2006年11月10日「戦争学」概論 黒野 耐著 講談社 760円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 困ったねぇ、共和党。
ぼろ負けじゃん。イスラム教徒の候補者にも負けちゃってさ。どうすんだろ? 「敗因はイラク問題だ。全米市民はノーを突きつけている!」と言いたいんだろうけど、敗因は共和党議員の度重なる汚職事件だよ。ブッシュ政権でも汚職に連座した人間がいたでしょ? 景気がいいからね。汚職も起きやすいんだね。

 共和党が負けて喜んでるのは、金正日?
 そんなに単純にはいかないでしょ? そういうの、ぬか喜びっていうんだよ。「見えるブッシュ」より「見えないブッシュ(ポスト・ブッシュ)」のほうが攻めづらいもんね。
 連邦議会と大統領選はやっぱ違うからね、共和党候補者が大統領になるかもしれないし、ヒラリーがなるかもしれない。もし民主党候補がなったとしても、クリントンみたいに北朝鮮にコロッとだまされる「おバカさん」が現れるかどうか・・・。
 クリントンは日本無視、中国べったりの政策を推進しましたけど、ポスト・ブッシュが同じだとは限りませんものね。

 北朝鮮にとってみれば、「有利な兆候」が現れたと思ったら、その都度、大統領が替わってご破算にされちゃってさ。今後もイライラは続きますわな。

 「6カ国協議に日本は参加しないでいい。どうせアメリカの一部なんだから、終わってから報告を聞けばいい」
 自分のシナリオを邪魔するヤツ。それが日本。北朝鮮にとっては「核」だけを議論したいわけよ。核の引き取り価格ほなるべく高くしたいからさ。そんなところに「拉致はどうした?」なんて話をもってこられたら核が高く売れなくなっちゃうでしょ。だから、日本には出てきて欲しくないわけ。

 ということはさ、核については金(援助、国交回復等々)で解決しようと考えてる、ってことでしょ? この発言は北朝鮮にとって失言ですよ。手の内がわかっちゃった。

 アメリカにとっても中国にとっても、これで御の字。しかし、日本は違う。「拉致問題」の解決なくして一歩も動かない。そういう構造になっちゃってる。

 核の議論だけで米中が引いたら、自民党は参院選で負けるかもしれません。アメリカも困るだろうね。「アメリカはあてにならない。日米安保も有名無実。こうなったら核武装すべし」とギアがいきなりトップに入っちゃうかもしれない。日本人て、そういう国民だもの。
 アメリカも日本人の潜在的なナショナリズムを甘く見ると大変なことになるよ。アメリカ相手に平気で戦争する国なんだから。北朝鮮よりもアメリカの動きを、いま、日本人はじっと見てるのよ。

さて、通勤快読です。
 日本の政治家ってずれてんじゃん。たとえば、自衛隊のイラク派遣問題でも国会では無毛の議論ばかり。派遣先のサマワが戦闘地域か非戦闘地域かという論争がそれ。戦闘地域と非戦闘地域が明確に区分できたのは日露戦争か、せいぜい第一次世界大戦までの話だよね。
 航空機、爆撃機、ミサイルなど、空中戦が常識の現代、両軍がにらみ合う「前線」など存在しないのよ。

 しかも、自衛隊は「復興支援」に行くのであって米軍戦闘部隊の「後方支援」に行ったんじゃないの。テロやゲリラの襲撃を受ければ、当然、自衛戦闘をおこなって自らを守る。これは憲法の禁止する侵略戦争とは月とすっぽんです。
 
 ところで、ミサイル防衛システムってのは、敵国が日本にミサイル攻撃をしてこないかぎり発射しようがないシステムなのね。弾道ミサイルを日本に向けて発射した時点で、その国は日本に戦争をしかけたわけで、ミサイルを撃ち落としたところで日本は固有の自衛権を発動したまでのこと。
 けど、これでは後手に回るよね。どこかの地域住民が犠牲になってから後の対応なんだもの。専守防衛ってのはそういうことか? 違うでしょ? ミサイルがこちらに向いてる段階で攻撃することを専守防衛というんでしょ?

 元々、朝鮮半島をこんなにしたのはだれよ? 戦前の日本か? 「イムジン河」の通りか?
 朝鮮戦争がなぜ起こったのか? 1950年1月、アメリカのアチソン国務長官(トルーマン大統領)の発言からじゃないの?
 「西太平洋における米国の防衛戦はアリューシャン列島から日本、沖縄を経て、フィリピンにいたる線である」
 この演説を北朝鮮(金日成)とソ連がどう理解したか?
 「アメリカは朝鮮を放棄した」

 50年6月25日、北朝鮮は38度線を突破して朝鮮半島の武力統一に乗り出しちゃうわけ。トルーマンは慌てて手を打ちます。中国は共産化してるし、さらに朝鮮半島が共産化したらどうなるの? 共産化ドミノだよ。となれば、NATO加盟国から不信感を抱かれるのは必至。
 で、米海軍を38度線以南に、第七艦隊を台湾海峡に急派。30日後には陸軍を投入。
 これが朝鮮戦争のはじまりでしょ?

 開戦直後、トルーマンは戦争目的を「38度線回復」に限定してたんだけど、その後、目的変更を次々に重ねてダッチロール状態。
 北朝鮮軍は怒濤の勢いで国連軍(米韓主体)を釜山周辺まで追い詰めるんだけど、米軍が仁川(北朝鮮後方)に逆上陸して敗走させて、いよいよ38度線に迫るんだ。
 この時、トルーマンは戦争目的を北朝鮮政権打倒と朝鮮統一に拡大したわけだ。
「38度線以北の作戦を許可する」
 この変更を仕掛けたのは、マッカーサー国連軍司令官。

 ところが、予期せぬ出来事が起こるわけ。中国の第四野戦軍が義勇軍の名の下に参戦してきたんだ。で、国連軍はソウル南方まで押し返されちゃう。一進一退だね。
 この時点で、トルーマンは朝鮮撤退を考えるのね。
 でも、また、リッジウェイ第八軍司令官の活躍で中国軍をまたまた38度線まで押し返すと、トルーマンはまたまた戦争目的を38度線回復へと戻す。

「あんた、いったいどうしたいわけ?」
 現場は混乱すんだろね。ころころ変わるんだからさ。
 もし彼が本来の目的である38度線回復を堅持してたら戦争は1年で終わってたね。国連軍100万、中朝軍90万。この時、中国は核兵器を持ってなかったし、北朝鮮の黒幕ソ連は表面には出てない。
 正解は、中国が介入した段階で断固とした決意を具体的に表明すべきだったんだよ。ところが、トルーマンは鴨緑江周辺や羅津の爆撃までも禁止しちゃう。穏便に穏便に。中国とことをかまえたくない。国連軍は手心を加えながら戦うしかなかったわけ。おかげでいたずらに将兵を犠牲にしてしまったわけ。

 トルーマンという大統領は、たまたま、大統領の椅子が転がりこんだ人間なのね。ルーズベルト(フランクリン)が任期半ばで死んじゃったでしょ。で、たまたま、副大統領が昇格して大統領になっちゃったの。
 マッカーサーのようなカリスマ性や威信はかけらもないし、リーダーシップにいたってはさらにない。方針、戦略はゼロ。だから、その都度、ころころ方針を変えちゃうんだよ。
 歴史にイフは禁物だけど、もしこんな日和見じゃなく鉄の意志を持ったリーダーだったら、おそらく核兵器を使ったかもしれない。

 いま、北朝鮮問題で振り回されている原因は、代々続いているアメリカのバカ政治家が真因なんだよね。300円高。