2013年12月20日「鑑定士と顔のない依頼人」

カテゴリー中島孝志の不良映画日記」

 ジュゼッペ・トルナトーレ監督といえば、『ニュー・シネマ・パラダイス』とか『マレーナ』などで知られますわな。
 で、ただいま封切り中の『鑑定士と顔のない依頼人』がヒット中ですね。

 仕事場の近所だと、ららぽ〜と横浜か川崎TOHOCINEMASしかないんよ。で、この年末進行のくそ忙しい中にもかかわらず、やっぱ観ちゃいました。ま、その分徹夜すっからいいかっ。



 主人公はいい年した一流のオークショニア。もち、美術品の鑑定士としても目利きで通ってる男。こういうタイプの人間によくありがちなんだけど人間嫌いつうか、人とのつきあい方がわからない。まして女性に恋したことなんてさらさらありません。

 いや、恋はしてる。絵の中の女性にね。彼の秘密の部屋には壁一面に女性の顔顔顔。これ、半端ないっす。

 もちこれらの絵はすべて一流品。どうして手に入れられたか? それはちょいとワケありでね。

 で、この男。引きこもりの若い女から鑑定依頼を受けます。死んだ父親はこの鑑定士でなければいかん、と言い残したからね。普通は断る。もち、この男も断った。でも、すごいお宝があるかもしれない、という欲には勝てない。

 なんだかんだ理由をつけて会わない女。壁越しにしか話さない。そんな態度に自分と共通点を見いだして、この男、はじめて生身の女に恋しちゃう。

 怖いんですよ。この年で初恋なんて。免疫力がないから。

 この男。すべてを無くします。身ぐるみ剥がされます。恋は盲目。ミステリーというより、まあよくある話だよね。こんなこたあ。鑑定士じゃなくて、フィリピーナに貢いだ年金基金の担当者とかチリ女に億の金を貢いだ公務員とかたくさんいるじゃないっすかあ。

 モテない男がモテ出す。モテキじゃないの。カネなのよ、カネ。それを自分の魅力と勘違いしたらあかんなあ。

 「ミステリーだが愛の物語」と監督は語ってますけど、殺人があるわけじゃなし。警察には迷いに迷って行かないし。ま、ミステリーつうかサスペンスつうか。
 
 で、壁越しでしか話さない女。引きこもり女つうのは、監督自身、20年前に会ったことがあるらしい。いつか素材として使おうと思ってたらしいよ。

 主人公バージルを演じるのは『シャイン』『英国王のスピーチ』のジェフリー・ラッシュですな。

 で、気づいたんだけど、女が借りてた屋敷ですけど、これ、映画『コッチコック』でアンソニー・ホプキンス&ヘレン・ミレンが、パラマウントがカネ出してくんないんで自腹で「サイコ」つう映画を作るんだけど、そのとき抵当に入れてた屋敷じゃないかしらん。よお似とるんだわあ。ちゃうかなあ。

 

 トルナトーレ監督作品の一押しは『海の上のピアニスト』なんだよね。主役のティム・ロス大好きなのよねえ。これお勧め。ぜひ観てください。
 

 さて「中島孝志の 聴く!通勤快読」でご紹介する本は『あかんやつら 東映京都撮影所血風録』(春日太一著・文藝春秋)です。詳細はこちらからどうぞ。