• 2021年9月6日(月)

    「急がなくてもよいことを」 ひうち棚 著 1,100円 

    子どもたちだけで映画を観に行った思い出。
    ひとり給食を食べるのが遅い、あの子のこと。
    久しぶりに帰った実家での母との会話。
    僕のことを忘れてしまった、おばあちゃんとのおしゃべり。

    動物園デートの思い出。
    結婚1年目に夫婦で見た景色。

    子どもと歩いた散歩道での出来事。
    子どもが寝静まった後の帰宅。
    ビニールプールで遊んだ夏のこと。
    家族で見た海の情景。

    ひうち棚さんが2009年から2021年まで、毎日少しずつ丁寧に描いてきた随筆マンガ作品を一冊に。

    恥ずかしくもある「昔」の記憶、いろいろある「今」の情景、そしてまだ見ぬ「未来」への願いの詰まった作品集は、たっぷり250ページの分厚い単行本になりました。

    それでも、人の人生を、毎日を描ききるには充分な枚数ではないのかもしれません。

    ですがきっと、忘れていた大事な時間や大切な人たちのことを、思い出すことはできます。
    美しい線で光が描かれ、コマとコマの間に流れ始める時間は、私たちの人生の記憶と穏やかに重なります。

    家のどこかにある、忘れていたアルバムの写真を眺めるように、ゆっくり少しずつ、楽しんで読んでいただきたい一冊ができました。

    版元編集者一押しのさりげないけど力強い宣伝コピー。そうそう、この本にはさりげなさがいちばん似合います。

    収録作品は「映画の思い出」「おてがみ」「ひとごと」「ユートピア」「城山」「デジカメ」「父の母」「デート」「フォトグラフ」「遠回り」「一年目」「きんかん」「急がなくてもよいことを」「空白期間」「まだ今日」「夏休み」「柿の木」「海」・・・とあります。