2018年09月04日トランプだからできるドル基軸体制の終焉。。。

カテゴリー中島孝志のとってもいい加減な市場観測日記」

 さあ、今日から東京原原がスタートします。メンバーはご参集下さい。台風来襲らしいっすけどね、晴れ男と台風。どうなりますか?


 いつものように1日遅れの「お裾分け」。有料情報サイトに連載してる原稿を24時間遅れで無料でお届けします。あちらは莫大な原稿料頂戴してるんでね。あしからず。少し遅れてるけど、その分、新情報も入れますんでご勘弁。


 さーーて。新興国の通貨下落が止まりませんね。対ドルで、トルコリラ(▼50%)、アルゼンチンペソ(▼40%)、ブラジルレアル(▼30%下落)、インドルピー(▼10%)、南アフリカランド(▼15%)と軒並み下落(8月15日)。







 ま、しかたないわな。リスクオフになればマネーはさっと消えちゃいますもん。それが新興国の宿命。基本、欧米の、最近は中国の植民地だもんしょうがねえ。

 共通するのはいずれも経常赤字国家で財務が弱いこと。外貨準備高が水準よりも大幅に少ないこと。つまり、借金体質であることです。

 世界一の借金大国アメリカが大きな顔(いまだけ!)をしていられるのはもちろん、「基軸通貨ドル」を擁しているからにほかなりません。
 世界貿易の決済通貨は圧倒的にドルですもんね。

 金交換を拒否した1971年8月15日。金とはペグらないけど、原油決済通貨として生き延びることに成功。サウジアラムコ上場を土壇場でトランプからスルーされたサウジでも、用心棒はアメリカを雇うしかなかったわけでね。ジャイアンはサウジ家安泰を保障してやる、つう交換条件でディール成立。





 さて、金価格が大底から持ち直しています。けど、ボリンジャーバンド等で見る限り、それほど強いわけではありません。ただ、ドル指数も少しずつ下げています。人民元はじめ、その他の通貨があまりにも弱いためにドル独歩高(=なかなか円高にならない)という様相を呈しています。

 相対的に強いだけで絶対的に強いわけではないわけね。

 「安倍政権はアメリカべったり」というのは野党の常套句ですが、現実を直視しない性分は野党のセンセ方、相変わらずですね。だから政権がとれない、つうことに気づかんといかんわな。
 「人材がいない!」と、自由党党首だった小沢一郎さんは自民党の福田康夫総裁に合併をもちかけたことがありますが、人材難はいまだに続いています。日本では政治家そはそんなに美味しい仕事ではありませんから、いちばん人材が集まらない「構造不況業種」なんで致し方ありません。

 さて、安倍政権はアメリカにべったりどころか、反旗を翻している点が少なくありません。たとえば、トランプが離脱した条約、協定に対して、安倍政権は相変わらず支持し、加盟を保持し、離脱などしていませんもんね。

□TPP推進
□パリ協定支持
□対ロ関係接近(オバマ政権時代から)
□エルサレム首都非認定
□イラン核合意支持
□関税政策不支持
□北朝鮮制裁ますます強化(トランプの行動も監視)

 ほかにもたくさんありまっせ。

 さて、米中貿易摩擦で中国とガチンコの対立を演じてるトランプですが、今月からいよいよアメリカは対日交渉に入ります。同盟国だからって手綱を緩めるはずありません。逆に同盟国だからこそ強烈に譲歩を迫るんとちゃうかな。

 考えてみれば、長年、政治経済等々でコネクションのある同盟国のほうが交渉しやすいではありませんか。ですから、NAFTAに対しても、対ユーロについても力づくで押し切ろう、としているわけでね。

もちろん、こういうジャイアンには「WTO」という駆け込み機関がありますけど、トランプは「偏向WTOに未練はないかんね!」とここでも離脱宣言。つまり、トランプは、わが意のままにならないものはありとあらゆるものすべてダメ!というスタンスなのね。

 こういうジャイアンにはどうしたらよかんべ? 長いものには巻かれろ、がベスト?

 日本は力任せのジャイアンに対して、いままでギブ・アンド・テイクで説得を繰り返してきました。説得が灰燼に帰す、つう結果も少なくありませんでした。しかし敗戦後、ジャイアンに保護してもらうのが最大の国益、と多くの先人は考えてきたのでしょうが、戦後復興資金を返済した2013年頃から対米スタンスが微妙に変化してきている、と思うのです。


「おまえんとこの大統領がやいのやいのやいの、うるさいから合意してやったんやないかい。今ごろ勝手に抜けんじゃねえっての」

 「アメリカに忠誠を誓ったところで日本の得になることは一つもない。振り回されるだけバカを見る」

 ようやく気づいたつうか、気づいても行動できなかったつうか、ここに来て風が変わったね。もちろん、同盟国アメリカを最優先することは言うまでもありません。でなければ、ありもしないスキャンダルで政権を追われるか、政治生命どころか、ほんとうに毒を盛られかねませんから。
 
 2012年1月、日本はイラン産原油の輸入削減をアメリカから強いられたことがあります。イラン原油問題は、イランとの交渉よりアメリカの横やりのおかげで日本は何回も煮え湯を飲まされてきました。1980年のイラン・イラク戦争のせいで(アメリカが仕掛けた戦争です)、イランと進めてきた油田開発を中止せざるをえなかったもんね。

 イランからは年間必要量の10%を輸入してましたけど、その後、ゼロ。そして解除されてから5%まで持ち直したのが、またゼロになりかねない。「脱原油」の方向性で動いてきたのが、アメリカ製欠陥原発による原発事故のおかげで、原油依存は相変わらずだから、厳しいよね。

 アメリカの命令に唯々諾々と従ったら日本経済はストップしてしまう。

 イランから原油を買うだけでなく、99年に発見されたイラン南西部のアザデガン油田開発を日本は手がけてきました。推定埋蔵量260億バレル(世界最大規模)つう良質油田。資源のない日本は絶対に実現したいプロジェクトでしたよ。で、当時のハタミ大統領を招待。開発権を得るための投資は総額20億ドル。
 「日本はイランと緊密になるな。アザデガン油田開発に協力するな!」とアメリカからねじ込まれ、結局、日本はこの貴重な権益を放棄。

 アメリカはなにを考えているのか? 日本に圧力をかければ、漁夫の利を得るのは中国とロシア。同盟国日本を弱めてどうするつもり?

 当時のチェイニー副大統領が先頭に立って、開発権獲得に動いた日本人を続々と排除してたのよ。



 トランプ政権は同じことをやろうとしてます。この11月4日から、イラン原油購入企業には取引禁止するかんね、つう制裁を発動します(2カ月前通告だからちょうどいま)。

 で、中国とロシアはイラン原油の輸入継続をとっくに決めてます。とくにイラン最大の輸出先中国は、取引中止企業分まで購入する、と発表。
 中国、ロシア、イランはアメリカと対立してるから、的にかけられた同士で連帯する、つう狙いもあるでしょね。エネルギー資源の欲しい中国としてはチャンス。。。

 ところで、イラン原油を決済するとき、基軸通貨米ドルを使うと明細が自動的にニューヨーク連銀に捕捉されてしまいます。すると当然、当該企業は制裁を受けざるをえません。

 その対抗策として・・・イラン原油輸入企業はドル建てで決済しない。自国通貨あるいはその他通貨で決済する、つうことになるだろね。



 それは中国、ロシア、EU、インド、韓国・・・そして日本。

 「アメリカべったりの日本が!?」
 「トランプのイエスマン安倍が!?」

 かつての日本なら、アメリカの命令に唯々諾々と従ったと思う。トランプとアンダーグラウンドで交渉して「例外・除外・特別扱い」してもらおうとしたかもしれん。しかし今月からおいおい明らかになると思うけど、トランプは日本を特別扱いしませんよ。同盟国から締め上げるつもりだから。

 ならばどうするか? トランプの指示には従わない。これがベスト。

 実際、経産大臣みずから、「(政府の指示を待つことなく)、石油会社がそれぞれ判断すべきである」と語ってます。

 こんな芸当ができるのもトランプが大統領だからではなく、アメリカを支配する勢力がまっぷたつに分裂してるから。トランプ自体、自分の方針を最短距離で突っ走れるわけではなく、そのときの風向きを見て迂回しながらジグザグに進まざるをえないのね。だから、端から見ていると一貫せずフラフラしています。

 さて、この「事件」で重要なことが1つあります。いよいよ原油決済にドルが使われなくなるかも、つうこと。たとえ、いまのところ、イランのみとはいえ大きいですよ。

 サウジアラムコ上場を土壇場で協力拒否したトランプから、サウジ皇太子は安全保障の面からも、ロシアのプーチンへとシフトしつつあります。サウジもドル決済から自国通貨決済も認めるかもしれません。

 ブッシュ・ジュニアは原油決済に米ドルが外されることを怖れて、「9.11の首謀者アルカイダのスポンサーだ!」「大量破壊兵器を隠し持ってる!」と嘘八百を並べ立ててサダム・フセインを処刑しました。
 いまのイラクはどうなってる? サダム・フセイン時代のほうが自由で経済も社会も安定してましたよ。「サダム・フセインの無実」を証明したCIA担当者の報告を握りつぶしたのはディック・チェイニー副大統領と部下のリチャード・アーミテージというネオコン・コンビ。

盤石だったドル基軸通貨体制が、蟻の穴から崩れることになるかもしれません。



 ドル人気が下落すればドル指数も下落します。ユーロ、円、人民元はもちろん、新興国通貨も息を吹き返すかもしれません。ゴミのような通貨ばかりかもしれんけど、「団結」すれば、ユーロのような通貨体制に成長するかもしれんわな。あるいは一気に仮想通貨へとジャンプするかもしれませんけど。

 いずれにせよ、ドル指数下落が意味することは大きいですよ。円高ドル安。ダウ高騰。で、利上げ速度低下。長期金利低下。長短金利いよいよ逆転。さらにダウ高。イラン原油決済通貨の動向が金価格に与える影響は少なくありませんわな。


 さて、今日の「通勤快読」でご紹介する本は「ラブホの上野さんの恋愛相談2」(上野著・1,296円・KADOKAWA)です。