2003年05月12日「為替がわかれば世界がわかる」「創刊男の仕事術」「東京立ち飲みクローリング」
1 「為替がわかれば世界がわかる」
榊原英資著 文藝春秋 1200円
著者は大蔵省国際金融局長、財務官を務め、「ミスター円」と言われた男。実際に通貨介入などで為替市場にコミットしてますね。
かなり本音で書いてます。経済理論一辺倒ではなく、人間的なアプローチが読みとれますよ。
最近、「経営は心理学」と言われるようになりました。セブン−イレブンの鈴木敏文さんが主張してるからですね。でも、本書を読むと「経済こそ心理学(人間心理で左右される)」であることがよくわかります。とくに為替は株式同様、メンタルな部分ですぐに上下動します。たいへん臆病な商品なんですよね。
いまや、為替相場、日経平均は女子アナがニュースでさりげなく読み上げるほど常識になりました。常識というのは、天気や気温と同じ「生活指標」の一つになっているということです。
これがいいのか、悪いのかはわかりません。ただ、バブル崩壊後、経済指標について関心が高くなっていることは言うまでもありません。
マクロ経済学者の理論からすれば、「減税すれば可処分所得が増える。だから、個人消費はかなり伸びるはず」。
ところが実際には、消費者は将来のことが不安で、減税分の実質所得を消費しないケースが少なくありません。
経済は心理学だから、理論の通りには進まないんですね。
為替相場の常識の一つに、「Buy on rumors.Sell on facts.(噂が出た段階で買い、事実がはっきりした時点では売り)」という言葉がありますが、これもそうですね。
その企業が発表した決算報告がアナリストや記者たちの予測の範囲内であったときは、いくら良い業績であってもすでに織り込み済みの情報として受け止められ、株価が上がるようなことはまずありません。
ところが、仮に業績が悪くて損失を出した場合でも、その損失が市場の予測よりも小幅であれば、株価が上ることがあります。
さて、為替市場ではモノではなくてマネー、それも外国通貨が売買されます。
この場合、為替市場で扱う外国通貨は人為的な無形商品です。モノ市場で売買される商品のように、ある程度客観的な生産・流通コストが価格に反映されるわけではありません。為替市場も売り手と買い手の均衡によって価格が決まります。
ただ、モノを離れたバーチャルな市場ですから、いちじるしく流動的、相対的、主観的なものになりがちです。
そのことを、イギリスの経済学者ジョン・メイナード・ケインズは次のように述べています。
「玄人筋の行う投資は、投票者が100枚の写真の中から最も容貌の美しい6人を選び、その選択が投票者全体の平均的な好みに最も近かった者に賞品が与えられるという新聞投票に見立てることができよう。この場合、各投票者は彼自身が最も美しいと思う容貌を選ぶのではなく、他の投票者の好みに最もよく合うと思う要望を選択しなければならず、しかも投票者のすべてが問題を同じ観点から眺めているのである」
著者は1日に最大200億ドル近くの介入をしたことがある、と言います、
1ドル120円とすれば3兆円近い。ソロスのファンドでも実額ではなかなかそこまでは使えないでしょう。
世界中で取引される為替の量は1日200兆円くらいです。
さて、アメリカがレーガン、ブッシュ、クリントンという時代を通じて膨大な財政赤字を克服したとき、ルービン財務長官は次のように宣言しています。
「ドル高はアメリカの国益である。アメリカは通商政策の道具として為替レートを使うべきではない」
この基本姿勢が、クリントン政権の経済運営を従来の通商重視から金融重視へと転換させたのです。
また、米国のヘッジファンドはキャリー・トレードといって安い金利の円を借り、ドルに替えていますから、ドル安にならない限り、金利で大変なサヤを稼ぐことができるのです。
ところが、ロシア危機で負担を圧縮する必要に迫られたことがありました。あの時、ノーベル経済学賞の学者が2人もいた投資会社が倒産しましたね。
それは自分のドル資産を売らざるを得なくなったのです。キャリー・トレードの解消ということです。そうした行動に走った金融機関やヘッジファンドが一つや二つではないため、一斉にドル売りが始まったというわけです。
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2 「創刊男の仕事術」
くらたまなぶ著 日本経済新聞社 1500円
著者はわたしの呑み仲間。だからというわけではありませんが、どうも内容が一部、似てることが気になるなぁ。
エッセンスはものすごくいいですよ。
マーケティングとは何か?
「人の気持ちを知ることだ」というのが著者の主張です。セブン−イレブンの鈴木さんと同じですね。
?人の気持ちを知ること
?それを言葉にすること
?言葉を形にすること
?できた形を、再び言葉で人の気持ちに訴えかけること
それぞれをビジネス用語に変換すると、
?ヒアリング
?マーケットの課題抽出
?商品への反映
?営業、流通、宣伝、広報
となります。
市場調査とは何か?
昨日までの「人の行動」を数字で知ること、です。
では、マーケティング調査とは?
明日からの「人の気持ち」を言葉で知ること、です。
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3 「東京立ち飲みクローリング」
散歩の達人篇 交通新聞社 1429円
好きなんです、こういう本。立ち飲み屋さん、いいですねぇ。
立ち飲み屋さんには、わたしもよく行きます。
これは2通りありまして、1つは料理も焼き鳥とか煮物とかをきちんと出すタイプの店、もう1つは酒屋さんが店を間仕切りにして立ち飲み屋をオープンしてるケースです。
ですから、料理は乾きものばかり。ここに来るお客はすごいですよ、とにかく、お酒が好き。朝から呑んでますからね。
面白いのは、ここに来る女の客。自分ではお金を払わないの。で、呑んでる客の話の相手をしてご馳走してもらうというわけ。だから、女の客といっても、一応、性別は女性というだけでとんでもないんです。
わたしのお勧めは、なんといっても荻窪の立ち飲み屋「鳥もと」ですね。ここの焼き鳥は抜群です。吉祥寺の「いせや」もいいけど、こっちのほうが好き。
いまでもよく行きますもの。
いずれにしても、安いし、気取りがなくていいや。それに1人でブラッと入れるのが最高だよ。
一度、トライしてみてください、立ち飲み屋
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