2016年05月11日「ファーゴ」

カテゴリー中島孝志のテレビっ子バンザイ!」

 ま、コーエン兄弟好きなんですよ。で、高熱を発していた1週間ずっと見てたのが「ファーゴ」。これ、バンコク帰りの機内から見てましたからね。

 コーエン兄弟の良さってのはクールなとこ。『ノーカントリー』もそうだったけどね。

 そこら辺歩いてる人。たとえば、子どもの頃いじめられてた営業マン。やっはうだつがあがんないの。のび太は年をとってものび太か・・・若いのび太、中年ののび太、爺ののび太。本質はかわんない。つまり、いじめられ体質なわけ。どんなに隠してもね。

 そんな男がかつてのいじめ男と遭遇。2人のバカ息子と歩いてた。で、いじめ男はのび太のことをバカ息子に教えるわけ。

 「おまえ、あの女と結婚したのか?」
 「ああ」
 「だれにでもさせる女」
 「そんなことない」
 「おれも世話になった」
 「そうか」
 「みな知ってる」

 バカ息子も大笑い。大笑いされても、のび太は文句一つ言わず、その場をやりすごそうとします。で、いじめ男はのび太を殴ろうと・・・しただけなんだけど、のび太は過剰反応して自分で壁に後頭部をぶつけちゃう。

 で、病院に・・・。



 「オレなら殺してるね」
 「・・・」
 「おまえは世の中にはルールがあると思いこんでる。そんなものはないのさ。好きなようにやりなよ」
 「・・・」
 「なんなら、オレが殺してやってもいいぜ」
 「・・・」
 「イエスかノーか」
 「・・・」

 実話をもとに生存者の了承が得られなかったので名前は変えてあるが、死者に敬意を表して事実に忠実に描いてある・・・と冒頭出てきますが、これはウソ。これは実話じゃないもの。

 で、それからしばらくして、そのいじめ男が殺されます。同じ頃、のび太は妻と口論。

 「あんたはなにやってもダメな男。やってる最中も私の顔すら直視できない男」
 
 このひと言に過剰反応。ハンマーで頭を殴った。一発で死にます。で、殺し屋に相談。

 知人の警官(署長)が訪ねてきた時、犯行がばれます。そこに殺し屋が忍び寄って警官を殺します。
 
 のび太タイプ、ジャイアンタイプ。のび太の優柔不断と保身がどんどん犯行を増やします。

 で、こののび太。妻を殺してから度胸がつきます。少し変わるわけ。で、業績を伸ばしてトップ営業マンになっちゃった。するとますます犯行を隠す。

 殺された署長は、次の署長はおまえだ、と女性警察官におおいに期待してました。

 「副署長がなるのでは?」
 「おんなバカにさらたらおしまいだ」

 このバカものび太タイプですよ。犯罪が大嫌い。町が平和であればいい。凶悪犯罪などなく、警官がバイトで雪かきに駆り出される瞬間を至福と心得ている男。つつがなく恙なく生きてきた男。で、この男ものび太。
 この男のためにどれだれ犯罪をスルーしてきたか。やる気のある優秀な警官が煮え湯を飲まされてきたか。最後の最後にようやく気づきます。

 「これが終わったら警察を辞めるよ」
 
 自分の力量がわかんない。とうにぬるま湯ではなくなった世界にずっとぬるま湯だと思いこんで生きてきた男。

 実は、こんなのび太がたくさん出てきます。自分を見ているようでかえっていらいらしてしまいましたよ。高熱のある時によ〜見てたなあ。

 殺し屋にビリー・ボブ・ソーントン。アンジェリーナ・ジョリーの最初の旦那だったかな。映画のスティーブ・ブシェミつう役者が好きでね。タンティーノにもよく出てるよね。全10作。あっという間。


 さて今日のメルマガでご紹介する本は「酒場詩人の流儀」(吉田類著・中央公論新社・842円)です。