2010年07月12日「浜矩子の新しい経済学」 浜矩子著 角川書店 819円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 つまらん選挙でしたねぇ。衆院の落ちこぼれと懐メロタレントばかりじゃねぇ。
 まだ最終結果は出てませんけど、民主ボロ負け。かといって、自民の復活も無し。「どっちも嫌だな。かといって創価学会の信者でもないしマルクスも知らんし・・・」
 見渡せばこんなのしか残ってなかった。「みんなの党」。ま、予定通り漁夫の利を占めたというわけですな。

 民主の敗因はなに? 消費税? 小鳩のカネの問題? 官房長官のとんちんかんな発言(韓国への戦後補償発言)?

 いえいえ、そうではありません。ブレたことですよ。総理のブレ。これがすべてです。

 消費税を争点に勇ましく切り出すのはいいんです。けどね、有権者の拒否反応を見るや「いま上げるなんて言ってません」と弁解。それでもアレルギーが強いと「年収の低い人には還付しますよ」「年収300万円の人」「250万円の人」・・・と迷走の連続。

 呆れました。商人ですな、この男は。ソロバン弾いて演説してるんでしょうか。こんな細かい男に一国のリーダーは務まりませんよ。事業仕訳がお似合いです。

 やっぱ市民運動家の習性というのはなかなか抜けないものですな。
 市民運動家で生き残るにはどうするか? 風見鶏に徹すること。相手の様子を見て合わせること。一匹狼はそうやって生きるんです。

 けど、リーダーはそれじゃダメなのよ。己の信ずることを貫く気概がなけりゃ。
 消費税が必要なら、200%、消費税1本で押し切ればいいのよ。「いま上げるなんて言ってません」「年収の低い人には還付します」なんて言わなくていいの。こんなこと言うから、「ブレた男」と有権者は判断したんです。

 鳩山さんがなぜ支持率を落としたか? ブレたからです。
 日本経済をこんなにした小泉さんでも支持率が高かった理由は? ブレなかったからですよ。

 いま、総混迷、総混乱、総不安のなか、リーダーに求められているモノは「強い信念」です。信念の強さに人心は収れんされていくんです。

 リーダーは迷走しちゃいけません。
 リーダーは妥協しちゃいけません。 
 リーダーは迎合しちゃいけません。
 リーダーは弁解しちゃいけません。
 リーダーは信念を説き続けること。
 
 こういう「虚仮の一念」が菅さんには絶対的に足りなかった。いや、いままでの総理経験者にはなかった。それでも日本経済はもってるんですから、たいしたもんですよ。

 さて、浜さんの新刊ですね。
 浜さんというと「ジュリー!」を思い出すか、海原お浜・こ浜を思い出してしまいますな。かなり古いですな。

「遠く過去を振り返れば振り返るほど、遙か未来が見えてくる」・・・こう言ったのはチャーチルですけど、「これまで」を知らない人間に「これから」は見えるわけがありません。

 2008年9月。地球経済はリーマン・ショックという大激震に見舞われました。この衝撃はその場で収束したわけではなく、いまもなお響いているばかりか、実は、マグマを地下にため、「金融の核爆発」寸前と考えるべきでしょうね。

 リーマン・ショックとはなにか? いまや、子どもでも知ってます。アメリカの歴史ある投資銀行リーマンブラザーズが破綻。これが世界金融危機の引き金を引いてしまった、という大事件です。
 破綻の原因は住宅バブルの崩壊、サブプライムローン問題、その証券化商品を世界中に売りまくられたこと・・・これらの複合汚染といってもいいでしょう。
 負債総額64兆円。

 表面的にはこう言えるでしょうが、真因は・・・金融機関のエゴイズムにあったのではないでしょうか。すなわち、「自分だけ儲かればあとは知らない」というリスク転化の「リレーゲーム」をプログラミングしたことにあります。

 その結果、生まれたリバイアサン(怪物)が「デリバティブ(金融派生商品)」でしたよね。

 当初、人間が開発したものだからいつでもコントロールできるさ、と高をくくっていたものの、怪物はいろんなプログラマーによって手を変え品を換え、いつの間にか、姿形すら見えなくなってしまった。こうなるともはや制御不能。

 結果、どういうことが起きたか? 以前お話ししたように、投資銀行を潰したCEOが何十億、何百億円という退職金を臆面もなく手に取る結果、「今月限りで契約は更新しないから」と、一家の大黒柱や若者の首が切られる、という複雑系の時代に突入してしまったわけです。

 さて、本書ですけど、「カニバリズム経済」の先にあるモノはなにか? どんな未来が描けるのか、描くべきかについて明解な持論を展開・・・詳細はこちらからどうぞ。