2003年08月25日「投資戦略の発想法」「個人投資家のすすめ」「資産運用のカラクリ」
1 「投資戦略の発想法」
木村剛著 講談社 1700円
日本振興銀行という新しい金融機関を設立しようということで話題になっている木村さんが著者。
この銀行の仕掛け人は落合総合企画(現オレガ)という会社の社長さん。この方、キーマンネットワークのメンバーなんだよね。わたし、依頼されて、証券会社に何回か講演に行ったもの。
ところで、本書はお金に関するいろんな情報をまとめたもの。
「ファイナンス」という意味は、貯蓄、投資、投機、賭博という四つある。株式投資はビジネスマンあくまでも投資であって、投機ではない。
投資には「一つのカゴに玉子を盛るな」という法則がある。
大事な玉子を一つのカゴに置いて、転んだりしたり目も当てられないではないか。株式は一銘柄に資金を集中すればするほど上がった時にはリターンがあって儲かる。
けど、それではリスクがどうしても多くなる。そこで分散してリスクヘッジをする。分散すれば、儲けも薄くなるが失敗もそれだけ薄くなる。なるべく失敗しない投資方法を考える。
これが大事。これが投資。
「お金を貯めることで大切なのは頭の良さではなく、意志の強さ」ってのは同感だなぁ。
意志が弱いと何もできない。
たとえば、「節約しなくちゃ」「贅沢は敵だ」といくら思っても、赤提灯を見るとフラフラ、フラフラ。赤い灯、青い灯を見ると条件反射か本能か、まるでガス灯に吸い寄せられる蛾のように、まるでゴキブリほいほいにとられるゴキブリのように、このわたしは絡め取られてしまうのであります。
投資というのは面白いもので、長い目で見ることがいちばん大切。というのも、普通のビジネスマンにはデイトレーディングはなかなかできない、と思う。
いったん買ったら塩漬けにして、長く持つ。これが現実的じゃないかな。
たとえば、有名な逸話に「インディアンのマンハッタン投資」というものがある。
一六二六年、先住民のインディアンはたったの二十六ドルでマンハッタン島を白人に引き渡した。
「騙された」と気づいても後の祭り。
だが、この時、もし、この二十六ドルを金利六パーセントの預金口座で運用したとしたらどうなるか?
半年複利で計算すると、いま、五百億ドルをはるかに超える価値になる、というのだ。
こうなれば、子孫はいまのマンハッタンの大部分を取り戻せる。
投資をすると、付加価値がいくらでも出てくる。
まず、経済について敏感になる。たとえば、国際経済、日本経済、国際政治から企業情報などを広く勉強するようになる。こうなれば、仕事でも一流になっていく可能性がある。
もちろん、投資はわたしのようにかつかつの生活をしているようではできない。ある程度の余裕資金を運用するわけだ。思わぬ出費にも対応できないようでは、投資はしないほうがいい。
かといって、お金をすべて投資に回し、毎日、爪に灯をともすような生活ばかりしているようでは、これも本末転倒。若い中から老後を楽しみにするような生活をしてどうなる、というのだ。
不動産は資産になるか?
たとえば、五千万円の家を典型的な三十五年ローンで契約。固定金利五パーセント、毎月均等返済にすると、総返済額はなんと一億五百九十八万円にもなる。
金利三パーセントでも、八千八十二万円にもなる。
サラリーマンの生涯賃金が二億とも三億とも言われる中、不動産というのはものすごい買い物なのだ。
「老後に家一軒しか残せないのか!」という声があるが、わたしは残せるだけましだと思う。不動産すら買わずに、無駄遣いしてしまっては何にもならない。
不動産については人によって判断は分かれると思う。ライフスタイル、価値観などで、持ち家推進派もいれば、賃貸派もいるだろうし、持ち家推進派にしても、マンション派、一戸建て派といろいろだ。
ちなみに、木村さんは賃貸派。不動産のようにリスクの高い商品は持っちゃいけない、と宣言。
わたしも同感。この人と意見が合うんだ、ホントに。
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2 「個人投資家のすすめ」
木村剛・三原淳雄著 アスコム 1500円
これは対談。
個人投資家が心得ておくべきことを、話題豊富な二人が語り合うといったスタイル。
「転職したい、と思う会社の株を買え」はいいなぁ。本当にそうだよ。
その中にマイクロソフトやソニーみたいな会社があれば、ドカンと大化けする。株式投資というのは、株主という立場で経営に参画することを意味するのだ。
三原さんが振り返って、こんな反省している。
「ソニーがトランジスタラジオを新発売。まだ学生時代だったが、新しもの好きの三原さんは月賦までして無理して買った、という。その時、その画期的なラジオを作っているソニーという会社にまでは頭が回らなかったらしい。
その後、社会人になると給料は一万五千円の時代。この時、ソニーの株をまとまった量買うには二五万円必要だったが、やはり、売り出したばかりのブルーバードに目が奪われて六十万円のローンを組んだ。
車はその後、廃車し、いまや跡形もない。一方、もし、ソニーの株をそのまま持っていたとしたら、いまや、なんと五億円の時価になっている」
これはたまらない。株は安い時に買って高い時に売る、とばかり考えている人には五億円まてせ持ちこたえられないだろうね。
やっぱり、大化けする銘柄を買うこと。これが投資の王道だ。
では、どの銘柄が大化けするのか?
そんなことがわかっていたら、わたしは投資顧問業をはじめるよ。
けど、こういう商売をしてるといろんな情報が自然と入ってくるね。
「あの会社、危ないよ」とか、「あそこ、銀行融資、断られたらしいね」とかね。
「えっ、ホント?」という話題が飛び込んでくる。
もう時効だから話すけど、十五年ほど前、某会社の創業者に会っていろいろ話をしていたら、彼がこんなことを言うのだ。
「中島さん、来週、すごいことを新聞発表するんだよ。するとね、きっと株価が二倍にはなると思うよ。これ、内緒だから、だれにも言わないでね」
きっと親切心で言ったんだと思う。わたしが株式投資してると思ったのだろう。残念ながら、株は一切やってなかったから、その時は。
で、内緒と言われると口のあたりがむずむずしてきちゃう。ちょうど、キーマンネットワークの定例会があったので、二次会でテーブルが近かった人にもらしたわけ(ホントに口が軽いなぁ)。
すると、目の色を変えて、「ホント、ホント?」と聞くのだ。
「いや、わかんない。でも、言ってたよ」
後日、その人からご馳走してもらった。言ったとおり、本当に株価が二倍になったのはびっくり。株式投資をしてる人には垂涎の情報だったろうね。
実は、その時、もう一人この話を聞いていたのがいた。彼もこっそり五百万円買っていたという。
この人はわたしのそばに座っただけで、五百万円儲けてしまったわけ(参考までに、この人からはなにもご馳走になっていない。このホームページ見てたら、いまからでも遅くないから連絡するように)。
こんなインサイダー紛いの情報がいつも入ってくるわけはない。
だから、きちんと銘柄を選択するか、プロのファンドマネジャーが銘柄をグルーピングした投資信託を買うしかない。
いまでも、株価が純資産の何倍かを示すPBRが一・〇を割っている。純資産総額が株の時価総額より低い銘柄がたくさんある。
個人個人で投資のスタイルが違う。MMFが評判になると、みな、同じ商品。投信が話題になるとまたみな、同じ商品に投資する。
投資家は臆病だから、どうしても付和雷同になてしまう。
しかし、ここが考え物。
みんなとおなじことをしていたら、この世界、大儲けはできない。
若いということは、時間を味方にすることができるということ。
そこで、「逆張り」という技が登場する。コントラリアンのことだ。昔から、日本でも「人の行く裏に道あり花の山」という相場の諺があるではないか。
「いい会社」ではなく、「いい会社になりそうな会社」を目利きするわけだ。
わたしも株式投資本をたくさんプロデュースする中、耳年増になってしまった。
来年は、わたし自身、ド素人による投資体験談を書こうか、と考えている。でも、ニーズ、あるかなぁ。
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3 「資産運用のカラクリ」
安間伸著 東洋経済新報社 1900円
著者は顧客から預かった資産を運用するファンドマネジャー。
ここ数年、個人顧客向けの国際分散ポートフォリオを担当したものの、日本の難解で複雑な投資税制の前に疑問に感じることばかり。つまり、いったいどうしてこんな税制にしたのか、まったく不明というものが多すぎるわけだ。
同じ投資をしていても、商品が違えば一億円の利益が非課税になったり、半分、税金で取られたりというわけ。
とくに、投資家がどんなに損をしようと税金だけはきっちり取る。まるで、麻雀でボロ負けした後、場代を取り立てる雀荘の親父みたいなもんだ。
「なんだ、結局、雀荘の一人勝ちかよ」
そこで、ファンドを預かる立場としては、「何をいつ売る、買うという判断はもちろん重要だが、その結果は取引コストと税金をカバーするものでなければならない」ということに気づいた。早い話が、「利回りで儲けた、儲けた」と喜んでいるのに、お金を受け取ってびっくり。ぜんぜん少ないわけだ。
「あれ、これじゃ損してるじゃん」
そうなのだ。税金と手数料をさっ引くと儲かってないわけ。
それほど、税金は大きいのである。
投信は何回売買を繰り返したか、その回数に応じて手数料が取られる。信託手数料、保管料などいろいろな名目でガンガン取られる。
「儲かる、儲かる」って聞いたんだけど、全然、ダメじゃん。
たとえば、シンクタンクで投資戦略を指導している人の話。
この人、八六年四月に一〇〇の資金を投下。それが二〇〇二年六月には七二〇まで増えている・・・はず。累積収益率は+六二○だから、年率にすると約+一三・〇パーセントにもなる。百万円が七二〇万円になったわけだ。
利益六二○万円から税金二〇パーセント分(一二四万円)を取られても、元本と合わせれば五九六万円も残る。
これは嬉しい! そこでこの投信を売却したのだが・・・大変なことになった。
口座に振り込まれたのは、たったの三一八万一千円ぽっきり。
こんだけ!
いったいどこがどう間違っていたわけ?
わかる人、いる? いれば、本書を読む必要はない。
実はこれ、当たり前なんだけど、投信ってのは最後に売却した時に税金がかかるわけじゃないのだ。投信は商品の性格上、頻繁に売買が繰り返されているわけ。すなわち、利益が出るたびに税金をがっぽがっぽと取られてきたわけだ。
もちろん、損したら税金はとられない。けど、儲かればがんがんもってかれる。
で、結局、この人、どうなったかというと、十六年の累積で+二一六パーセント。年率にすれば、+七・四パーセントにしかならなかった。試算したのとはまったく違う。捕らぬ狸になっちゃった。
さらにショックだったことは、投資などなんにも知らない妹さんが、株式インデックス投信、債券インデックス投信を各五十万円ずつ買ってそのまま忘れていた。この収益がなんと+二二四パーセント(年率七・五パーセント)にもなって、彼を上回っていた。
つまり、あれが儲かる、これが儲かるのではと売買を繰り返した彼よりも、ほったらかしにしていた彼女の方が儲けていたというわけだ。
こうなった原因は税金です。
商売でもそうだけど、「税金取られたら何も残らない」というケースがたくさんあります。生かさず殺さず、まるで、昔のお百姓さんみたいだよ、これじゃ。
投資の基本とは、いたずらに買ったり売ったりしてはいけないこと。売買手数料をとられるだけだもの。
よほど自信のある時以外は売買はしてはいけないのだ。
最近注目を浴びている外貨預金。
これは為替変動による利益を狙って投資するケースが多いが、これも預金の一つだけに利息もある。ところが、これがいまの税法だとバラバラ。すなわち、利息は利子所得、円高による損益は雑所得に分類され、利子所得はほかの所得と分けて課税されることになる。
早い話が、利子は必ず儲かるからこれだけに課税し、為替で損が出たらこれは雑所得だから救済しない。やらずぷったくりの世界なのだ。
外貨預金のデメリットを整理すると以下の通り。
1投資が分散されていないから、その銀行が潰れたらダメージ拡大。
2預金保険で守られていない。円預金のように一千万円の保護もない。
3両替手数料がバカ高い(往復二パーセント)。
4為替差益が雑所得扱い。
いまの時点では投資家にとって損な商品といわざるをえない。
債券は他人に売ることを前提に発行された信用証書。
個人投資家にとって配当は、出さずに自社株買いをやって株価を高めてもらった方がいい。
配当と株式の損益を合算することはできないから、百万円の配当をもらったからといって、百万円の株式売却損と合算はできない。配当には税金がかかり、売却損は当然、救済されない。
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