2013年05月29日♪デフレは続くよ どこまでも♪

カテゴリー中島孝志の不良オヤジ日記」

 リーマン・ショック以降、好調に見えるアメリカ経済もならしてみれば1%以下の成長率。ユーロはマイナス。そして日本はゼロ成長。ゼロ成長下でも、日本人はデフレだからなんとか生活できているわけでね。

 でも、ダウは最高値を何回も更新。日経平均もなんとかリーマン・ショック以前の株価に戻したりしてね。もちろん株高が実体経済を反映しているわけじゃありません。まして企業業績がいいからでもありません。シティバンクもバンカメも公的資金を懸命に返済したけど、その分、FRBの付け替え分が増えてしまった。

 シェールガス・バブル(天然ガスより採掘権!)でなんとか大儲けする。TPPを日本に飲ませて大儲けする。そうやって税収を増やして財政再建する・・・というシナリオでしょう。

 ダウや日経平均を押し上げているのは、ご存じの通り、FRBとかECB、日銀といった各国中央銀行の「量的金融緩和」ですね。

 ドイツのように、儲かってるくせに、ギリシャ人やイタリア人に範を垂れるために財政緊縮に走る国(ま、性分だからしょうがないけど)もありますけど、世界レベルで景気を回復させるには量的金融緩和はやっぱやらんとね。時間との勝負ですわな。

 けど、アメリカには日本というドル箱がありますけど、日本には国民というドル箱しかない。アメリカは日本政府を脅かせばいくらでも引き出せるけど、日本政府はメディアをつかって国民を騙すしかない。賢明な国民相手にどこまで通じるか・・・。参院選の結果が楽しみですな。

 白川方明前総裁が日銀券ルールを守ろうと努力しましたが、「クロダミクス」は量的にスピードでもなんとか欧米に並ぼうとしゃかりきです。
 
 いまや、株価を左右するのは中央銀行の仕事になってしまいました。インフレの番人とか失業率改善とかじゃないのね。

 で、だれもが金融緩和策をとりたがる。金融緩和すれば円安になる。円安になれば輸出企業の株価が上がる。株価が上がれば景気がよくなる、という錯覚。景気をよくするには所得が増えなくちゃね。

 円安になったって輸出が増えるわけじゃない。

 当たり前ですよ。日本て国はプラザ合意の円高トレンド下でも勝ち残るために、輸出するなら円高でも買わざるを得ない付加価値製品(=材料とか電子部品などの中間財)で勝負できる国にとっくの昔にシフトしちゃった。いまどき円高でヒーコラ言ってる企業なんてそもそもあかんわけ。

『世界経済が沈んでも・・・』のなかでも書きましたし、原理原則研究会でもお話しましたけど、輸出依存度は15%くらいだもん。内需が大きくものをいってるわけ。
 ま、円高で不利ななか、がんばって売ってるから、輸出企業の競争力は高いというけど、製造業はこれまたほとんど海外に進出してまして、国内はわずか。

これからどんなに円安になったって、輸出企業は海外で生産するはず。もち、国内は研究開発の拠点にするけどね。

 輸出企業で円安で困ってる企業なんて、ホントのところ、どこにあんだろ。そんな企業はとっくの昔に淘汰されてるはず。そもそも決算を円相場でつくるから「いい数字」「悪い数字」と一喜一憂するわけで、ドルベースで考えたらどうでもいいこと。ま、日本政府は税収を円建てで分捕るから決算数字がいいほうがありがたいでしょうけど。

株価は企業業績を反映しない。経済の実態も反映しない。けど、量的金融緩和さえすれば円安になる。で、輸出企業の株価は上がる。そういうふうに、外人さんの投資ソフトがプログラミングされてるからですね。

 で、外人さんは基本、高値で売るために安値で仕込んでるわけですね。そのお手伝いをしてるのが「異次元金融緩和」というわけです。

 ところで「異次元」とはどいう意味か? だれにもわからん、つうこと(もしかすっと黒田さんもわかんないかも)。
 タマが凍りついてれば、少しでも売りが出たら金利は上がり(価格は下がる)、買いが出たら金利が下がる(価格は上がる)。これが国債相場。で、いま、ジェットコースターになってるわけ。

白川さんは日銀券ルールをなんとか守ろうとしたのは異次元ではなく伝統的な手法だったかもしれませんが、基本、「政策は政治家が知恵を絞りなさいよ」「株高は企業ががんばんなさいよ」と言いたかったわけでしょ。「インフレの番すんのが中央銀行の仕事ですから」というわけですね。

デフレつうのは「物価の安定」という意味ですね。これからインフレになるかといえば、ならないと思います。

 所得が上がらないかぎり消費には火がつきません。所得が上がらないかぎり物価は上がりません。インフレにはならん、つうわけ。

 なぜ所得が上がらないかといえば、いまんとこ、14年4月に増税。15年10月にも増税する予定でしょ。「増税すれば消費が増える」といったのはいままでの政治家の中でカンチョクトという人だけ。
 まともな人は、増税したら個人も企業も投資を絞ると考えます。実際、国内の設備投資はいまだに増えていない。投資が増えない理由は「需要は増えない」「供給は増やさない」と考えているから。総需要が減れば過剰な供給は空回り。在庫一掃のために安売りに走らざるをえない。そういう企業が給料を増やせるはずがない(安倍首相も所得が上げられるとは思っちゃいないでしょ。ホントはね)。

 まとめると、消費減・設備投資減=需要減=所得頭打ち=物価安。。。つまり、いままでと同じ構図。早い話が「♪デフレは続くよ どこまでも♪」つうわけ。

 アベノミクスの恩恵を受けてるプチ投資家は庶民にはあまりいない。相変わらず賢明な買いものをする。これはデフレ15年の知恵。

「じゃ、デフレ賛成なの?」と聞かれたら、そんなこたありません。理由は来月出版する本にしかと書きましたんで。デフレのメリットをアピールする人も少なからずいますけどね。やっぱデフレは都合が悪い。

 昨日のブログでも、また6月末発売の新刊にも書いたけど、バーナンキは金融緩和策から静かに抜け出します。で、ダウが暴落し、米国債が暴落したとき(金利暴騰時)、日本に肩代わりさせる。米国債は買い支えられ、ダウも復調。

 ただでさえ日本の機関投資家は日本国債から海外債とくに米国債へとスイングしてますね。日銀に米国債を買わせ、外人が日本国債を買う。外人保有が増える。ま、20%も買えるわけがありません。
 でも、マーケットのなかで売り浴びせられ、それをおっちょこちょいのマスメディアが「日本売りだ!」「財政破綻だ!」「ギリシャになる!」と大騒ぎしたとき、国民は国債から踏みとどまれるかどうか。機関投資家も価格が下落し続ける国債をここぞとばかりに掬い上げてくれるかどうか。いままでと同じようにできるかどうか。最近どうも気になるんです。


 さて「中島孝志の 聴く!通勤快読」でご紹介する本は『ヨーロッパ経済史2』(中川洋一郎著・学文社)です。詳細はこちらからどうぞ。