2008年02月21日「最新約コピーバイブル」 土屋耕一ほか著 宣伝会議 2520円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 「東京で自慢できるものを3つあげてください」
 これ、2人の東京都知事候補に某新聞社が聞いた質問。
 「皇居、地下鉄、高速道路」と答えたのは保守系候補。長身で有名作家で弟は映画スター。
 もう1人の候補がなんと言ったか?
 「半蔵門近くのお堀端、ソバとうなぎ、きれいな若い女性」
 この2人の言葉を聞いて、「勝負あった」と新聞社は判断しました。
 
 言葉には力があります。もちろん、言葉で表せないものもたくさんあります。言葉よりも強いものもあります。女の涙? ヒラリーの涙? さて、どこまで効くか、11月には判明するでしょう。

 言葉にはパワーがあります。言葉によって、人の心は動きます。でなければ、コピーライターの商売はあがったりだもんね。

 本書は、コピーライターとして有名なあの人、この人の仕事の流儀があれこれ書かれています。意外とつまんないこと言ってるなという人もいれば、この人、コピーだけじゃなくてビジネスの本質がわかってるというものもあります。

「誰もいないホームに、姉は映画女優のように降りた。運がよければホームで会えるわね、と姉は電話で言った。明日、シアトルに行く列車に乗るわ。1本だけよ。駅には誰もいなかった。4つの州を走ってくる列車は遅れており、屋根のないホームにわたしは東の地平線を向いてすわり込んだ。コンビーフとマヨネーズのサンドイッチを食べると余計にノドが乾いた。立ちあがると遠くに光が見えた。列車を降りた女性はひとりだけだった。長めの白いドレスに濃いサングラスをかけ、別の人のようだった。待たせたわね、と姉は言ってサンドイッチの袋を自分のもののように取った。連れがいるかどうかは、わからなかった。列車が見えなくなると、わたしの手の中に数枚のドルがあることに気づいた。どれも50ドル札だった。その次の年、姉は本当に映画にでた。1ポンド以上やせて見えた。駅はもう使われていない」
 
 これはキューピーマヨネーズアメリカンの雑誌広告コピーです。まるで、映画を見ているような感覚に襲われるコピーですね。

 古今のコピーも巻末に掲載されてます。懐かしいなぁ。聞いたことあるのばっかし。
 少しだけご紹介しましょうか。

 あ、風がかわったみたい(伊勢丹)
「明日からやろう」と40回言うと、夏休みは終わります。(Z会)
 一年に出会うパンツは、ネクタイより多い。(ナイガイ)
 いつかは、クラウン(トヨタ)
 ウィスキーがお好きでしょ(サントリー)
 ウエスト・サイズ・ストーリー(京王百貨店)
 エレベーターも「客室」です。(帝国ホテル)
 紙クズはもう一泊します。(帝国ホテル)
 おしりだって、洗ってほしい。(TOTO)
 男は黙ってサッポロビール(サッポロビール)
 オメェ、ヘソねぇじゃねぇか(興和)

 まっ、その他いろいろあります。もち、中にはなんだこりゃ?というものも少なくありません。
 たとえば、「今日からスタンド女子店員はギャソリンヌという名前にかわります。」(リクルート)。ギャソリンヌ? ちいとも知りませんでした。この空振りは、「E電」とどっこいどっこいですな。
 コピー、広告関係の人は必読の書。視点を変えたい人もどうぞ。250円高。