2017年10月14日「わたしを離さないで」

カテゴリー中島孝志の不良映画日記」

 わたしたちと、わたしたちが救った人々になんの違いがあるの?
 みな終了する。生を理解することなく命は尽きる。

 空海ですな。

 三界の狂人は狂せることを知らず、四生の盲者は盲なることを識らず。
 生まれ生まれ生まれ生まれて生のはじめに暗く、死に死に死に死んで死の終わりに冥し。(『秘蔵宝鑰』)



 命にはオリジナルがあって、そのクローンまでできて、クローンたちはオリジナルのためにいつか臓器を提供しなきゃならない。だから、クローンたちの使命は「健康に生きること」。

 スペアの部品なわけさ。

 クローンの子供たちは教育で洗脳され、自分の宿命を「覚悟」するんだけどね、2ー3回も提供すると心身ともに疲労困憊。免疫不全、合併症を併発して「終了」することが多い。
 万が一、4回目でも「終了」しないと果てしなく部品として扱われ、回復治療もなし。

 クローンは人間じゃない? いえ、人間です。夢だって見られる。永遠に叶えられないけどね。

 若くして死なねばならないからさ。

 「提供」が猶予されるのは愛し愛される2人、と証明された場合のみ、いう噂が流れます。やっぱ人間じゃないですか?

 「終了」が怖いんですよ。3回提供して「終了」できなかったら? 強制終了してあげる。

 かつて、もっと若くして「終了」を余儀なくされた人たちがいたと思います。

 特攻兵士たちですね。彼らの夢は日本の平和と家族の笑顔だったと思いますよ。戦争はだれだって嫌ですよ。前線に送られる兵士はとくにそうでしょう。古今東西、軍人がいちばん戦争が嫌いです。

 戦争利権に与る連中だけが戦争好きなんでしょう。

 クローンで生まれようとオリジナルで生まれようと、心と魂を持った人間です。片や生きるために生き、片や死ぬために死ぬ。

 どちらも生とはなにかを知らず、死とは何かを知らない。生きている時は生きることだけ、死んだら死だけ。死ぬ瞬間に生と死は存在しません。「前後裁断」ですな。

 生を生ききる、死を死にきる、と言い換えてもいいかもしれません。

 空海も道元もありとあらゆる祖師もここを極めようとしてきたんでしょうな。

 カズオ・イシグロさん原作。綾瀬はるかさん主演でドラマ化しましたけど、重たいわなあ。週末に再放送するらしいっす。永平寺にいるから録画しとかなあかん。