ドトールでコーヒー飲んだら、その分、嵩むしね。
 
「安く食べ、つかの間休憩できる」というメリットがあんだよなぁ。
 やっぱ、よく観察してるよなぁ。

 自費出版だから、富士そば店に置いてるらしい(まるでCocCo壱だよ)。
「なんで自費出版なのよ。文庫にしたら?」
 いま、講談社の私の担当の局長さんに話してるとこ。そのうち、どどっと出たらそれは私が仕掛けたヤツです。

 さてさてさて、東海林先生が富士そばのメニュー全制覇なら、私は大好きな「コロッケそば・立ち食い店全国制覇!」を決意致しました。このレポートにつきましては、B級グルメでご紹介するつもりでございます。
 乞うご期待! 200円高。