2007年01月21日「アメイジンググレース」 陣内孝則著 幻冬舎 1680円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

「愛ルケ」見てたら、陣内さんが出てた。殺人を犯した主人公の弁護士役ね。
 この人、トークもおもしろいし、なんか本書いてるかなと、アマゾンに。
 あった、あった。見っけ。1冊かぁ。まっ、いいか。

 これ、まじ、いいじゃん。文章がうまいどうのこうのじゃなくて、熱い。ジンナイが熱い。
 博多弁で書いた自伝?
 自伝じゃなくて、友人タニのことを書いたって?

 彼、福岡県大川市の出身なのね。私も行ったことあります。家具の街、水郷の街。佐賀県の隣。

 女にもてそうなロックンロールが大好きでバンドを組んじゃう。そこで出会ったのがタニという1人の男。イッコ下だけど生意気で突っ張ってて、いつもグラサンを外さないで、ギターが好きで、イカシてて・・・。
 バンド名はまんま、THeROCKERS。

 1980年、バンド、デビュー。博多の「昭和」にも出演。
 伝説のハコだ。陽水、長渕、チューリップ等々の出演した音楽の登竜門。
「プロになりたか!」というタニとジン。中野サンプラザでオーディションを受けた。うじきつよしの子供バンドがいた。レベルが高い。
 キャニオンのディレクター1人が飛びついた。
 プロデビュー? 命がけの真剣勝負。でも、所属事務所の社長から渡されたのは「アルバイトニュース」1冊のみ。アパートは米軍ハウスだった。
 いよいよ、レコードを出す。まったく売れない。2枚目。まったく売れない。3枚目。事務所の意向を容れて売れてるロックのカバー曲ばかり。これも売れない。
 ライブはいいけど、レコードが売れない。といっても、そのライブだってそんなに集まるわけじゃない。

 解散。解散する前から、メンバーは解散してた。

 ジンのことをいちばんよくわかってるのはタニだ。タニと一緒にやりたい、タニさえいたなら・・・と思っていても、事務所はジンのソロデビューを描く。
 タニに伝える。パンチのお見舞いを猶予してもらった。

 それまでも小芝居はしてた。博多出身の石井監督の映画にもちょい役で出てた。芝居がうまいわけではない。死体役なのに、ひくひく眉毛が動いてた。
 幕間のトークがウケて、いろんなとこから声がかかった。

 舞台はおもしろい! スタジオじゃなく、ライブ感覚が最高や!
 オレはとことんライブが好きなんだ!

 映画、ドラマにも出演。事務所も歌手より俳優でいけばいい、と判断してた。
 俳優として売れに売れてる頃、THeROCKERSを一夜かぎりで再結成した。

「ジンさん、もう1度、やろうや。ツアーに出よう。やっぱりロックンロールはよかろ?」
「タニ、頼む。信じてくれ。いつか絶対に、やるけん。役者の仕事ばビシッとやって、タニと2人で曲の作れるごと時間とって、それからまた一緒にやろう」

 月日が経った。タニが事故で死んだ。37歳だった。
 
「タニの奴、クリスチャンやったっちゃね。ジンナイ知っとたや?」
「タニのことやけん、女の子にもてようと思うて、またすらごとば言いよるて思うとった」
 
「アメイジング・グレース」ちゃ、こげんよか曲やったかねぇ。

 たまたま入ったライブハウス。ロックバンドが出演。演奏は下手の極地。2小節に1回はリードギターが音を外す。ボーカルは下手なステップでよろけてる。
 下手だ。とてつもなく下手だ。しかし、下手ってことは、これからうまくなるばかりだ。完成したらつまらない。いまがいちばんおもしろい時なんだよ・・・。

 これ、映画になります。玉木宏さんが出るらしい。「愛と青春の旅立ち」みたいな?
 この本、9年前の本なのね。その頃から映画にしたいと後書きに書いてる。陣内さん自身、小さな映画の監督はしたことあるけど、これはだれが撮るんだろう。見たいような見たくないような。この本より熱いんだろうか。300円高。