2019年08月22日宝塚雪組「壬生義士伝」

カテゴリー中島孝志の落語・演劇・タカラヅカ万歳!」

 圧倒的に美しい原作を雪組ならではの舞台がさらに美しい物語へと昇華してくれました。

 歌も踊りも芝居もこの組は完璧だわな。噛んだ科白まで笑いにかえちゃうアドリブ。なかなかです。



 浅田次郎さんのベストセラー小説「壬生義士伝」。新選組の名だたる隊士が一目おいた南部脱藩・吉村貫一郎。その武士としての義、家族への愛そして友との友情を描いてます。


「新選組隊士吉村貫一郎、徳川の殿軍をばお務め申す! 一天万乗の天皇さまに弓引くつもりはござらねえども、拙者の義のために戦はせねばなり申さぬ! いざお相手いたす!」

 ある映画評論家が浅田次郎さんの創作で生まれた、と書いてますけど、これ、ベースは子母澤寛の『新撰組始末記三部作』にあるのよね。浅田先生ご自身もそうおっしゃってます。不勉強ですな。

 そればかりか、あの水木しげるさんも子母澤作品をベースに漫画『幕末の親父』を描いてます。

 守銭奴とバカにされても蛙の面になんとか。武士が守銭奴と侮られて悔しくないはずがありません。けど、徹底的に守銭奴を貫きます。仲間をさりげなく脅して口止め料を頂戴したりね。

 それは貧困でどうしようもない南部盛岡の家族への仕送りのため。

 えらいなー。見栄も体裁もへったくれもなにもない。家族を守る。そのための脱藩。出稼ぎ浪人ですからね、この男は。けど、武士としての「義」と「誠」は貫く。正真正銘の武士でした。





 原作もいい。映画もいい。舞台もいい。もち、宝塚もいい。すべてで『壬生義士伝』を満喫すべきですよ。文豪浅田先生、初の時代小説ですから、これは。

 おもさげなさんす。