2007年04月19日「プロフェッショナル アイディア。」 小沢正光著 インプレス 1680円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 なんちゅうか、気づいたら20分で読み終わっちゃいました。
 理由は、簡単。企画や発想のスタンスだけでなく、手法にも共通点がものすごく多かったからですなぁ。
 うんうん、同感同感、そうやんだ? やっぱりね、みたいに頷きながら読んでしまいました。
 ということは、引っかかるところがないわけよ。これは困りました。

 手法で似たようなことやってる部分は、たとえば、「書き出す」「整理する」「チョイスする」という作業を著者はそれぞれ3回繰り返すんだと(私はチョイスを何度も推敲するけど、ほかは1回のみ)。
 「バックキャスティング」「文章をキャッチコピーで書く」とかもそう。「バックキャスティング」なんて、これ、造語なんで驚いちゃいました。
『ウケる!発想術』(プレジデント社)と読み比べてみてね。

 さて、著者は博報堂の執行役員。私、電通の連中とはコラボで仕事したことあんだけど、博報堂のスタッフとはご縁がなくてねぇ。
 ユニークなCMをたくさん制作してますよね。

 著者はクリエイティブプロデューサーで、「アサヒスーパードライ」のCMのほか、日産、全日空、ブリヂストン、アップル等々のブランディングを手がけてます。すばらしい仕事ぶりですよね。

「書き出す」「整理する」「チョイスする」という作業をそれぞれ3回繰り返して、アイデアを練り上げる。駆け出しの頃には、アイデアをいつもキャッチコピーにして提案してた。
 アイデアをまとめるときは手書きがベストだと。東北大学川島隆太教授曰く、「手で書く動作は脳を活性化する」だって。どっかで聞いた話だな、こりゃ。

 宮崎駿さんの仕事場に行って、「風の谷のナウシカ」のコンテが部屋中に貼られていて、スタッフがそれを見ながら議論していたことに感動したって。

 これ、映画監督はよくやるよね。黒沢明さんもそうだったし、今回、ご縁のあった映画「北辰斜にさすところ(三国連太郎さん主演)」を監督した神山征二郎さんも、仕事場は部屋一面、壁にぐるりとコンテが貼り付けられてるもんね。
 グルッと見わたすと、ストーリーがわかるわけ。で、気づくとあちらこちらに書き込むわけね。

 脚本家の橋本忍さんもそう。「砂の器」だって、コンテを旅館の障子、鴨居、壁にぐるりと貼り付け、寝ながら議論して、1つ1つ貼り付けて完成したものね。この手法は映画人の間では常識なのよ。

 「会議はセッションの場。アイデアをゼロから生み出す場ではなく、アイデアを議論する場」とのこと。たしかにね。
 会議はお話をスタートするところではないんだよね。お互いに叩く場なのね。

 本書は総論というか原論という位置づけではないか、と思う。各論、すなわち、手がけたCM1つ1つの具体論についてはこれからまとめられるのではないかなぁ。それを期待したいですね。
 片鱗だけしか伺えないけど、企画の鉄則をきちん押えられています。就活生とか新人には読んでもらいたいなぁ。250円。