2018年06月15日表の共同声明より裏の約束!

カテゴリー中島孝志の不良オヤジ日記」

 米朝首脳会談が終わりました。たった1日で。

 結論から言えば、トランプにも金正恩にもメリットがあるように協力しあうこと、が確認できたミーティングだったと思います。

 「米朝首脳会談は破談する!」と予告した通り、5月24日にいったん破談。しかし、その直後に金正恩がトランプに詫びを入れ再開することとなりました。トランプが破談すると怒ったこと、金正恩が詫びを入れて再開することになったこと。いずれもプログラム通りです。

 トランプ自身はいつものように自画自賛に徹していますが、周囲の意見は真逆です。
 「米朝首脳会談はなにも決まらなかった」(日本の多くのメディア)。
 「歴史的に米朝が『初の会談』という以外ないもない」(NYタイムズ)
 「希望を抱かせたが保証がない」(ワシントンポスト)

 安倍首相はといえば、いつもの通り、「成果があった、トランプ大統領を支持する」のひと言。米朝首脳会談中止時も「トランプ大統領の決断を支持する」、首脳会談再開となった時も「トランプ大統領を支持する」と述べてましたからこの回答は予測できました。



 世界中のメディアが「完全な、検証可能な、不可逆的な非核化」という文言がないことに落胆し、「交渉は失敗だ、金正恩の勝ちだ」と報道していますが、トランプは完全非核化まで制裁を続けると述べているのですから、トランプのペースで進んでいると考えていいと思います。

 トランプは騙せません。なぜなら、安倍首相のしつこい説得で、これまで北朝鮮が一度たりとも約束を守ったことなく、嘘をつき続けてきたことを理解しているからです。

 94年、核開発凍結を確約。その見返りに5400億円もの軽水炉をはじめとして、食糧、年間50万トンの重油を支援したにもかかわらず、核開発を継続。嘘をついていたのです。
 05年、6ヵ国共同宣言で核放棄を約束しました。これも嘘でした。

 北朝鮮は嘘八百の国なのです。死に物狂いで嘘をついているのではなく、「知らない」「聞いたことない」「そんなこと言ってない」が彼らの常套句です。

 金正恩の優先順位筆頭は「国体護持」です。体制保証です。そのための核武装です。
 核を離したらリビアのカダフィになると自覚しています。03年、カダフィは核開発を放棄しました。見返りに制裁を解除してもらいました。ところが、そりから8年後(2011年)、反体制派に惨殺されてしまいました。もちろん、反体制派の背後にいたのはアメリカです。カダフィの失敗はアメリカを信じたことです。
 金正恩はアメリカを信じたら殺される、と信じています。アメリカに近づく金正恩を中国も懸念しています。

 そこで、「トランプとなにも決めてはならない」「トランプとなにも約束してはならない」と、習近平が金正恩に釘を刺した通り、金正恩は行動したのです。

 直前に、わざわざ安倍首相がトランプに念押しをした「拉致問題」については、「日朝で協議しろ。門前払いするな!」と金正恩に伝えたに過ぎませんし、それが当たり前です。日本のことは日本が解決しなければならない。ただし、トランプのおかげで金正恩は交渉のテーブルにつくしかありません。

 トランプの頭の中にあるのはあくまでも11月の「中間選挙」です。今回の米朝首脳会談の目的は中間選挙対策です。具体的に決めようとすれば物別れに終わってしまうから、なにも決めなかったのです。中間選挙直前、金正恩にはワシントンに来てもらってトランプを持ち上げてもらわなければならないし、ノーベル平和賞を受賞して有権者の覚えを良くしたいのです。



巷間、共同声明として発表されていることとは違い、「裏の約束」があるはずです。なにごとも表よりも裏が重要なのです。

 西側を巻き込んだ「サンフランシスコ講和条約」より日米間だけで結ばれた「日米安全保障条約」。日米安保よりも「裏の約束」。米軍支配、核の持ち込み等々、歴代内閣は「条約」よりも「裏の約束」に縛られているのはご存じの通り。

 もちろん、今回もアメリカは金正恩に「裏の約束」呑み込ませたと思います。すなわち、会談1回目で核放棄を約束すること、でなければ戦争も辞さないこと。

 わが家は横浜ですが、近くには米軍がありますし、米軍幹部のハウスもあります。米朝首脳会談当日は朝からヘリコプターがたくさん飛び交うだけでなく、戦艦から病院船まで米軍は動員していたのです。
 金正恩にしてみれば、トランプには交渉は通じない。いきなり最後通牒=戦争となる、と悟りました。同時にトランプはアメを与えました。すなわち、「経済支援」「在韓米軍撤退」です。そして、「朝鮮戦争の終結」です。


14センチのシークレットシューズで臨んだ会談。笑えるわー。

 わが国と北朝鮮との間には経済支援云々という商売の話題とは別次元で「拉致問題」があります。
 金正恩がすでに「解決済み」と主張する真意は、蒸し返すには「手数料が必要だ!」ということです。

 日本という世界一の金持ち相手に、いくら先代の金正日が指示した国家的犯罪だとしても、戦争能力はあれども、戦争できない日本は完全に足下を見られていますし、金持ちらしく「金」で解決するしかありません。

 1960年の日韓基本条約で北朝鮮分まで賠償金は支払い済みですが、南北朝鮮を相手に交渉をいくら続けても、慰安婦問題と同じで何世紀経とうと何度も蒸し返されて解決できるはずがありません。
 古今の歴史をさかのぼっても、半島を黙らせるには「力」か「金」しかありません。(軍事)力を持ち出せなければ、(金の)力で押すしかないのです。後日、中国よりも高品質の資源を確保するか、世界一安い労働力を活用するなど、北朝鮮ビジネスで回収すればいいのです。



 さて、「米朝首脳会談中止」という「やらせ」も含めて、トランプと金正恩が協力した動機はなにか? それはお互いの共通の敵を欺くため。では、共通の敵とはだれか?
 それは軍産複合体であり国際金融資本です。すなわち、大統領選挙選時から、大統領当選、大統領就任、さらには最近のロシアゲート問題にいたるまで、トランプを邪魔してきた勢力です。
 米朝首脳会談が不首尾に終われば、北朝鮮と、韓国そして日本は相変わらず敵対関係にあり、在韓米軍も在日米軍も撤退せずに居座り続けられます。かつて、「シリアから米軍撤退」とトランプが発表するや、シリアは化学兵器を使用したとして、米軍は攻撃を始めました。アフガン撤退を発表したときも同じです。理由をつけてアフガン軍を攻撃し、4000名の米兵増員までトランプは認めざるをえなかったのです。

 私は首脳会談中にも軍産複合体は北朝鮮でなにか仕掛けるかと思っていました。たとえば、「クーデター」です。トランプに脅かされて、金正恩はあまりにも性急に軍部から党へと権力移行を早めました。軍部のメンツは丸つぶれです。金正恩がわざわざ大連を訪れたり理由は、のんがいちのクーデター阻止を中国(北部戦区)に依頼するためです。

 だれがクーデターを演出するのか? それは北朝鮮ではありません。軍産複合体であり、国際金融資本です。
 中東も極東もいつ火がつくかわからない「火薬庫」である限り、彼らは双方に武器を売って儲かります。しかし、半島が統一されたり、南北朝鮮が和解などしたら、武器商人は商売あがったりです。

 国際政治を動かしているのは「マネー」なのです。


 今日の「通勤快読」でご紹介する本は「名セリフ! 後編」(鴻上尚史著・842円・文芸春秋)です。