2019年05月24日宝塚星組公演『鎌足 夢のまほろば、大和し美し』

カテゴリー中島孝志の落語・演劇・タカラヅカ万歳!」

 次期トップスター礼真琴さん率いる『アルジェの男』に、現トップスター紅ゆずるさん率いる『鎌足 夢のまほろば、大和し美し』の全国同時ツアー。星組は人材が豊富ですな。

 『アルジェ』についてはすでに書きましたので、今回は『鎌足』について少し。


「倭は国の眞秀ろば 畳なづく青垣 山隠れる倭し うるはし」(『古事記』)にありますけど、ヤマトタケルの歌でしょうが。

 鎌足は中臣ですからね、神祇官の家系なんですよ。昨日の名古屋原原、そして今日の大阪原原でのお話の通り、古代、天皇(正確には天武天皇までは大王ですけど)から「○○家」という「氏」を頂戴します。

 「名」ではありませんよ。「氏」です。氏姓制度がありますから、冠位十二階で「正一位」とか「従一位」とか「姓」の等級で右大臣、左大臣、内臣等が決まります。

 鎌足は下っ端ですから出世したかったわけでね。戦略的に考えていました。

 飛鳥時代。唐から帰朝した僧旻が開いた学塾で大陸の文化学問を貴族の子弟たちが学んでいましたが、その中に、大臣(おおおみ)蘇我蝦夷の嫡子入鹿。「乙巳の変」で入鹿を殺すことになる中臣鎌足がいたんです。

 まあ、「志」を抱いていたのは入鹿ですよ。天智天皇は庚午年籍だけで評価されるべきで、基本、抵抗勢力。大化の改新は入鹿のグランドデザインでしたよ。鎌足が踏襲したわけです。そして、それは息子不比等に受け継がれます。

 古代の政治は近親間の裏切りと殺し合いの歴史ですけど、1人の女性をめぐる鎌足と中大兄。入鹿と皇極斉明天皇の愛憎を織り交ぜて「歴史」は紡がれていきます。

 歴史とはなにか? 勝者による勝者のための「弁明書」ですよ。
 嘘八百とは言いませんけど、真実なんて残っちゃいない。『日本書紀』は公式歴史書ですけど、すべて真実であるわけがありません。まとめたのは不比等と持統天皇なんですから。

 自分たちに都合がいいようにさりげなく編集されています。だから、周辺の書(書とは元もと歴史書の意味ですから)を対比されながら「真実」をあぶり出さないといけないわけです。

 入鹿を討ち、愛する妻を奪われながら、天智天皇の元で立身出世を遂げ、しまいには天皇家から権力を奪ってしまったのが藤原家です。

 ま、今週の原原では「ま・く・ら」でたっぷり。歴史は面白いですな。