2004年09月27日「30分で5億売った男の買ってもらう技法」「笑って仕事をしてますか?」「キッパリ」

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」


1 「30分で5億売った男の買ってもらう技法」
 星野卓也著 インデックス 1470円

 著者はテレビショッピングの構成作家。

 いま、どのテレビ局をみても、テレビショッピングばかりじゃないですか?
 昔は、深夜枠しかなかったんですよね。徹夜で仕事してる時など、すべての番組が終わって、それでも頑張ってやってるのが、この番組というか、コーナーというか、なんなんでしょ?
 わたし、仕事中、テレビつけっぱなしですから、このテレビショッピングは重宝しました。

 それがいまや、昼はもちろん、午前中、早朝、のべつまくなしにやってます。
 そのうち、ゴールデン、プライムにも進出しくるんじゃないかな。すでに、CMではジャパネットタカタなんか、やってるもんね。

 さて、内容です。

 著者は元々、日芸出身で、映画とか、脚本とかを勉強してた人。
 独立すると、テレビ番組からゲームのシナリオ、企業マニュアル、マーケティングのリサーチ、DMの企画構成など、ジャンルを問わずに、クリエイティブな仕事を展開してるんです。

 だから、このわずか30分番組にも、映画のノウハウをフルに応用してるというわけです。

 たとえば、基本的な原理原則は次の通り。

 映画は時間芸術。だから、限られた時間内にロス無く、情報を入れ込む。これが勝負。
 物語を進めるには、観客の感情を揺さぶって、興味を引きつけるべく、意味あるエピソードを効果的に配置する。
 エンタテイメント映画は、見る前と見た後とでは、観客が少しだけ成長した気分になれるように紡ぐ。
 そして映画の物語には、構造というものが存在し、その構造が記号的にきちんと配列されていることで、受け取る側に対して強い求心力を与える。

 まっ、具体的なことはこれからです。

 テレショでは、構成作家が台本を感いています。
 まるで、ドラマ。
 そう、30分のドラマなのよ、これ。
 しかも、30分のテレショ番組を作るには、最低300万円はかかるのね。だから、コストパフォーマンスの合わない売り方などできないわけ。
 で、彼は先に述べた映画技法を応用して、「物語論法」という商品訴求展開を考えました。

 「人間は根元的に物語を欲している」

 一本5万円のゴルフクラブを売る時(もちろん、テレショで)。この時は一万件ものオーダーが入ったそうです。で、5億円。
 1万5千円の低反発ウレタン枕は、3万個ものオーダー。

 これらも基本的には物語論法で売ったわけです。
 物語には起承転結がありますけど、著者は三部構成にしました。

 第1部は、たとえば、ウレタン枕を売る場合だと、こんな具合。

 「あなたは、本当によく眠れていますか?」
 これ、枕という言葉を使ってない。けど、枕を連想させる。直接的な表現はしない。

 「あなたは、いまの枕で満足していますか?」
 これではダメなのね。顧客の持っている枕にいちゃもんをつけてはいけない。だけど、枕に意識を注目させたい。
 そこで、「あなたは、本当に眠れていますか?」と振るわけです。

 第2部は、顧客の警戒心をとること。
 ほら、インチキ商売ってあるじゃないですか? 「十万人の中から今回、特別に、あなたが選ばれました」とかっていうやつ。

 これ、もう、顧客のほうが気づいてるわけ。

 だから、逆に最初に警戒心をとってしまうのです。逆に言うと、出所を明らかにしてしまう。

 「いまから四十年前に、小さな修理工場として創業・・・家具の美しさをもったクラブとして、ゴルファーの間で高い評価・・・」

 けど、どんな商品にも欠点はあります。
 この欠点に出会えたことは、メリットなのです。顧客が疑問視する前に、先に気づいて手を打っておく。
 たとえば、低反発ウレタン枕は熱を逃しにくい。これは科学的にデータをとると、そば殻の枕に比べると、全然、ダメ。
 そこに気づくと、商品を自信をもって売れやしない。
 しかし、よくよく考えると、それはそば殻の枕を比較しての話。他社のウレタン枕と比較したわけではない。
 実際に比較したら、こちらの商品のほうが断然よかった。となれば、この同じカテゴリーの中で勝負すべきなのです。
 200円高。
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2 「笑って仕事をしてますか?」
 デイル・ドーテン著 小学館 1365円

 著者はもちろん、あの「仕事は楽しいかね?」(きこ書房)で一躍、有名になった人です。

 この本と訳者との出会いが面白いね。
 だって、訳者は元々はこの「仕事は・・・」の読者の一人だったわけ。で、読んだら感動して、著者にメールしちゃったんですね。
 すると、本人から返事。とんとん拍子にアメリカ行きのアポまでとれちゃった。
 著者とウマが合ったのか、逆にインタビューされる始末。将来の夢なんかを語る中に、「講演会を日本でもできればいいのに」とひと言いったら反応があった。

 「お任せしますよ」
 ついでに、出版代理人もお任せってんで、このたび、本になったというわけです。だから、この本は翻訳者がいちばん笑って仕事をしてたかもしれませんなぁ。

 こういうことってあるんでしょうか?
 
 たくさんありますよ。たくさんあります。わたしの周囲でもたくさんあります。
 こういうケースは少なくありません。

 わたし自身、読者からの質問、感想、文句、怒り・・・すべてに実は対応しています(かなり丁寧に対応してると思うんだけどね)。
 「直接、ご返事を頂けるとは!」と驚かれますが、著者にとっていちばん嬉しいことは読者からのひと言なんですね。
 お褒めの言葉で舞い上がることもありますし、文句、いちゃもんに「そんなつもりでは・・・」とガックリくることもあります。けど、感想を頂けるのは本当に嬉しいものです。

 だから、このデイルさんの気持ちもよくわかります。まして、太平洋を挟んで、遠く日本からともなればね。

さて、内容ですが、やっぱり基本的には、「仕事は楽しいかね?」です。まっ、しょうがないよね。

 楽しく笑顔で仕事をしいる人がどれだけ成功を収めているか、それをアメリカの中小企業で見た、聞いたケースを紹介してるってわけです。

 成功に関する「古い」言葉。それは「辛抱強い」「やる気」「目標」「ポジティブな姿勢」で、「新しい」言葉は「にっこり笑ってもらう」「顧客の気持ち」「節約」「役に立つ」というものです。
 「重要なことは、仕事が好きかどうか。危険なことは、嫌いな仕事をたくさんすることです」
 「最良の管理とは、管理する必要のない部下を見つけること」
 「人を変えようとせず、その人の能力や個性といった道具の正しい使い方を見つけようとすることです」
 「もし、失敗したいのなら、何でも知っているという印象を与えるといい。成功したいなら、何にも知らない、のではなく、何でも学ぼう、としていることを知らせる努力をしよう」
 「最高の部下とは、積極的でイキイキしている。職場でいちばん輝いている。進んで人の役に立ち、学ぼうとしている」
 「優秀な人は、犠牲のない成功などありえないということを知っている。犠牲を払うことについて、けっして文句を言いません。それを誇りに思っているのです」
 「トップ社員たちが注意を払っているのは、時分自身の姿勢ではなく、顧客の気持ちだった」
 150円高。
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3 「キッパリ」
 上大岡トメ著 幻冬舎 1260円

 女性サイトに連載されてたものを本にしたようですね。4コママンガとシンプルなコメント。
 これが受けたんでしょう。

 「こんなの当たり前ジャン」と思ってたけど、「じゃ、やってるの?」と言われると、ちょっと自信ない。

 たとえば、項目をあげるとこんな調子です。

 脱いだ靴は揃える。
 冷蔵庫は片づける。
 忙しい時はやらなきゃいけないことをすべて紙に書き出す。
 だじゃれ、なぞなぞを考える。
 メモ帳を持ち歩く。
 テレビのスイッチを切る。
 人と比べない。
 急いでいる時こそ字を丁寧に書く。
 口ぐせを変えてみる。
 一人、店でごはんを食べる。
 疲れたと思ったら、とにかく眠る。
 花を生ける。
 おひさまとともに起きる。
 いつもより2センチ高いヒールの靴をはく。
 一日10回、ありがとうと言う。
 きれいな水を一日2リットル飲む。
 ファーストフードは卒業する。
 髪の分け目を変えてみる。
 レジの人にお願いしますと言う。
 自分の気持ちをコトバで伝える努力をする。
 約束の5分前に行く。
 などなど・・・。

 ちょっとあげてみてもこんな具合。
 正直、くっだらねぇというのも少なくありません。「で、どうなんだ?」と言われると、とっても困るんですけど。

 「テレビのスイッチを切る」なんて、わたし、できないな。仕事場のテレビ、全局が一斉に映るのね。
 で、いっつもつけてるわけ。
 すると、ニュースが入った時に、すぐチェックできるでしょ。仕事してても、打ち合わせしてても、テレビはつけてます。
 消すのは、寝る時だけ。省エネ、節約とは真反対の生活ぶり。

 軽く読めます。で、なるほど、なるほど、と思うらしいよ。まっ、ご家庭の主婦に共感、賛同を得て、ただいま、大ヒット中!(わたしも家内から読め、と言われて読みました)
 150円高。
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