2003年05月05日「フーゾク 儲けのからくり」「AV男優」「裏ビジネス 闇の錬金術」
1 「フーゾク 儲けのからくり」
岩永文夫著 ベストセラーズ 562円
フーゾク産業ってのは、どのくらいのマーケットかというと、ざっと3兆6千億円だそうです。
たとえば、ホテトルだけでも東京都内だけでざっと10億円(年間)というんですから、ものすごい。出版業界がせいぜい2兆円ですから、倍近いマーケットだということがわかります。
フーゾクの代表格「ソープランド」ですが、ここ15年間、全国的に減りこそすれ増えてはいません。
東京の吉原では、以前、190軒あった店がいま、150軒です。大阪ではもっと酷くて、80軒がなんと0軒になってしまいました。
ソープ嬢は、はっきり言って、個人事業主ですね。ソープという場所を借りて、自分で商売してるんです。
その内訳がどのくらいになるかというと、たとえば、入浴料2万円(店側の取り分)、サービス料4万円(ソープ嬢の取り分)、計6万円という高級店があるとしましょう。
彼女たちは、毎月、家賃60万円を払ってビジネスしてるということになりますね。
この場合、彼女たちは入ってくるばかりではありません。経費もあるんですね。タバコ代、お茶代、ボトル代、税金、ボーナス(ボーイに支払う分、たいてい店が積み立てる)などがあります。控え室のティッシュペーパーもすべて経費。
これらのほかに、「仕事」で使う経費もあります。ローション、歯ブラシ、ボディソープ、そうそうコンドームもそうです。この分の経費は店によっても異なるけど、お客が1人以下だと無し。2人以上だと1万円という具合。
彼女たちの収入は10年前でもいまでも売れっ子は月間500万円くらい。昔は、最低ランクでも150万円は稼げたらしいですが、いまは100万円を下回るといいます。やはり、厳しいんですな、この世界も。
ピンサロはサービス自体はソープとあまり変わらないでしょうが、バーとか喫茶店と同じ飲食業なんで、一般の女性求人誌に募集広告を出せます。フーゾクの中でも、ちょっと違います。
ソープランドは一般紙ではダメで、フーゾク専門の求人誌しかダメなんです。
デリヘルというビジネスができました。デリバリー・ヘルスですね。これは内容的には、ホテトルとほぼ同じです。
違いはデリヘルが無店舗型フーゾクで、ホテトルが店舗型フーゾクなんです。ホテトルはもろ、裏ビジネスですよ。
けど、デリヘルは無店舗だけど、フーゾク店として24時間営業OKとして認めてやる、と、99年4月に風営法を改正したんです。警察に届けさえすれば、表のフーゾクとして認めてもらえるとなるや、元ホテトルの経営者たちがこぞってデリヘルへと衣替えしました。
さて、このビジネスの損益分岐点は1日25万円だそうです。
広告が大きいですもんね。月間250万円も出してるとこもあるらしいですよ。撮影で1万円はかかるし、モデル代に3万円、もちろん、家賃、人件費、電話代、だいたい、月間450万円。だから、1日25万円はないと厳しい。
こんな具合に、本書は輪姦パーティ、デートクラブ、性感マッサージ、ヘルス、イメクラ、芸者遊びなどなど、いろんなフーゾクの数字がおもしろおかしくまとめられてます。
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2 「AV男優」
家田荘子著 幻冬舎 571円
あの極妻の作家がものするインタビュー集です。
「AV俳優」というと、憧れる人と軽蔑する人と大きく2種類に分かれるでしょうね。参考までに、わたしは憧れも軽蔑もしません。
「プロのAV俳優はどこか違うだろうな」と思うだけです。
このプロという意味は、「売れっ子」ということですね。高尚な哲学があろうが、スタミナ抜群の絶倫オットセイ人間だろうが、そんなことは関係ありません。
売れているかどうか。
活躍してるかどうか。
売れてる人間は、やはり、どこか違います。どこかが違うから、ニーズがあるわけでしょ。
そんな男は、やはり、話をじっくり聞いてみたいよね。
で、読みました。
「最初、借金を返そうというだけでした。でも、人間、どんな仕事をしてる人でも、目標あると思うんですよ。ボクサーなら、チャンピオンベルト巻きたいと思う。AV男優なら、誰にでも認められる男優になろうって、思ったんじゃないですかね、当時」
これは加藤鷹さん。いま、テレビでも活躍してるようね。
この人、年間300日以上、働いてるそうです。1日2カ所の掛け持ちもざらだとか。いや、羨ましい・・・いや、大変大変。
12年間で3千5百本の作品に出たそうですよ。
でも、スランプもあったみたい。
「樹まり子(一世を風靡したAV女優)と同棲を始めた時じゃないですか? 他の男では絶対にありえない悩みができたんです。自分と融合しあえる女が実際に見つかっちゃった場合、なんで、好きでもない女のこんなとこ、舐めてなきゃいけないんだろう。拒絶反応を起こして、勃たなくなっちゃったんですよ」
ところで、AV女優はどういう理由で女優になるんでしょうかね。売れっ子AV男優の中山幸司さんはこんな分析をしてます。
「もちろん、お金のためというのがほとんどなんですけど、ボクはお金のためじゃないんだろうなって思うんです。やっぱり、セックスしたいんだろうな、と。これはかなり高いパーセンテージだと思うんですね。たとえば、2日間の撮影だったら、2日間じゅうは女王様ですからね。わがまま言っても聞いてくれるし、したい時にできる。正直な言えばいいのに、セックスしたいからという人はいませんね」
あの伝説の村西とおる監督も登場してます。
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3 「裏ビジネス 闇の錬金術」
鈴木晃著 講談社 680円
裏ビジネスというと、フーゾクを連想しますが、ここに登場するのはそんな真っ当なものではありません。
詐欺、インチキ、泥棒の類です。
けど、見事なのは、頭を使って儲けているというとこでしょうね。
悪知恵というのはすごいものです。
登場するのは、恐縮屋、二八屋、解体屋、身分証偽造、にんべん屋(偽造株券のこと)、軽油密造、探偵屋、領収書屋、車両窃盗、海上ラブホテル屋、などです。
たとえば、恐縮屋というのはどういうものか。
いま、不景気で倒産が相次いでいます。倒産すると、債権者と債務者との修羅場の戦いがスタートするのが普通です。債権者は1円でも多く売掛金を回収したい、と考える。あるいは、投資していた人ならば、紙くず同然の株式を返せと談じ込む。
これが仕手筋などのように、数多くの投資家(うさんくさい人間も含めて)からお金を集めていたとすると、もう大変です。怒号の嵐ですよね。
殴られたり、蹴られたりすることも少なくありません。
で、登場するのがこの「恐縮屋」です。
いったい、どうするか。債権者会議に乗り込んで、いきなり、ずっと土下座をするんです。殴られようが、蹴られようが、何時間でも土下座したまま。
なぜか?
「張本人の債務者」だからです。
債権者は罵詈雑言、罵倒の言葉を尽くします。ホントに大きな灰皿が飛んでくる。それが頭に当たる。血が出る。やくざも登場する。
すると、比較的、健全な債権者はすごすごと帰っていくんですね。
で、最後にはだれもいなくなる。いなくなった段階で、すっと会場に入ってくる人間がいます。
「ご苦労さん」
今頃やってきた人間は誰か?
これがホントの債務者なんですよ。
つまり、恐縮屋は演技で恐縮の限りを尽くすわけです。迫真の演技ですよ。
こんなビジネスもあるんですね。
いずれも堅気のビジネスではありませんが、「なるほど、そうか」と目から鱗が落ちることは保証します。
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