2009年07月28日「嫌われない毒舌のすすめ」 有吉弘行著 ベスト新書 790円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 う〜ん、お笑い芸人の本なんだけど、なかなか使えるところがありますな。

 著者は日テレの「すすめ!電波少年」で一世を風靡した猿岩石の片割れ。猿岩石といってもわかんない人のために言うと、沢木耕太郎さんの『深夜特急』という本があんの。東京からヒッチハイクでアジア経由でロンドンまで行くの心のルポを綴った本なんだけどさ。
 これを番組の企画でやったのが彼らなわけ。どうして彼らが選ばれたか? 向こう半年間、なんの仕事もなかったから。

 暇な芸人しかできんでしょ、こんな旅なんて。

 ご想像の通り、視聴率がなかなか良かったんで、日本に戻ってきてからの人気は大ブーム。CDも数枚出すほど。で、これが売れたわけ。

 「けど、ライブのたびにファンの人数も減るし、のりも悪くなってたから、そろそろオレたちも終わりだな」と思ったらしい。けど、人気が落ちるのは彼らの予想よりかなり早かったみたい。
 そこから地獄を見るわけね。

 いま、毒舌芸人で売ってるみたいですな。そういえば、「あめとーく」でも芸人たちにめちゃくちゃ言ってるもんな。ワッキーなんか「くそすべり芸人」だしさ。

じゃ、どこが使えるかというと・・・。

 明らかにツッコんじゃいけないときがあります。それは、人が怒られているとき。たとえば、会社でだれかが上司から怒られているとき、妙に勇気を出してこの場を丸く収めてやろうとか思わないこと。
 これで味方ができるわけじゃない。敵をつくるだけだもん。

 じゃどうする? 「わかる」という顔して黙って聞いてりゃいいの。「おまえも大変だな」という顔してね。あとでフォローすればいい。

無礼講のときこそ褒めちぎる。これも大切だよね。無礼講ほど礼儀にうるさいときはないからね。

著者が考える人間づきあいとは、基本、すべてが「浅い関係」でOK。上司とか先輩、同僚、後輩、ともだち・・・深く付き合わなくていい。薄っぺらでうわべだけのつきあいでいいの。
 無理してコミュニケーションなんて取る必要ない・・・と悟っちゃった。つかず離れずでええのんよ。

 同じ先輩でも、土田晃之さんと上島竜平さんへのツッコミは使い分けてる。この2人、どこがちがうかといえば、「ツッコミ体質」か「ツッコまれ体質」かということ。
 会社でも同じ。竜ちゃんみたいな「いじられ体質」はツッコんでやらないと輝かない。

人間関係でストレスが起こるのは、すべてプライドのせい。この著者、プライドないもん。捨てちゃったもん。

 自分が上だと思っちゃうから、いろんなことに腹が立つわけ。 あいつよりはましだ。あんなヤツにバカにされたくない。こんな仕事できるか! こんなはした金でできるか! こんなプライドが邪魔になる。そこそこの状態に我慢できないのもプライドのせい。

猿岩石ブームの時、「どうして詐欺みたいなことしてかだ?」とか「本当は感動なんかしてないだろ?」「本気で歌うつもりのないのに、よくやってんな」と毒舌言われるとホッとしてたって。逆に「すごい感動しました」とまじで言われると困っちゃった。だって、ホントの姿じゃないこと、自分がいちばんわかってたもん。
 身近な人間だけは「世間を欺いてる」とわかってくれてる。これでなんとか心のバランスがとれてたってさ。

 あの礼儀にうるさいオール巨人師匠の弟子だったとはちいとも知らんかったね。250円高。



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