2009年07月31日「昭和歌謡映画館」 岡田喜一郎著 中公新書 1260円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 新書のくせに分厚いの。たっぷり読めまっせ。
 観てから歌うか、歌ってから観るか・・・映画とその主題歌というのは切っても切れない関係というよりシナジー効果がありますわな。

 メガヒットを仕掛けるには映画や人気ドラマとのコラボが必須。之は昔から言われてきたことなんだけど、やっぱ、それは昭和20年の映画「そよかぜ」と挿入歌「♪リンゴの歌」とのコラボによるメガヒットをもって嚆矢とするようですな。

 リンゴなんて、いまどき、どこでも食べられる果物だけど、昭和20年という時代性を考えると高価なものだったよね。まして、かつて藤村が「初恋」という詩のなかで「まだあげそめし前髪の リンゴのもとに見えしとき・・・」と詠ったように、ハイカラなイメージがあるわけ。

 ま、「そよかぜ」という映画はそんなに当たらなかったけど、「♪リンゴの唄」と大ヒットしました。

 昭和20年代を風靡した映画俳優+歌手といえば?
 やっぱ美空ひばりでしょ。じゃ昭和30年代のスタアは?
 われらが裕ちゃんだわな。

 それじゃ聞くけど、ひばりの初出演映画は?
 「悲しき口笛」? 「東京キッド」? ブー。正解は「のど自慢狂時代」です。♪丘のホテルの赤い灯も 胸のあかりも消えるころ〜と歌った「悲しき口笛」は半年後なのよね。

 東京キッド、良かったですな。
♪歌も楽しや 東京キッド
 いきでおしゃれで ほがやかで
 右のポッケにゃ 夢がある
 左のポッケにゃチューインガム〜〜♪

 昭和24年10月末の厚生省児童局の調査によると、6大都市をはじめとして全国各地の戦災孤児が何人いたか? 30000人ですよ。30000人!
 たぶん、昭和20年3月10日の東京大空襲でしょうな。無辜の民を殺戮し続けたB29の米軍ですな。博愛主義者のような顔してますけど、米軍&米国政府の本質はベトナムでもイラクでも、あの東京大空襲の無差別殺戮と変わりませんな。

 日本では戦争による消息不明(尋ね人)の解決に「放送」を使いました。これがものすごい視聴率でしてね。19515件が電場に乗り、うち6797件が解決。昭和37年3月31日まで放送で流したのよ。「もはや戦後ではない」と経済白書が発表した後まで続けたわけですな。

 著者の意見も書いとかなくちゃね。日本の歌謡曲のなかでナンバーワンは「青い山脈(昭和24年)」を上げたい、とのこと。ま、国民的愛唱歌ですわな。
♪若く明るい歌声に 雪崩は消える 花も咲く
 青い山脈 雪割桜〜〜

 奈良光枝と藤山一郎のデュエットね。原作は石坂洋次郎。とくれば、コバルトブックスかハーレクインロマンスか。女教師役の原節子さんのお美しいこと。

 ま、歌謡映画を一挙96作品掲載の力作。おもしろいなあ、たまりまへんでえ。400円高。