2018年04月23日マルチ人間わぐりたかしさんの最新刊です。

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 尊敬すべき親友わぐりたかしさんがあの名著『地団駄は島根で踏め踏め』(光文社)を大幅加筆した『「ちんたら」の語源は鹿児島にあった!』を出版! これがまたご機嫌な本になってるわけで。

 ご機嫌つう意味は、ついつい人に話したくなったり、「なんか、私、頭良くなってね?」と感じたり、価値がたくさんあるわけよ。

 つうことで、「中島孝志の聴く!(読む!)通勤快読」では今日と明日連続で紹介させて頂きます。

 で、「通勤快読」の中では、時間がないので話しませんでしたけど、そもそもの出会いは「アマゾン」なのよ。

 私、アマゾンで古本買ったんです。すると出品者からメール。「ご注文ありがとうございます」つう返信メールは当たり前。けど今回は内容がちがう。

 「もしかして、あの中島さんですか?」
 「はい、あの中島です」
 「読んでます。ファンです」と嬉しい返信。
 「じゃサイン本送りますよ」
 「どうも」

 つまり、出品者と購買者という関係だったわけ。「きっかけ」なんてのはそういうもんでしょ。大げさに言えば「運命の赤い糸」。ま、期待する美女ではなかったけどね。

 そうそう、それがわぐりたかしさん。

 その頃は放送作家やアニメ脚本家として大活躍。朝の情報番組をはじめ、彼が関係する番組の週間視聴率を合計すると150%になるはず。
 で、わぐりさんの紹介で会ったのが安達元一さん。これまた当時はダウンタウン、ナイナイ等の番組を企画してた人で、こちらは週間視聴率200%を叩き出す超売れっ子放送作家。いまは小説家としても活躍してるはず。あの頃、放送されてた帯ドラマ『LOVE GAME』(日本テレビ系)は彼の原作だったよね。

 わぐりさんのおかげで日本フードジャーナリスト会議の面々にも人脈ができて、ついでにメンバー有志で『東京 ひとりで行ける上質ごはん.』(東京書籍)まで出版。嬉しいよねえ。

 元もと好奇心が尋常じゃないから、いろんなことにクビどころか身体をどっぷり突っ込んじゃってるみたいで、ウィキで調べると次のようになるみたい。

 「学生時代に『アメリカ横断ウルトラクイズ』で放送作家デビュー。ディレクターやプロデューサーも兼務しながら、情報・バラエティ−・報道・教養・ドキュメンタリーなど幅広いジャンルで数々のヒット番組を生みだす」

 「世界でただ1人の“語源ハンター”として、さまざまな言葉が誕生した由来の地「語源遺産」を訪ねて国内外各地を旅している」
 これこれ、これが本になったつうこと。

 「14年4月、3年の任期付で大阪府公立学校長に任命され、大阪府立金岡高等学校(堺市)の第13代校長として着任。日本初の(公認)帰宅部を創設。ホリエモンやLINE創業者森川亮氏といったIT系の大物ゲスト講師などを続々招聘して話題」

 「15年、松竹芸能と協働で〈正解のない時代に、正解のない授業シリーズ第1弾〉日本初の新教育課程「探究(笑育)」を開発実践。漫才づくりなどを通して創造力・論理的思考力・情報編集力・コミュニケーション能力・表現力といったスキルを身につける先進的なアクティブ・ラーニング型授業として注目」

 「漫才の頂上決戦「M-1グランプリ2015に『校長・教頭コンビ』で出場。同時に出場した『生徒会長・副会長コンビ』とともに2回戦に進出」

 「17年3月、大阪府公立学校長を任期満了退職後、一般社団法人 全国寺社観光協会の企画室長に転身。17年3月、慶應義塾大学文学部卒業。4月、大阪府立大学大学院経済学研究科(観光・地域創造専攻)博士前期課程入学」

 ま、こんなわけね。ヘッドワークが猛烈に強い。で、フットワークは軽い。だから、アマゾン古書の売買だけでもネットワークをつくっちゃう。

 ねっ、すごいっしょ。あっ、思い出した。わぐりさんとのことは『すごい!人脈』(マガジンハウス)に書いたんだ。


 
 つうことで、09年04月07日に親本『地団駄は島根で踏め』を10年前のホームページ時代の文章でご紹介しまひょ。

 「これを力作といわずして何と言おう。ま、そういう本です。
 ホントお疲れ様でした。

 著者のメルマガつうか毎月曜日に届くメールに、いつの頃からか、「語源ハンター」とか「語源の旅に出てる」とか書いてあったんだけどね。いつも遠くからいろんな土産話が届くんで、「何やってんだろ?」と気にはなってたんです。
 そうか、こういうことだったのね。ホントお疲れ様でした。

 実は私も「大言海」の大ファンで語源の隠れファンなの。
 ですんで、著者があとがきで触れてる「糸目をつけない(糸目って貨幣の単位なのよ)」等々はあちこちの本で紹介してきたんよ。ほかにも一般教養として「地団駄を踏む」「うだつがあがらない」「土壇場」「関の山」「火蓋を切る」「後の祭り」「ひとり相撲」「醍醐味(乳→酪→生酥→熟酥→醍醐とミルクが生成される様。熟酥=サルピス。カルピスの語源なのよん)」は知ってました。

 「知ってました」けど、それは本を紐解いてどこかで読んだ、どこかで勉強した、つうことで「知ってる」わけ。そこに肉がついて、その他の余計な雑学(これがいちばん重要!)までついて、という広がりはありません。

 たとえば、「地団駄を踏む」。

 実は私も出雲に旅したとき(この頃はまさか隔月で出雲で講義することになるとは思いませんでしたね)、安達美術館を鑑賞したくて安来経由で2日連続で通ったのね。帰りに「たたら技術」で有名な和鋼博物館に寄ってるの。「地たたらを踏む」から来てるのよね。いまのいままですっかり忘れてました。本書を読んで、ああそうだった、とようやく思い出す始末だもん。

 ところが、著者はこの語源は出雲だぞとわかると、寝台特急「サンライズ出雲」に乗り込んじゃう。語源ハンティングのためならたとえ火の中水の中、あちこちに出掛けちゃう。そうです。著者は「語源界のゴルゴ13」といってもいい存在なのです。

 この民俗学的アプローチ。フィールドワークはよっぽどの「好奇心」がないとできませんな。つうか、酔うたように狂うたように熱に浮かされないとできない所業です。業といってもいいでしょう。

 なんといっても、本書の魅力は、読みながら著者と一緒にその地を旅してるという、愉快で痛快な「錯覚」に浸れることにあるのではないでしょうか。ああいい気持ち。

 知的冒険つう旅? いやいや、もっと人間くさくてハプニングの多い旅そのもの。そうそう、これこそ読書本来の醍醐味といってもいいですな。」



 というわけで、今日の「通勤快読」でご紹介する本は「『ちんたら』の語源は鹿児島にあった! ことばの発祥地をめぐる全国23の旅 前編」(わぐりたかし著・907円・光文社)です。読んでね。