2006年02月08日「セックスレスキュー」 大橋 希著 新潮社 1470円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 だんだん、自分が死んでいくみたい・・・家庭内セックスレスで追いつめられる妻。
 これって、セックスレス・バイオレンスかも。DVじゃなくてSV。

 キム・ミョンガンさんが主宰する相談所「せい」。ここ、既成のカウンセリングとちょっと違うことしてます。
 それは、「セックス奉仕隊」ってのがあるわけよ。

 へぇ、セックスで奉仕すんの!
 普通は話聞いたり、薬を処方したりすんじゃない。で、「ご主人との生活を見つめ直してください」なんて送り出す。
 けど、見つめたって直らないものは直りません。そんなに簡単に直るんだったら、そもそも悩まないって。

 「夫婦生活がありません」
 「コミュニケーションもありません」
 自分がだんだん死んでいく・・・妻は悩んでるのよね。とくに真面目な女性ほど悩みます(というか、真面目だから悩むんだ)。
 生真面目っていうのかな。「こうあるべき」と理想のイメージを掲げてしまう。
 よく考えると、これって自分で自分を縛ってしまうことなのにね。

 結婚したら幸福にならなければいけない。
 これも縛りだよね。

 たとえば、適齢期の女性(男性)を前にすっと、「結婚は?」「結婚しないの?」ってよく言うよね。これって大きなお世話。だって、結婚しても幸せになれるなんてわかんないじゃん。結婚した途端、しょぼくなってる友だち見たら、「あんな風になっちゃうの、嫌だな」とブレーキがかかっちゃうもん。

 「結婚すると、あんなにセレブになれるんだ! ブランド品、いっぱい買えるんだ!」
 そんな成功モデルが近くにごろごろいれば、女子アナみたいに目の色変えて男を探すわけさ。青田刈りもすれば、穴馬にも賭けるわけ。

 でも、「結婚=幸福」ではありません。もしかすると、「離婚=幸福」というケースのほうが少なくないかも。

 わたしなど、23年連れ添った妻からなんと言われているか?
 「あなたは絶対に結婚してはいけない男。世界中の女性に夢を与えるドンファンだもの。私1人が独占したら神様から叱られちゃう。だから、セックスと仕事は家庭に持ち込まないでね」
 ・・・そうか、そうだったのか!

 まっ、独り言はいいとして、当初、セックスレスで相談に来た女性に、バイブレーターのカタログを見せたら、「私は膣にものを突っ込みたいんじゃないのよ」とキムさんは叱られたらしい。
 「せい」を訪れる女性たちは人間でしか埋められないことがある、と気づいた。ぬくもり、抱擁、愛撫、言葉、表情、視線、快感・・・これ、すべてセックスなわけさ。

 セックス奉仕隊のおかげで、救われた女性はたくさんいます。
 ある女性は夫からまったくかまってもらえない。自分から誘っても嫌がられてしまう。
 悩んだ末に「せい」の門を叩いた。
 「えっ! このわたしが夫以外の男性と! それは無理です」という顔をする。
 「話をするだけでもいいじゃないですか?」
 実際に会うと、ホテルまでついてくる。

 「彼女たちは身体がどれくらいセックスを求めてるかわかってない。求めてるのは心のつながりであってセックスではない、とみなが思ってる。でも、身体のつながりだけでもかなり楽になるんですよ。反対に、心のつながりは高度なものだから、そこまでいくのは大変です」
 ・・・そうか、そうだったのか!

 セックス奉仕隊の男性は完全なボランティア。自営業だったり、ビジネスマンだったり、いろいろ。
 で、肌を交えると、女性は男に恋してしまうことも少なくありません。
 「あなたのこと、愛してます」

 けど、この段階で奉仕隊はきちんと女性に言い含めます。
 「生徒が先生に恋愛感情を持ってしまうのはよくあること。だけど、そうじゃないだろ。君には受験があるだろ。頑張って一緒に卒業しよう、と伝えるんです」
 ・・・そうか、そうだったのか!

 普通の夫たちとセックス奉仕隊とはどこが違うのか?
 「その最中に会話があることだと思う。男がいま、どんな感覚なのか、感情なのかを口に出さないと女性は不安になりやすいんです」
 「誉めようとするより、思ったことを言葉にするほうが大事。お尻を触っている時、すべすべしてる、いい曲線してるとみんな絶対思ってるはず。それを言葉にするだけで、女性にとっては劇的にセックスが良くなるんです」
 ・・・そうか、そうだったのか! 230円高。



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