2006年04月16日「ラジオ記者、走る」 清水克彦著 新潮社 680円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

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 本日付の毎日新聞、要チェックです!看板記事「ひと」欄に神山征二郎監督が登場。この10月にクランクインする映画『北辰斜にさすところ』について熱く語ってます。読んでね。

 ラジオ、好きですねぇ。けど、仕事中は聞かない。深夜はおもにDVD。午前中はテレビをつけっぱなし。
 聞かない理由は、聴いてしまうから。すっと、仕事になんないでしょ。こりゃ、困る。
 テレビやDVDってのは見てるようで見てない。たまたま再放送で見たりすると、「えっ、2人の関係はそうだったのか!」なんて、ようやく気づいたりすることがよくあります。
 こんなことは会話中でもよくあんのね。聞いてるようで聞いてない。見てるようで見てない(だから、よく怒られる!)。

 著者は文化放送の記者。記者といっても、ラジオだから1人何役もするらしいよ。
 選挙戦の取材だって、1人で自民党、民主党、社会党・・・とこなす。ンなことできるわけないじゃん。けど、やるわけ。たとえば、知り合いの雑誌記者とタッグを組んで代行してもらったりすんのよ。

 記者クラブって便利な組織があんのね。大本営発表を待ってる組織のこと。
 これあると、抜け駆けされなくて済むわけ。取材される側からすると、しつこく取材されたくないから、まぁ、飴をやってるとも言えるわな。
 ラジオ記者はこういう組織には入れない。新聞、テレビが主だからね。とくにどういうわけだか、NHKが大きな顔してるわけさ。あそこ、「日本報道協会(NHK)」だから。

 2003年7月、文化放送の同僚の女性記者が自民党本部を取材。
 各社とも狙いは野中広務さん。小泉改革攻撃の急先鋒だからね。ひと言、欲しいわけだ。
 会議が終わって、野中さんがつかつかと出てきた。すぐにどっかの記者がインタビューすればいいのに・・・この人、実力者だから、オーラが漲ってて威圧感たっぷり。「見えないバリア」に塞がれて、どの記者も聞けないわけ。

 エレベーターまであと1メートル。この女性記者がすすっと出てきて、ひと言。
 「野中さん、小泉総理の昨夜の発言をどう思われますか?」
 野中さんの足が止まる。テレビカメラもついてきた。
 「あの人は独裁者ですよ。まったく理解でき・・・」
 女性記者を一瞥してエレベーターに消えた。

 この後、噛みついたのは幹事社NHKの記者。
 「おたく、ラジオ? 幹事である我々が先にインタビューするんだよ。ルール違反だよ」
 「じゃあ、私が野中さんに声をかけたのはいけないことなんですか? だれもかけないからかけたんですよ。それがいけないというなら、さっきの音声、NHKさんは使わないでください」
 結局、この日のテレビは、各社ともこのひと言を使ってた。

 ラジオはゲリラ戦なのね。テレビ、新聞みたいに番記者なんてないからさ。自分なりに人脈を築いてないと取材はできません。
 「こいつなら答えてやろう」という議員をたくさん作らないとダメなのよ。
 そういう意味では、キャラとパーソナリティがいちばん問われる仕事かもしれないな。

 私? たぶん、肌に合うと思う。記者クラブなんて飛び出しちゃうね。麻雀だけやってればいいなんて、とてもとても・・・。退屈で死んじゃうね。
 山師だから切った張ったが好き。

 ラジオって、出演者にも人気があんのね。
 たとえば、田中康夫さん。ダウンタウンの松本人志さん、三谷幸喜さん、武田鉄矢さん、倉本聰さんなどなど、みな、AM・FMのパーソナリティやってるでしょ。
 みのもんたさんもラジオ大好き人間。
 「ラジオはね、生でのトークが勝負だろ?咄嗟の反射神経が必要だし、怖さもあるけど、喋り手の人間性や考え方がテレビ以上に聴いている人たちに伝わるんだよ」
 だから面白い、というわけです。

 たしかにテレビは収録数時間、放送される時は数秒ということも少なくありません。しかも、作られた役所があったりして、求められるキャラを演じなければならない。また、それができる人が重宝がられるわけ。
 「テレビは言葉尻を取られる。ラジオは自分の考えをきちんと話すことができる」とは政治家の平沢勝栄さん。
 そういえば、あの田中真紀子さん。文化放送の番組に毎週水曜日にずっと出演してんのよね。
 これも著者が依頼に行ったんだってさ。これもラジオのメッセージ性を評価してるからできることかもね。

 ラジオを聴いてる割合は、全世帯の8%台から7%台前半に下落傾向。この1%という数字は、関東全域で30〜40万人というスケールなのね。
 で、この7%という数字をNHK、民放AM・FM局数社で奪い合ってるという構図なわけです。
 考えてみれば、こりゃ大変なメディアでっせ。200円高。