2008年12月24日「この金融政策が日本経済を救う」 高橋洋一著 光文社 777円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 麻生という男、ホントにKYな総理だと思う。
 ただし、彼のKYは「空気が読めない」だけじゃない。「漢字が読めない」「(人の)気持ちが読めない」の三重苦。さらにいえば、高級バーで酔っぱらうか・・・。

 巷では連日、「ハケン切り」がニュースになり、年の瀬を前に待ったなしの状況。で、ご本人も日本経団連会長の御手洗さん(キヤノン会長)にハケン切りは少し考慮を、と依頼をすることはした。
 「ま、あとは企業側がやるかやらないかでね。オレはやることやったからよ」
 アリバイ工作はOKですな。

 けどさ、麻生さん。あなたが大好きな官僚とはずいぶん待遇が違うんでないの?

 国家公務員の再就職を一元管理する「官民人材交流センター」発足後も、公務員OBの再々就職斡旋が続くことが明らかになりました。
 麻生総理&甘利明行革相コンビのおかげで、高級官僚は笑いが止まらないでしょう。これで大手を振って公益法人への「渡り」ができます。
 天下り連発。高額退職金フィーバー。じゃんじゃんがっぽり。連チャンバリバリ。パチンコ屋もびっくりの大盤振る舞い。

 賞味期限がとっくに切れた能力にもかかわらず、一般の企業社会ではとてもとても通用しないスキルにもかかわらず、昔、試験に受かったというだけで、延々と「美味しいポスト」を得ようというさもしい根性はさすがに骨の髄まで民にたかる彼ららしい。

 天下り官僚を見ていると、米国の投資銀行のCEOを連想させますよ。倒産寸前の企業から「契約でそうなってるから」と何十億〜何百億円もの退職金をかすめとる連中とマインドが酷似。

 渡り官僚やそれにつながるノンキャリたちに再就職ポストがあり余っているなら、それをハケンや若い世代に譲ったらどうかね? 能力が心配? ご懸念なく。彼らにできる仕事ならだれにだってできますよ。

 さて、サブプライムショックの影響をほとんど受けていない日本経済が、どうしてここまで落ち込まなければならないのか?

 それは金融政策の失敗にある。日本経済の失墜は米国発金融危機ではなく「日銀不況」に原因があるというわけ。

 日本経済に元気がないのは輸出企業に元気がないからでしょ?
 その原因は円高でしょ?
 なにしろ日本は輸出83兆円、輸入73兆円だもんね。輸出志向企業は優良企業が多いから、日経平均株価も下落する。トヨタが1500億円の赤字に転落するくらい、円高はきつい。
 だから、金利を上げちゃいかん、というのが著者の説。

 「埋蔵金男」による新刊です。どん詰まりの麻生内閣を救う政策かもしれない。ま、上げ潮派の経済政策ですから採用はされないでしょうけどね。

 定率減税の廃止という増税でもない。06年3月、日銀が行った金融引き締め政策の失敗の影響がいま出てきている。90年代、バブル経済からの脱却のために、日銀はあいついで金融金利を引き下げ、99年2月12日、ついに0金利になったわけ。
 で、この0金利政策は00年8月に解除され0.25%へと引き上げられた。これで景気が冷え込みます。慌てて政策を転換し、01年3月に量的緩和政策を導入。そして5兆円から30兆円へと残高目標を設定したんだけど、これを06年3月に解除しちゃった。
 福井俊彦&白川方明コンビの完全な政策ミス。せっかく持ち直した景気が中折れしてしちゃいました。

 実は03年、福井さんを日銀総裁に選ぶとき、小泉・竹中コンビは「デフレを解決する」という約束をさせたのよ。
 にもかかわらず、この人、な〜んにもしなかった。国会や閣議とかで公的機関で約束させなかったからたんなる口約束。リップサービスで軽口を叩いたのかもしれませんな。

 いま、金融危機に際してFRBも各国の中央銀行も一斉に利下げ、中には0金利とかマイナス金利をつけてるところもある。でもって、日銀もようやく0.1%にしたけど、タイミングが遅いから日本だけが株価を下げてるつうわけ。

 ところで、この0金利の意味はなにか?

 まず、金融機関や一般企業が(お金を借りやすくなるので)資金繰りが楽になる。すなわち、倒産リスクが減って金融危機がひとまず解消されるわけ。
 短期金利が低いと、銀行はお金を貸すより株式投資や長期で融資するほうが儲かる。すなわち、株価が上昇しやすくなる。
 一般人も、住宅ローンの金利が下落するからマンションや不動産購入の意欲が出てくる。
 
 でもさ、0金利にしたら後がないのでは? そんなことはない。量的緩和がいくらでもできます。
 金利には名目金利と実質金利がある。経済に影響を与えるのは、もちろん、実質金利。で、これは名目金利から物価上昇率(インフレ率)の予想を引いた金利のこと。この実質金利はいくらでも下げられる。名目金利が0でも、金融政策によってインフレにすれば実質金利はマイナスになって不況から脱出できるつうわけ。
 これはポール・クルーグマンの主張でもありまっせ。 もち、量的緩和=民間の金融機関が日銀に持っている当座預金残高の量を調節すればいいわけ。

 量的緩和は麻生内閣でもできるんです。たとえば、不評の定額給付金なんか止めて、政府通貨を財源(日銀だけじゃなく政府も紙幣・貨幣を発行できるの。で、ほとんど財源可能)として減税すれば、国民に広く恩恵が行き渡るというもの。
 公共投資のように、ある業界だけ、ある地域だけが潤うけど、国民全体で見れば百害あって一利無しという政策よりもはるかにいい。「マンデル・フレミング理論」でおわかりの通り、公共投資や減税という財政政策は、きちんと金融政策が準備されてはじめて効果があるというわけ。300円高。