2013年02月03日魂と肉体の関係。

カテゴリー中島孝志の不良オヤジ日記」

 アジア人初のノーベル文学賞受賞者にラビンドラナート・タゴールがいます。
 日本とのご縁も深く、岡倉天心や河口慧海との親交はよく知られています。日本人の自然を愛する美意識を高く評価し、来日すること5回。インド国歌の作詞作曲者でもありますね。


ぼくの ゆくときが きました。
おかあさま ぼく ゆきます。
さびしい あけがたの しらんでゆく 闇のなかで
あなたが 両手を さしのべて
ねどこの なかの ぼうやを
さがそうと するとき ぼくはいうでしょう
「ぼうやは そこには いませんよ」−−−
おかあさま ぼくは ゆきます。

ぼくは ひと息のほのかな 風になって
あなたを やさしく なでてあげましょう。

おかあさまが みずあびを するときには
みずの おもての さざなみになって
ぼくは いくどもいくども 口づけをしましょう。
かぜのはげしい夜 あめが 木の葉を
たたくとき あなたは ねどこのなかで
ぼくの わらいごえが いなずまと一しょに
あなたの へやに 入るでしょう。

もしあなたが ねむれないで おそくまで
ぼうやのことを かんがえていたら
ぼくは おほしさまから うたってあげます
「おやすみ おかあさま おやすみ」って。

ぼくは さまよう つきのひかりにのって
おかあさまの ねどこに しのびこみ
ねむっている あなたの むねに
やすみましょう。

ぼくは ゆめになりましょう そして
あなたの まぶたの ちいさなすきまから
あなたの ねむりの 深みに
すべりこみましょう。
あなたが びっくりして みまわすとき
きらめく ほたるのように ぼくは
やみのなかへ すいと 逃げてしまいましょう。

プージャの お祭りに 近所のこどもがたちが
うちの まわりにきて あそぶとき
ぼくは 笛の音に とけこんで
一にちじゅう あなたの むねのなかで
おどって いましょう

プージャの祭りの おくりものを
もってきた おばさまは たずねるでしょう
「ぼうやは どこ? お姉さま」って。
おかあさまは しずかに いうでしょう

「ぼうやは わたしの ひとみのなかに
わたしの からだのなかに わたしの
たましいのなかに いますの」って。


 こんな詩を残しています。
 肉体は借り舟。本質は魂。あまりよくわかりませんが、人間が生まれて、生きて、死んで、という時間のなか、どうも家族になるのも、親や子ども、兄弟姉妹になるのも、迷惑をかけたりかけられたり、ときに殺したり殺されたりする人たちは、すべて同じ人。みな関係者のようです。

 インド人のタゴールが霊魂の不滅を信じているだけではありません。日本人の心の中に、潜在意識のなかに根付いているもの。祖先信仰、祖先崇拝、いやいや、そんな大げさにいわなくても、ご先祖様を大切にする。この心根は魂のなせるわざなんですね。

 どうして私たちはお盆や正月にお墓参りをするのか。ご飯が炊きあがると、なにをさとおいても、仏壇、つまり、ご先祖様に差し上げるのか。なぜ感謝申し上げるのか。

 それは先祖の威力を実体験として知っているからです。先祖というのは先に亡くなった人のことです。魂となった早さで決まります。わが子でもご先祖様です。

 私たちが死ぬとき、最近は病院で亡くなる人が8〜9割もいますが、必ず「お迎え」があります。死期が近づきますと、「○○が迎えに来てる」と口走ることがあります。これを医学者、科学者は「せん妄」と切って捨てます。冗談じゃありません。頭がいかに悪いかがわかります。『バカの壁』などご本人が100回読んでもらいたいくらいです。

 脳の仕業とか生理現象ではなく、人間には生まれたときから、「お迎え」というプロセスがプログラミングされています。そして私たちはホッとするのです。
「大丈夫、愛する人たちが待ってくれている」
 死んでは困ると考えるのは生きている私たちのエゴなんですね。選ぶのは本人です。病気でしかたなく? ちがいます。事故でむりやり? ちがいます。本人の選択なのです。

「これでいい。これでいいんだ」と本人がベストの選択をしているんです。役割を立派に果たしたのです。私たちはその役割をきちんと理解し、受け容れ、そして感謝しなければならないのです。

 なぜ親子になったのか? なぜ夫婦になったのか? なぜ友人になったのか? すべて理由があります。知らないのは無明だからです。いくら考えてもわからない。わからなくてもいいんです。わからなくても、徹底的に感謝して徹底的に反省して生きれば、先祖は喜んでいるのです。

 私たちが目指すことは、自分が立派な先祖になることです。

 出会う人はみなご縁があるんでしょうな。月日は百代の過客。時も人もしょせん旅人。この一期一会を思うとき、どれだけ深く考えても考えすぎることはありませんね。