2020年03月17日マスクがどうして不足するのか?

カテゴリー中島孝志の不良オヤジ日記」

 忘れないうちに(その1)・・・週末3/21(土)は出雲原原です。メンバーはご参集くださいませ。なんと連休の2日目なんですね。気づきませんでした。

 忘れないうちに(そ2)・・・ダウ史上最大の下げ幅。原油28ドル台突入!ダウ下落に相反して金ゴールドのみが上昇。「恐慌」とはすべての価値が一斉に下落すること。金価格も大幅下落します。ということは?



 かつて、パウエルの前任者=ジャネット・イエレン曰く「FRBが株式や社債を購入できれば、景気悪化時の刺激策として有益になるんだけど」と述べたことがありました(16/9/29カンザスシティ地区連銀主催の会合)。

 いまからやれば?



 米国株で言えば、週末は先物市場のトリプルウィッチングデー(株式先物取引、株価指数オプション取引、個別株オプション取引の取引期限満了日(SQ)が重なる日のこと)。ここで落ち着かなければ「まさかの恐慌」入り必至。金価格まで暴落してもおかしくありません。いずれにしても要注目。







 暴落自体は企業経営にはノックアウト効果はありません。けど、こういう事態で投資家・経営者は「現金オリエンテッド」となりますから、現金化できるものはしとこう、と一斉に動きます。

 「買い占め、買いだめはあかんやろ!」と言いながらしてしまうのと同じ。

 いま、スーパーや量販店ではマスクとか食品をはじめとした生活必需品の「買い占め」「買いだめ」行列で3-4月はかなり売上が見込めるんじゃないですか。「外出回避」で消費の縮小と拡大。業界では明暗がくっきり。 

 さーて、マスクが足りないんですね。どこにあるんでしょうね。コンビニはないし、近くの薬局には「マスクありません」といきなり入口に立て看があるし。

 ほかの薬局ではたまにマスクがあるらしくて、それ目当てに朝6時半から行列。いつもあるわけではなくて、1週間に1回くらいらしいけどね。

 凄いのは外資系量販店C。たしか10時オープンだったと思うけど、6時半には200人くらいのお客さんが行列つくってます。


オイルショック時代はトイレットペーパー目当ての行列。笑えますか?

 なんなんだ、これは? やっぱマスク目当ての行列なのね。なんでも150枚入りケース売りらしい。
 いつも商品があるわけじゃないんですよ。あるかないかは開いてみないとわからない。ま、並ばなくちゃ買えないからね。ほとんど宝くじ感覚なんでしょうね。

 で、行列のお客さんはたいてい同じ人。散歩のついでに並んでるのかな。で、買えればラッキー。宝くじというより商店街の抽選みたいなもんかいな。

 一方、売る側にしてみると、マスクさえあれば集客できるってんでね。知人の商社経営者のとこには九州の量販店の人が買い付けに来たのよ。深夜まで粘られてマスク120万枚を売ってあげたらしいけど、「身内とか従業員で使う」とか言ってたらしい。けど、やっぱ店頭で売ってた。

 商売人だもん、当たり前。そんなのに売るなよ、といってもねー。マスク目当てにこんだけ行列つくるんですから、マスクさえあれば儲かる、なんとか仕入れよう、と必死になるのは当然ですよ。

 商売人は儲けてナンボ。「儲けたいから」と正直に言ったら、売ってくれない、と思ったのかね。

 でも、いま、流通してるマスクなんて、SARSとかMERS、鳥インフル時代の「売れ残り」ちゃうかな? そんなんでも欲しいのよ。いまプレゼントでいちばん喜ばれるのが「マスク」ですからね。桐箱に入れて献上してはどうかな。

 みなが欲しいから価値が高騰するわけでね。希少価値というヤツですな。

 「どうですか? マスク10枚で」
 「おぬしもワルよのー」

 賄賂のネタにマスク。マスク10枚で金1キロとか。そのうち落ち目のドルに代わって「マスク」が通貨単位になるかも。

 「チューリップバブル」もこういう構造だったんだわな。

 さーて、どうしてマスクがないんでしょ? 考えたことありますか? 人気で製造が間に合わない? 家電メーカーのシャープまで作り始めました。では流通の問題?

 いえいえ。本質的な問題は「政府のスタンス」にあります。一言で言えば、「人間通ではない」ということです。「人」というものを理解してない「殿上人」の政策にあります。

 説明する前に、松下幸之助さんのお話をしましょう。終戦直後ですから、大昔のことです。当時、公職追放されてましてね。あちこちに出かけていっては「辻説法」みたいなことをしてたんです。
 ある時、大阪地裁で判事さん50人を集めて懇話会みたいなものがありました。そこで、若い判事さんから質問がありました。





 何が言いたいかというと、マスクですね。石炭じゃありません。けど、同じことです。政府はマスクを「高く売ってはいけない」「転売してはいけない」、一方で「たくさんつくってほしい」「安くしてほしい」というわけですね。

 一見、国民目線に立った正義の味方。だから始末に悪い。正論ほど使えないものはありませんからね。マスクが市場に出ないのは「高く売りたい」「転売したい」「安く作りたくない」と現場は思ってるからですよ。

 大量生産のために懸命に工場を動かす。そのためには、労賃がかかります。従業員をたくさん雇わなくちゃ。となりますと、ただでさえ人手不足なのにリクルーティングにさらにお金がかかります。
 原材料を確保する。たくさん輸入したい。相手先は長い取引先との商売を優先しますよね。
 設備投資をする。生産性を上げるために機械を導入したい。
 
 さて、製造者は投下したコストをいつ回収できるんでしょうか。特効薬開発に邁進している製薬会社もしかりです。

 こういう状況ですから、たくさん作りたい、安く販売したい。だれもがそう思ってますよ。中国人じゃないんですから。

 政府がやっていることは70年前と変わりません。マスクを市場にあふれるほど供給したければ、製造者と販売業者が喜んで作りたくなる、売りたくなる施策を考えなくちゃね。

 「高く売ってもかまわない」
 「転売ノープロブレム」
 「美味しい商売だ」

 儲かるようにしてやればいいんですよ。一時的に高額になるかもしれませんけどね、あっという間に落ちつきます。競争が出てきますから。

 たとえば、設備投資の投融資には補助金を出す、在庫が残ったら全量買い上げしてやる。とくに政府ができることは税の一括処理(即時償却)ですよ。そうしたら関係ない設備投資も含めて始める経営者が出てきます。国策に協力した貢献者として、政府は税務署に命じて「緩く処理」させればいいんです。 
 
 ああ、昔、幸之助さんが石炭問題で義憤にかられていたことがあったな、と思い出した次第です。

 実は一時期のトレペみたいに「買い占め」が進んでいるのは「マスク」だけではありません。近々、お話します。

 さて今日の「通勤快読」でご紹介する本は 『女子と鉄道』(酒井順子著・545円・光文社) です。とてもいい本です。