2006年12月17日いちばん好きな映画「戦争と人間」

カテゴリー中島孝志の不良映画日記」

 いやぁ、日本映画が元気ですなぁ。どうしたんだろ?
 今年はすでに、配給収入で邦画が逆転! 苦節40年くらいになんじゃないか?
 なんたって、映画会社って昔、野球チーム持ってたんだかんね。 草野球チームじゃないよ。プロ球団。東映フライヤーズ、松竹ロビンズとかね。ジャンボ尾崎だって、元々、東映の投手だったんだから(古いね、どうも。最近、こんなフレーズばっか)。

 で、年末から春先にかけ、いい映画が目白押しでっせ。
 昨日から「犬神家」でしょ、で、今週はいよいよ「大奥」。で、「東京タワー」とかさ。もう凄いですな、邦画。話題にならない映画でも、渋くヒットしてるの多いしね。
 製作側の熱意ということもあるし、やっぱファンドがお金をだしはじめたということも大きいね。

 いい意味で、ようやく、「テレビ」や「ハリウッド」に勝ちつつあるといってもいいんじゃないかな。

 そういえば、テレビの凋落は激しいね。ドラマの落ち込みようったらありゃしないもんね。浅薄な脚本、下手な演技陣、ようやく、テレビから映画へとシフトしはじめたのかな?

 ところで、私がいちばん好きな映画はこれです。
 というか、これが原点になってるのよね。共産主義礼賛の偏向ばりばり映画なんだけど、映画としてはものすごい。たぶん、今世紀中には、これほどの大作はできんでしょうなぁ。

「戦争と人間・三部作」(日活映画)です。

 五味川純平原作、山本薩夫監督の作品。撮影当時、旧ソ連の赤軍が全面協力した作品だもの。第三部のノモンハン事件なんて、戦車だらけだもの。ものすごい迫力です。


シリーズ3部作。浅丘ルリ子さんが最高!魂を奪われましたよ。

満州五代の責任者喬介役の芦田伸介さんが渋い演技。うなります。

ソ連赤軍の全面協力。夏純子さんが可愛いのよ。大好きだね。

 これは単純に感動したなぁ。小学5年生の時、正月の深夜映画で観たのが最初。
 翌日、いきなり書店に行っちゃいました。
「全巻取り寄せてください!」
 なんと全17巻(当時)もあったのね。発行元は三一書房。

 さて、主人公は五代財閥。日産コンツェルンの鮎川義介がモデルだと言われてます。

 戦争にずっぷりとのめり込んでいく日本。中国、満州に覇権を広げる日本軍。それに付随してのし上がっていく新興企業。家族、肉親、兄弟、恋人などの絆を戦車が次々に踏みにじっていきます。

 戦争とは何か? 極限状態に置かれた人間とは何か?
 人間にできることって?
 愛とは何か? 命とは何か? 正義とは何か?

 いろんなテーマがどかんと突きつけられちゃう。
 
 主人公は清廉潔白で純粋な男、五代俊介。これを子役で中村勘九郎さん(いまの勘三郎)、青年役で北大路欣也さんが演じてました。
 
「アカ!」といわれる兄と二人暮らし、友人で苦学生の標木耕平役に山本圭さん。この恋人が俊介の妹・順子(吉永小百合さん)。石原裕次郎さんは外務省役人というチョイ役。ものすごく贅沢に俳優を使ってるわけよ。

 日本の俳優陣勢揃いという映画。映画会社のライバル関係など吹っ飛んで、日本映画界、演劇界総出の一大映画でしたね。

 私が忘れられないのはこのシーン。
 明日、出征という日、耕平はたった一人の肉親である兄と過ごします。

「俊介君のお兄ちゃんは兵役を免除されたんだ。どうして、あんチャンだけ行くの?」
「金持ちはそんなそうだ。耕平、よく覚えておけ。いったい、奴らがどんな物言いをし、どんなメシを食い、どんな行動をするか。言ってることとやってることに裏表はないか。わからないということは恥ずかしいことじゃない。わからないということは、後悔しないための唯一の方法なんだ」

 しびれましたよ、小学生でも。翌日からすっかりニヒリズムに感化されちゃいました。小学生のくせに「昭和ブルース」なんて口ずさんでたものね。

 この映画、いま、DVDセットで発売されてます。ぜひ、見て欲しいな。この正月がチャンス。どっぷり浸かってみてはどう?