2006年11月21日「千年、働いてきました」 野村進著 角川書店 740円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 今日は原理原則研究会があります。メンバーの方は忘れずに!

 さて、「老舗」とひと言で言うけど、日本にはものすごい老舗があんだねぇ。びっくりしたなぁ、もう(古いか!)。
 こりゃ、千年王国じゃないの!

 お隣中国は共産圏だから千年も続く会社なんてそもそもないんだけど、それなりにがんばってるわけ。漢方薬、お茶、陶磁器、料理店、ホテルとかでも百年レベルならいくつもあんだよ。たとえば、北京同仁堂がそれ。六味地黄丸を扱ってる店ね。これ、337年の歴史。

 ところが、韓国となるとないのね。「三代続く店はない」なんて俗に言われてるらしい。なんでだろう?

 ヨーロッパとなると、どうか?
 ヨーロッパには「エノキアン協会」という家業経営200年以上の会社だけが加入できる組織があんだけど、イタリアの金細工メーカーがせいぜい640年の歴史。
 まっ、これでもすごいんだけど・・・。

 日本の場合は、それがダンチなのよ。これより古い会社が百社以上もあんだ。
 たとえば、京都の福田金属箔粉工業。
 名前、聞いたことないと思うけど、世界中のケータイに使われてる銅箔の約4割、ケータイの折り曲げ部分ではもう1社と合わせて9割のシェアだって。

 この会社、300年以上の歴史があんだけど、社長曰く、「身の程をわきまえる」という哲学らしい。京都人らしいなぁ、ほんまに。もちろん、バブルの時なんか「土地買え、土地買え」と勧められたらしい。
 けど、コア・ミッションから外れなかった。
 こういう哲学というのはなかなかリレー、伝承されないものなんです。
 「そうは言っても・・・」「時代に乗り遅れたらいけない」なんてね。いくらでも方便、大義名分は作れます。だから、「やらない」というエネルギーは大変なのよ。
 それを可能にさせたのは「家訓」だな、きっと。いま、この会社、ケータイ用の電磁波シールドを開発してます。

 ところで、ケータイって「ゴミの山」じゃなくて貴重な資源なのね。捨てればゴミ、活かせば資源・・・なんだよ。
 この山はトンあたり280グラムもの金がとれる「宝の山」。
 秋田の小坂製錬。いまのDOWAホールディングスね。ここも122年の歴史なんだけど、宝の山を抱えてます。

 90年代にこの精錬所はダメになるんだけど、今度はエコビジネスとか環境問題がクローズアップされちゃって、一躍、注目されるようになっちゃった。
 ヒ素、鉛、ガドミウム、廃油、ベンゼンというのはとんでもない汚染土壌ですよ。で、汚染された工場跡地に住宅なんか建てちゃって、社会問題になった一流会社がたくさんありますよ。
 けど、この会社ではこれらの汚染土壌を完全に化学分解して、使える資源、つまり、金、銀、銅などの金属を取り出しちゃう。で、健康に害のない土壌に変えちゃうわけ。
「世界の酸化銀の7〜8割はわが社が供給してます」だって。これ、すべてリサイクルで実現したんだからすごいもんだよね。
 
 こういうとんでもなく凄い老舗をいろいろ紹介した本です。いやぁ、勉強になりました。250円高。