2003年07月21日「色街を呑む」「ダイエット・ウォークのすすめ」「マーク・トウェイン短編全集」

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」


1 「色街を呑む」
 勝谷誠彦著 祥伝社 1500円

 色街・・・なんと響きのいい言葉ではありませんか。
 裏町、小さな酒場、オンナ、男、情緒、酒、肴、ふとん、油の据えたにおいの枕、五十過ぎのおばさん、一人、ぶらり・・・といった感じですかな。

 「日本列島やりつくし紀行」とサブタイトルにありますが、これはちょっとオーバー。だって、この人、やらないんだもの。本当にタイトル通りに、色街で呑んでるだけ。
 これって、つまんなくない?
 やっぱ、平出広美さんみたいに突貫! いくぞぅみたいに、体験ルポもないとちょっとねぇ。
 でも、わたしは情緒を大切にしますから、これ、好きです。けど、やっぱ・・・。難しいとこですな。

 呑んだ場所がまたいいの。
 まず、わたしが行ったことのあるところから案内すると、横浜黄金町、川崎堀之内、大阪飛田新地、町田のたんぼ(よく知ってたなぁ)、京都五条楽園、フィリピンマニラ、西川口(昔、よく呑んだなぁ)・・・。あと、和歌山天王新地、青森第三新興街とか、たくさんあるよ。

 これって、究極のB級グルメだよね。
 あぁぁ、この企画、わたしがやりたかったなぁ。実話、アサ芸、大衆あたりでやんないかな。
 親切に地図らしきものも書いてあるから便利です。

 正直なところ、これならわたしのほうが詳しいな、この世界は・・・。

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2 「ダイエット・ウォークのすすめ」
 坂戸康之著 すばる舎 1400円

 「牛乳飲んでる人よりも、牛乳配達してる人のほうが健康なのはどういうことだ?」
 こんな落語みたいな話があるが、たしかにそうです。

 著者は東京から広島まで徒歩野宿旅行をした人です。その後、北海道から鹿児島の竜飛岬まで、徒歩で日本列島を縦断するなど、まぁ、「ウォーキングの達人」といってもいいでしょうな。
 この人、不規則な生活が元で体脂肪二十五パーセントを超えたこともあった、と言ってますが、この数値は女性では普通でしょうが、男ではかなりです。わたしもこの数値をちょくちょく超えてます。

 実はわたしの趣味もウォーキングなんですね。
 以前、よくやっていたジョギングは心臓に悪いし、スカッシュ、テニスのようなハードが運動もちょっと遠慮してます。けど、スポーツはやはりしたほうがベター。
 というのも、ある程度のスポーツには、仕事の疲れを取り去り、ストレス解消までできることが医学的に判明してるからなんです。
 ぜい肉をとことん落としてやろうと、ボクシングジムに通おうともしたけど、家族から「はじめる前にもっと保険をかけといて」と言われて白けてやめた。

 そこでウォーキング。
 わたしのウォーキング歴は二十年近くあるんです。ジョギングは心臓にも膝にも負担をかけるのに対して、ウォーキングは比較的軽い運動だから、運動不足の人がスポーツを再開する時にはうってつけだと思います。
 人間の身体には約四百の筋肉があるんですが、この半分以上の筋肉を使う運動のことを「全身運動」と呼んでます。ウォーキングは六割もの筋肉を使うから、立派な全身運動なのである。全身運動のメリットは身体全体の血行をよくする効果があります。

 そればかりではなく、脳みそへの刺激にも重要なんです。

 筋肉には大きく分けて、「速筋」と「遅筋」の二つがあります。
 速筋は素早い運動をする筋肉ですが、遅筋はじわじわと強い持久力を発揮します。下半身にはこの遅筋が多く分布し、ウォーキングをすると脳の機能が活性化するというわけです。
 古今東西、歩きながら画期的な発明や閃きをした偉人が少なくないけれども、これもきわめて合理的な理屈なんですね。

 さて、ウォーキングの方法ですけど、起床するとまずチョコレートを一口、それから深層水を五百ミリリットルほどぐいと飲む。そして「VAAM」(明治乳業)、あるいは「amino VITAL」(味の素)を飲む。これは脂肪を燃焼しやすくするためです。
 その後、スウェットスーツを着込んで歩き始めるんですが、夏なら三分後、冬でも十五分後には汗が出てきます。
 大事なことは、このスーツを着ると皮膚呼吸がしにくいから、中に長袖の下着を着込んでおくこと。すると汗がまとわりつくことがなくなります。十分ほど歩いたら、スーツの上を脱ぐ。これで上半身は酸欠から解放され、爽やかな気持ちになれます。

 ご存じのように、脂肪はすぐには燃焼しません。
 しかも急激な運動では燃焼しない。長くじっくり、ゆったりした運動でこそ燃焼するんです。だから、最低二十分は歩く。ここから炭水化物が燃焼し、それから脂肪の燃焼へと移ってくるわけです。

 いつも仕事場近くの公園を歩いてますが、ここは元々、競馬場だったところで一周一千メートルもあります。これを十分のペースで五周する。「やや早い」というペースだと思います。その間、途中で何回も休んでは体操や深呼吸をする。一気に五周歩くことはしません。

 無心に歩く。とにかく歩くこともいいけど、わたしはいつもポーチの中に落語のMDを持ち歩いて聞いています。
 古今亭志ん朝、桂歌丸、立川志の輔、柳家喬太郎、昔々亭桃太郎、何と言っても柳家小三冶。彼らの噺が二題ほど終わると、ちょうど一時間歩いたことになる計算です。この場合、一人でニタニタ歩いていると「あいつは危険な人間だ」と思われかねませんから、あまりお勧めはできないけれども、気が向いたら音楽でも聞きながらウォーキングするといいでしょうな。

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3 「マーク・トウェイン短編全集」
 マーク・トウェイン著 文化書房博文社 2427円

 トム・ソーヤ、ハックルベリーで有名な作家ですね。
 でも、中でもこの人の作品で好きなのが、「百万ポンド銀行券」というやつ。ピーター・セラーズ主演の「チャンス」もこれからヒントを得たんじゃないかな。

 物語はこういうもの。
 二人の大金持ちの兄弟が賭をする。その賭とは、英国に二枚しかない百万ポンド銀行券のうち、一枚を使う。この銀行券は紙幣です。これをある人間に与えるわけ。条件は三つあり、誠実な人であること、外国人であること、無一文であること。
 すると、ちょうどぴったりの男ヘンリーが目の前に現れます。彼は元々、アメリカの鉱山技師だったんですね。休暇中にヨットに乗って難破。イギリスに帰る船に助けられ、ただで連れて行ってもらう約束で働きます。もちろん、服はぼろぼろ。手には一ドルだけ。イギリスで解放された時には、子どもが捨てたナシを狙う有様。
 それを見ていた兄弟は「彼こそうってつけ!」というわけで、百万ポンド銀行券を与えて一ヶ月間、姿を消してしまいます。
 賭というのは、この百万ポンド銀行券を手に入れた男の運命がどう変わるか、それを証明してみたいというものです。つまり、一人は「その男は飢え死にするだろう」という予想を立て、もう一人は「いや違う。飢え死にはしない」という予想。ささて、どちらが正しいか、という賭なんですね。

 この男ヘンリーは清廉潔白な男です。
 だから、まず、筒の中にこの百万ポンド銀行券を発見した時に、すぐに返しに来るんです。けど、二人はいない。執事は「すべてに間違いはないから気にせずに」というメッセージだけを残していました。
 そこで、腹ぺこなんで食堂に入ります。食べるだけ食べ、あとで働いて返せばいいや、とこの百万ポンド銀行券を出す。もちろん、そんな金額を崩せるわけがありません。店主はこの身なりの汚い若者はどこかの大金持ちの変人だと理解してしまい、「いつでも結構でさぁ」と快く送り出してしまいます。
 以来、彼はこの店を贔屓にしてしまいます。すると、この店には百万ポンド銀行券を持った変人が現れるという噂で、店が大繁盛。
 とうとう、「給料を出したい」とまで言い出す始末です。

 次に訪れた店はテーラーです。いい加減、ぼろぼろの服を替えたい。そこで、店に入りますが、店員からうさんくさく見られて安物を出される。ところが、代金を払おうと百万ポンド銀行券を見せたところ、びっくり仰天。
 店主が飛び出てきて、最高の仕立てで服をあつらえます。
 「代金はいつでも結構でさぁ」

 この男はヘンリーはそれからさまざまな体験をします。また、彼のことを新聞がかき立てます。いまや、国王と並ぶほどの有名人。
 さて、さて、そこからこの男ヘンリーの人生はどう変わっていくのか・・・。

 百万ポンド銀行券が狂言回しとして使われますが、はたして、この男ヘンリーが人生を切り開く時、百万ポンド銀行券が本当に必要だったのか。
 どうだろう。自信と謙虚。この二つさえあれば、ポジティブな人生を切り開いていけるのではないか・・・。

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