2006年10月04日「遺品整理屋は見た!」 吉田太一著 扶桑社 1260円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 こんな仕事、あるんですね。びっくりしました。
 けど、なかなかできませんよ。並みの人なら1週間、いや、1日で逃げ出すでしょうね。

 著者は日本最初の遺品整理のプロ。
 遺品整理というのはその通り、1人暮らしの人が亡くなった時に、遺族に代わって日用品や部屋にかたずけを引き受けること。
 残した品物を整理するってのは、処分すること。

 ところが、それが簡単に処分できるものばかりじゃないわけ。だって、1人暮らしの故人て尋常な死に方してないもの。

 ゴミの山で足の踏み場もなければ、自殺で壁一面に血糊がべったりとかね。風呂場で死んだ人なんか、何日も過ぎてたらしく肌の表面がふやけてプカプカ。まるでワンタンだって。

 警察というのは、死体を動かすだけで後の処理はしてくれないんですね。
 かといって、大家さんが自分でしたくもない。となると、業者にたのむしかない。だけどさ、だれもやりたくないよね。だから、著者が日本初というわけ。

 死後のことなんて、あまり、人は考えない。だから、アダルトビデオ3000本、自分の性器を壁一面に貼り付けてる人もいるわけ。
 そんなのが死後、すべて曝け出されてしまう。

 ある母子が故人の住んでたアパートにやってきた。
「奥さん、見ないほうが・・・」
「あの人の性癖はわかってますから」
 20歳くらいの娘も部屋に入る。
「お父さん、変わんないわね」
 部屋には3000本どころか、4000本ものエロビデオ。エロ雑誌の山。この性癖が原因で離婚したらしい。

 めったにいないけど、中には「予約客」もいる。
「身内がいないんで、私が死んだらすべて整理してください」
「まだお若いじゃないですか?」
 いくら言っても予約したい、の一点張り。それじゃ引き受けましょうと言うと、ホッとした顔をする。

 孤独死というのは60代、70代に多いわけではありません。もっと若い世代に多いの。なぜなら、50代くらいだと、まだまだ若いってまわりも注意しないから。その隙に亡くなったりするんです。
 油断大敵だよ。200円高。