2009年08月29日「ぶつぶつ」 ブラックマヨネーズ吉田敬著 ヨシモトブックス 1155円
なんつうか名著です。というよりも、久しぶりの通勤快読です。
ま、来月から音声による「中島孝志の 聴く!通勤快読」がスタートします。で、「これは!」という本を出し惜しみしてるんじゃないかという疑念をお持ちの方。
人をそんなに疑うもんじゃございません。実は・・・その通りなんですけどね。
さて、本書。2005年のM1チャンピオンであるところのブラマヨ。向かって右側のお笑い芸人による処女作です。といっても、書き下ろしではなくて、「マンスリーよしもと」に月1で連載してたものをまとめたヤツ。
しかも、これ、01年10月という売れない時代からのコラムだから、初期の頃は原稿も読者やスタッフたちにおもねる、取り入る、好かれようと懸命。それが売れてくるにしたがって自信がついたのか、だんだん自然になってきます。つまり、好きなように暴れ出してくるわけ。
これ、大切ですね。芸人がセーブしたらつまらんもん。
このコラムの話があったとき、売れてませんでした。オーディションを受けまくってた。オーディションといっても、番組のネタ見せではなく、たった4回の劇場ライブの出番をもらうだけのオーディション。
これがしんどいのよ。オーディションに出場するにはチケットを買わなきゃならない。そのチケットを通行人等に「手売り」するわけ。
ところが、折からのブームで、芸人志望者がわんさかいる。だから、そのチケットすら手に入らない。相棒の小杉竜一が2日前から並んでようやくゲット。
そんなこんなで手に入れても、このオーディションがなかなかシビアなシステム。
つまり、週1で50組くらいの若者が持ち時間2分のネタをする。ほとんど開始1分で落とされる。3〜4組が合格。各週ごとの勝ち抜いた15組(もちろん、ピン)で月末に戦い、3組に絞られる。これが予選イベントなわけ。
1週間で負けたコンビはその月は出場不可。要するに、月1しかチャンスはないわけ。
最後の3組に残ると、劇場の二軍メンバー10組に混じって入れ替え戦。ここんところ、Jリーグみたい。予選は構成作家、入れ替え戦はお客さんの投票で決まる。
そして13組中上位10組に残ると、月4回、5分程度のネタを途中で止められることなくできる・・・という権利をもらえる。
運良くでられても、毎月防衛戦があるわけね。若い才能が火花を散らしてますよ。で、こんなレベルで3〜5年間も防衛し続けたコンビが、晴れて戦いのない世界にデビューできるというわけだ。
ああしんどい。
生活もすさみますわな。緊張も半端じゃない。弱肉強食の世界でっせ。
西成の小さなマンションの4階。賞味期限切れの弁当を半額で買ってくる。いつ髪の毛が入ってたらしいけど、これがごちそう。「なんで角刈りのおっさんの毛が入ってんねん?」とノリツッコミ。
散髪代がなくて300円持って、「もみあげだけ切ってください」「それでも1000円かかんねん」。ほとんどパチンコで食べてた、という。
不細工、ださい、金がない、SEXもヘタ、夢も叶わない。かといって、これ以上ないくらい努力しているかとも言えないオレ・・・。悔しいことなど数え上げればキリがない。絶望の波打ち際の住人だった。
「どうしたらここから抜け出せるんだろうか?」
わからなかった。わからないけど、そんな悔しい夜ほど、ネタなり面白そうなことなり考えるようにした。その頃のネタ帳を見ると、いま振り返っても全然面白くない。けど、その頃はそうすることでしか楽になれなかった。
いまがいちばんしんどいのだ、いまがいちばん辛いんだ。いつしか、少しだけバンビの尻の穴ほどの小さな光が見えだした。
苦労の数だけネタが増える。実体験ほど説得力のあるネタはない。苦労を苦労のまま受け取ると疲れるだけ。これをどうネタに換えるかを考えると、バンビの尻の穴に小さな光が見えてくる。
ブラマヨの吉田は面白い。小杉もええで。絡んで欲しい芸人ナンバーワンだ。
天才松本人志が、漫才コンビに多いダウンタウンのコピーではなく、まったくオリジナルスタイルの漫才コンビとしてここまで来たブラマヨを絶賛している。プロの目で見てもそうなんだろう。350円高。
ま、来月から音声による「中島孝志の 聴く!通勤快読」がスタートします。で、「これは!」という本を出し惜しみしてるんじゃないかという疑念をお持ちの方。
人をそんなに疑うもんじゃございません。実は・・・その通りなんですけどね。
さて、本書。2005年のM1チャンピオンであるところのブラマヨ。向かって右側のお笑い芸人による処女作です。といっても、書き下ろしではなくて、「マンスリーよしもと」に月1で連載してたものをまとめたヤツ。
しかも、これ、01年10月という売れない時代からのコラムだから、初期の頃は原稿も読者やスタッフたちにおもねる、取り入る、好かれようと懸命。それが売れてくるにしたがって自信がついたのか、だんだん自然になってきます。つまり、好きなように暴れ出してくるわけ。
これ、大切ですね。芸人がセーブしたらつまらんもん。
このコラムの話があったとき、売れてませんでした。オーディションを受けまくってた。オーディションといっても、番組のネタ見せではなく、たった4回の劇場ライブの出番をもらうだけのオーディション。
これがしんどいのよ。オーディションに出場するにはチケットを買わなきゃならない。そのチケットを通行人等に「手売り」するわけ。
ところが、折からのブームで、芸人志望者がわんさかいる。だから、そのチケットすら手に入らない。相棒の小杉竜一が2日前から並んでようやくゲット。
そんなこんなで手に入れても、このオーディションがなかなかシビアなシステム。
つまり、週1で50組くらいの若者が持ち時間2分のネタをする。ほとんど開始1分で落とされる。3〜4組が合格。各週ごとの勝ち抜いた15組(もちろん、ピン)で月末に戦い、3組に絞られる。これが予選イベントなわけ。
1週間で負けたコンビはその月は出場不可。要するに、月1しかチャンスはないわけ。
最後の3組に残ると、劇場の二軍メンバー10組に混じって入れ替え戦。ここんところ、Jリーグみたい。予選は構成作家、入れ替え戦はお客さんの投票で決まる。
そして13組中上位10組に残ると、月4回、5分程度のネタを途中で止められることなくできる・・・という権利をもらえる。
運良くでられても、毎月防衛戦があるわけね。若い才能が火花を散らしてますよ。で、こんなレベルで3〜5年間も防衛し続けたコンビが、晴れて戦いのない世界にデビューできるというわけだ。
ああしんどい。
生活もすさみますわな。緊張も半端じゃない。弱肉強食の世界でっせ。
西成の小さなマンションの4階。賞味期限切れの弁当を半額で買ってくる。いつ髪の毛が入ってたらしいけど、これがごちそう。「なんで角刈りのおっさんの毛が入ってんねん?」とノリツッコミ。
散髪代がなくて300円持って、「もみあげだけ切ってください」「それでも1000円かかんねん」。ほとんどパチンコで食べてた、という。
不細工、ださい、金がない、SEXもヘタ、夢も叶わない。かといって、これ以上ないくらい努力しているかとも言えないオレ・・・。悔しいことなど数え上げればキリがない。絶望の波打ち際の住人だった。
「どうしたらここから抜け出せるんだろうか?」
わからなかった。わからないけど、そんな悔しい夜ほど、ネタなり面白そうなことなり考えるようにした。その頃のネタ帳を見ると、いま振り返っても全然面白くない。けど、その頃はそうすることでしか楽になれなかった。
いまがいちばんしんどいのだ、いまがいちばん辛いんだ。いつしか、少しだけバンビの尻の穴ほどの小さな光が見えだした。
苦労の数だけネタが増える。実体験ほど説得力のあるネタはない。苦労を苦労のまま受け取ると疲れるだけ。これをどうネタに換えるかを考えると、バンビの尻の穴に小さな光が見えてくる。
ブラマヨの吉田は面白い。小杉もええで。絡んで欲しい芸人ナンバーワンだ。
天才松本人志が、漫才コンビに多いダウンタウンのコピーではなく、まったくオリジナルスタイルの漫才コンビとしてここまで来たブラマヨを絶賛している。プロの目で見てもそうなんだろう。350円高。