2006年09月29日「フラガール」

カテゴリー中島孝志の不良映画日記」

「母ちゃんもおまえもあの先生も、女ってヤツはつよいなぁ」
 いざとなったら女はやるもんだ。過去を振り返らず、明日に向かって歩き出す。1度決めたら迷わない。とことんいけるところまで突っ走る。

 これ、かなりいいです。いや、最高! 脚本がとっても推敲されてます。現場は大変だったろうけど、俳優がのって仕事ができた映画だということがびんびん伝わってきます。

 第一印象は2つ。
 1つは昔、テレビで常磐ハワイアンセンターの創業談を聞いたことあんだけど、そうか、あれをエンタテイメントにするとこうなんのか・・・ということ。
 もう1つは、最初の20分間というもの、「キャスティング大失敗したな」・・・1時間過ぎたら、あれ、そこそこいいじゃん。1時間半過ぎたらほかの俳優では考えられないようになってました。

 エンタテイメントとしても、ドラマ性、社会性、時代性・・・いろんな意味でそうとうレベルの高い映画に仕上がってます。
 損はさせません。ぜひ、明日、いや、今日これからご覧ください。



 舞台はいまからまる40年前。
 本州最大の常磐炭鉱ではリストラの嵐。かつて黒いダイヤと呼ばれた石炭も、コストが跳ね上がって採算割れだもの。といって、ほかにはなんの産業もない。

 石炭を掘る時、温泉が汲みあがる。それを活かそうとハワイアンセンター(現スパリゾートハワイアンズ)を作ることに・・・。
 しっかし、すごいよな。雪降る東北の田舎、しかも炭坑しかない町だよ。そこに「常夏の楽園ハワイ」を作ろうって発想がさ。しかもフロント、音楽、そして踊り子まで、すべて炭坑労働者でやっちゃうってのがね。

 けどさ、どんな仕事でも作らなくちゃ食っていけないもの。炭坑はもうダメだしさ。かといって、じいさんの時代から山しか知らない。
 みな、必死だったんだよね。父親が首になったら娘がダンサーになるしかないもの。会社を救うため、一家を救うためには仕方ない。

 で、東京からプロのフラダンサーを呼んで教えてもらうことになる。この先生というのがひでぇ酔っぱらいで、気が強くて、借金取りに追われてるって役。松雪泰子さんがこんなうまい女優だとは知りませんでした。

「妹をたぶらかさないでくれ」
「夢も見られない炭坑夫よりましよ」
「父ちゃん、じいちゃんも山に入った。おれも山に入るんだ、と当たり前のように思ってた」

 盆踊りしか知らない炭坑娘たちが命がけで取り組んだ。「いま、夢を探してるとこなんです」なんて、悠長なこと言ってられない。父親はリストラされてるし、ほかに仕事はないしってんで、家族の生活すべてが18〜9歳の女の子にかかってんだからさぁ。

 けど、そんな中でも「ここから抜け出せるかも。いままで生きてきた中でいちばん楽しかった!」という声があるのも事実。新しくて、華々しくて、楽しそうなことって、いつの時代も女性は好きなのよ。
 どっこい、しぶとく生きている。前を向いたら、女ほど強い生物はないよ。腹のくくり方がダンチだもの。
 
 蒼井優さんのフラは見事。彼女、アニーの時から注目してたけど、役の幅、芸の幅か広いよね(「高校教師」では男性教師をたぶらかす女子高生役とか「タイガー&ドラゴン」では夢見る乙女役とかさ)。南海キャンディーズのしずちゃん。いい役してる。シリアスなシーンで光ってました。
 もち、主役は松雪泰子さん。彼女の代表作になる映画だな、こりゃ。

 この映画、口コミでどんどん広がると思う。もう1度観たい。ロングランになるんじゃないかな・・・。