2011年01月23日「幻影師 アイゼンハイム」

カテゴリー中島孝志の不良映画日記」

 いつもの七里ガ浜の床屋さんでしばし映画談義。

「最近、なにか観ました?」
「観てないね(「最近」とは「昨日」という意味だから)。いま追い込みだからせいぜいDVD」
「お勧めは?」
「朝、仕事しながら観た『幻影師アイゼンハイム』。まったく期待してなかったんだけど、これは当たりだった」
「幻影師?」
「イリュージョン」
「ミスター・マリック?」
「ハンドパワーとはちがう。サイキックでこの世に現す。けど必ずタネがある」
「手品」
「そう、基本、手品」
「おもしろい?」
「ころっと騙された」
「じゃ観ます。幻影師・・・」
「アイゼンハイム」
 彼、手を休めてノート。

 たしかに当たりでしたね。ひょんな縁なのよ。アイゼンハワーのこと調べてたらついでに見つけたの。映画好きの私が見落としてたくらいマイナー(2006年公開)。アメリカでもほんの数館でしか上映されなかったんだもんね。それが口コミで火がついた。 

 日本ではどうかな? ま、どうでもいいや。私が面白けりゃそれでいいもんね。

 俳優のエドワード・ノートンが好きなのよね。優男。下手すると、アメリカの小倉一郎さん(すみません!)。頼りない役ばかりかというと、そうじゃない。エール大学出身のインテリで役にも脚本にもこだわる。脚本がつまらないってんで、大作の主役オファーを断っちゃう。そうそう、日本語が得意で売れる前は大阪で仕事してたらしいよ(吉本新喜劇見たことあんのかな・・・)。

 そういえば、『ハンニバル』のレクター博士を逮捕したFBIのウィル・グレハム役もそうだった。肝臓刺されて瀕死状態で逮捕してたっけ。
 あと『真実の行方』でまんまと弁護士(リチャード・ギア)を騙す悪党役もよかったんよお。冷静さのなかの残忍さ。理性と知性のになかに潜んでる性格破綻。こういう優男が「怪物」を演じるのってリアルだよね。
 猟奇事件の犯人が逮捕される。鬼瓦権造みたいなヤツだったらなんにも感じないけど、なよなよした優男だったら、超こわ〜〜となりますわな。牡丹灯籠はやっぱ美人じゃないと怖くないもんなあ。 


原作は『バーナム博物館』(スティーヴン・ミルハウザー著)。短編小説を映画化したんよお。

 19世紀。オーストリアが舞台。手品が得意な少年。町でも有名でね。そんな彼が公爵令嬢と恋に落ちた。もち身分が違うから引き離されちゃうけど。で、村を出て東洋まで旅をしていろんな手品をマスターします。名前を変えてウィーンに乗り込んできた。

 大人気の幻影師アイゼンハイム・・・。

 かつての少女はいまや淑女。劇場で再会して恋に落ちるんだけど、実は政略結婚で皇太子と婚約間近。この男がDVでね。暴行と殺害の噂がたくさん。父親=皇帝を引退させて自ら皇帝につこうと画策してるわけ。もち、令嬢との結婚もハンガリーからの支援を得るためなんよ。

 令嬢は幼い頃に引き離された恋を成就させたい。で、「あなたとは結婚しないわ」とひとこと。これが嫉妬と怒りに火をつけちゃうの。皇太子は剣を手に令嬢を追いかける・・・。
 翌日、川で令嬢の遺体発見。犯人が逮捕されても、みな真犯人は皇太子だと知っている。

 そんな中、アイゼンハイムは幽霊を呼び出す新作公演を始めるわけね。

 劇場では手品好きの警部が監視。この警部、アイゼンハイムを逮捕したくない。

「身分をわきまえろ。オレたちにはしょせん叶わない夢さ」
「あんたウィーン市長になるんだろ?」
「皇太子に忠誠を尽くしてる。オレはしょせん肉屋の息子だからな」

 皇太子が殺した令嬢の霊が出る!・・・手品は街で評判になり、とうとう皇太子までが変装して見に来る。

 あいつを逮捕しろ!

 この先はDVD観てちょ。手品が勝つか、権力者が勝つか。最後は「ルネッサ〜ンス!」みたいな警部の高笑い。この役者なかなか渋くていい。

 騙されるカ・イ・カ・ン。もうたまりまへんで。