2006年06月09日「花よりもなほ」

カテゴリー中島孝志の不良映画日記」

 この監督(是枝裕和さん)、「誰も知らない」(設楽優弥くん主演・カンヌ国際映画祭最優秀男優賞)を撮ってるのね。ぜんぜん気づきませんでした。

 「男は強くなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない」って、聞いたことあるよね。
 あの侍バージョンかな。
 「侍は強くなければ生きていけない。優しくなければ生きていけない」ってね。

 時は犬公方の綱吉の元禄時代。赤穂浪士の討ち入り(元禄14年)前後ってことになるね。
 幕府を開いてからもう100年。世は天下太平。すっかり戦(いくさ)を忘れた武士ばかり。そんな時に仇討ちしようっていう人間がまだいたんだな。仇討ちは近々、禁止になりますけどね。

 主人公は読み書きソロバンは得意だけど、ケンカはめっちゃ弱い。けどさ、親父の遺言が「仇をとれ」ってんで、松本から江戸に出てきたってわけさ。



 ド貧乏長屋(なぜか、赤穂浪士の一員が同じ長屋で暮らしてる!)で暮らす中、自分には仇討ちが向いてないって悟っちゃう。仇が親子仲良く暮らしてる姿見てるしね。
 叔父さんも「仇討ちなんてしない人生もあるぜ」って言うしさ。で、四方八方治まるインチキ芝居を打つことを思いつきます。

 主演は岡田准一さん。私、この役者好きです。
 「冬の運動会」「タイガー&ドラゴン」「東京タワー」「フライ、ダディ、フライ」にも出てたね。そういえば、この映画、時代設定はぜんぜん違うけど、「フライ・・・」とは陰陽の関係?
 それにしても、いま、ジャニーズ抜きで映画は撮れないね。「日本沈没」では草なぎ剛くん、「武士の一分(いちぶん)」だっけ? あれ、たしかキムタクでしょ?
 SMAPはもちろん、TOKIO、V6は日本映画の常連じゃん。お呼びがかかんないのは城島と中居くんだけじゃない?

 さて、この映画は脇がいいです。映画は、いつも脇がポイント。主役は基本的にダイコンでもいいわけさ。主役は存在感とオーラが決め手なの。
 浅野忠信、古田新太、さらに香川照之、國村隼、寺島進、平泉成、絵沢萠子、石橋蓮司、原田芳雄、中村嘉葎雄、上島竜兵の各面々。こりゃ、勝手に映画が動き出すよ。

 それにしても、家名とか因習とか、建前とかに押しつぶされないで生きるって、なかなか難しいと思う。当時だって、仇討ちのために一生を潰してしまった武士がたくさんいたんだよ。

 「・・・すべきである」「・・・でなければならない」って人間のことを「should−must症候群」て呼んでるんだけど、義務、使命感が重荷になっちゃうとやっぱ窮屈だな。おもしろおかしくやったほうが、かえって、みなの力を得られるんじゃないかなぁ。