2006年07月02日「蝉しぐれ」

カテゴリー中島孝志の不良映画日記」

 忍ぶれど 色に出にけり わが恋は. 物や思ふと 人の問ふまで(平兼盛)
 そんな歌がありましたな。
 想いを声にできない。心に秘めておく。そんな恋もあるのでしょう。
 この映画は「大人の純愛」を描いた作品です。藤沢周平作品は優しいですね。「隠し剣鬼の爪」「たそがれ清兵衛」(いずれも山田洋次作品)もそうですし。で、目線が市井の人々にありますよね。

 「いろいろありましたね」
 「いろいろありました」
 この秋、仏門に入る。その前に、初恋の人に一目会いたいと手紙を出す。
 「文四郎さん、お子は?」
 「二人です」
 「どちら?」
 「上が男、下が娘です」
 「二人ともそれぞれ人の親になったのですね?」
 「はい」
 「文四郎さんのお子がわたしの子で、わたしの子どもが文四郎さんのお子であるような道はなかったのでしょうか?」
 「それができなかったこと。それがし、生涯の悔いと致しております」

 市川染五郎さん演じる文四郎、木村佳乃さん演じるふくの会話です。
 凛とした佇まい、佇まいの美しさ、美しい透明感が感じられます。どちらからもね。
 「ラストシーンの撮影中、佳乃さんのあまりの美しさに僕は呆然と見とれ、「カット!」の声がかけられませんでした」と監督・脚本の黒土三男さんは述べてます。

 たしかに、たしかに。同感同感。私、木村佳乃さんの出演作品、そこそこもってるのね。「彼女が死んじゃった。」「ニコニコ日記」「恋に落ちたら」とかさ。
 でも、この作品を見て、「この人、、とびっきりの美形だったんだ」とはじめて気づきました。久しぶりに幼なじみに会ったら、想像以上に「いい女」になってたみたいな。


凛とした美しさにほれぼれするね。

 牧文四郎は東北の小さな藩の下級武士です。
 民から信頼されている父を尊敬し、剣の道に励みます。隣家のふくとは幼馴染みで、お互いに淡い恋心を抱いている。

 ある日、父が世継ぎ問題に巻き込まれ逆賊の汚名を着せられ切腹。以来、生活は苦しくなるばかり。父の死骸を運ぶにも峠が越せない。それを手伝ったのはふく。
 そのふくが江戸へ行くことに。当日、文四郎の母に、「大きくなったら、お嫁さんにしてください」と頼みます。

 成長すると、ふくは殿の側室となります。この間、文四郎は名誉を回復し、また藩に出仕することに。ところが、家老から命令されたのは、ふくが産んだ世継ぎを亡き者にすること。
 さて、どうなることやら?