2007年04月20日「夫婦善哉」
カテゴリー中島孝志の不良映画日記」
いま、ジュリーと藤山直美さんの舞台で評判になってますね。そう、「夫婦善哉」です。
映画では森繁久弥さん(DVD)、藤山寛美さん(ビデオ)が演じてます。つまり、藤山父娘が演じてるわけですな。
「久世塾」以来、森繁さんにはまってまして片っ端からチェックしてます。で、この映画も観ましたよ。「大遺言書」シリーズのどこかで森繁さんが述べてました。
「私達はこの映画で最高の大阪弁を使いました」だと。注意して聞いていると、たしかにきれいです。
森繁さんは鳴尾の生まれ。名門北野中学(ずっと後輩に橋下弁護士がいますな)です。共演した淡島千景さんは元宝塚ですからね。
この映画、東宝製作なんだけど、淡島さんは松竹所属。けどね、淡島さんでなければできない、と言い張って、なんとか撮影にこぎつけた作品なのね。
織田作之助作。自分の身内のことを小説にしたようですな。
時代は関東大震災の少し後。もちろん、舞台は大阪でっせ。勝ち気でしっかり者の蝶子と気弱で道楽者の柳吉の夫婦物語なんやけどな。
これがとても他人事とは思えまへんねん。死んだ母親が見たら、「こら、おまえのこっちゃで」ときっといいまんな。
蝶子は17歳で曾根崎新地の芸子に出てたちまち売れっ子になります。芸も巧いし、なにより明るくて座持ちがいい。学はないけど、ひと言でいうたら、「可愛い女」なんですな。
男は船場の化粧品問屋の若旦那。これがとてつものう甲斐性なし。遊びのことなら天下一品なんやけど。で、妻子がある身で蝶子と駆け落ちしたんで、実家から勘当されてまんねんで。
男と女の仲はおもろいもんでんなぁ。不思議なもんでんなぁ。この柳吉に蝶子が惚れてしまうんや。
柳吉はいまでいうB級グルメ。湯豆腐、まむし、関東煮、かやくご飯。デートというても、せいぜいこんなもん。
「どや、うまいやろ、こんなん、どこいったかて食べられへんで」
こういう男はんが、女から見たら可愛いらしいてたまりまへんのやろな。
甲斐性がない。遊び好き。飽きっぽい。苦労知らず、甘えん坊。ここまで来たら、もう、なにをしてもダメでんな。
やることなすこと、ことごとく失敗しまんねん。まず剃刀屋やりました。関東煮屋、果物屋、カフェ、どれをやってもあきまへん。遊びにはものすごうエネルギーが湧いてくるのに仕事となるとからきしダメ。長続きしまへんねん。
そのうち、この甲斐性無しが腎臓結核になります。蝶子は婿養子のとこに援助を求めます。けど、めちゃくちゃ文句を言われてしまう。
「わてのことを悪う言やはるのはむりおまへん。けど、必ず私の力で柳吉はんを一人前にしてみせます」
啖呵を切ってしまうんですな。
幸い、芸者仲間から資金を得て、カフェを開きます。名前がええの。「蝶柳さろん」ゆうねん。腎臓結核の柳吉を支え、カフェでは客からちやほやされる。
そんなとき、柳吉の父親がとうとう死にまんねん。
けど、蝶子は葬儀にも呼ばれまへん。ほとほと嫌気がさしたんやろな、ガス自殺をはかりまんねん。助かりますけどな。新聞に出る。
柳吉が葬儀に駆けつけてもなんの用もありまへん。位牌は婿養子が持ってるし、居場所がありまへんねん。実質的に廃嫡されてますんや。もちろん、遺産など一銭ももらえまへん。
「あのな、おばはんを連れて行かなかったのは、考えがあってのことや。おまえとは別れたゆう芝居をうって遺産の半分もらおうという考えや」
「うちがアホやった。あんたを信じるうちが」
「どや、なんぞ、う、う、うまいもん食いにいこか」
蝶子を連れていったのが法善寺。道頓堀から千日前へと続く通りの角に「めおとぜんざい」という赤提灯。
出てきたぜんざいは一人に二椀のお椀が出ます。
「なぜ、二つの椀か知ってるか?」
「一人より夫婦のほうがええいうことでっしゃろ?」
「一つの椀にぎょうさん盛るより、少しを二つの椀で出したほうが客は多いと思うんや」
「ふ〜ん」
「おばはん、ここ払っとけ」
「遺産、半分もろたんとちゃいますのん?」
「・・・」
出ると、昔、遊びに連れ回した番頭とすれ違います。女連れでな。呼びかけても無視や。にもかかわらず、「あいつ、景気がええねん」と無心しようとしますんや。そんな柳吉を蝶子はこづきます。
雪が降ってきます。店の軒先で雨宿りならぬ雪宿り。
「頼りにしてまっせ」
蝶子は柳吉より11歳も若いんやけど、立場はとうに逆転してまんねんな。こんな甲斐性なしに、蝶子は愛想もつかさんと。腐れ縁ゆうやつやろな。
ほんに男女の仲だけはわからしまへんなぁ。
私の頭の中では柳吉は断然小林薫さんなのね。蝶子役は・・・底抜けに明るい可愛い女。だれがいいんだろね・・・。
映画では森繁久弥さん(DVD)、藤山寛美さん(ビデオ)が演じてます。つまり、藤山父娘が演じてるわけですな。
「久世塾」以来、森繁さんにはまってまして片っ端からチェックしてます。で、この映画も観ましたよ。「大遺言書」シリーズのどこかで森繁さんが述べてました。
「私達はこの映画で最高の大阪弁を使いました」だと。注意して聞いていると、たしかにきれいです。
森繁さんは鳴尾の生まれ。名門北野中学(ずっと後輩に橋下弁護士がいますな)です。共演した淡島千景さんは元宝塚ですからね。
この映画、東宝製作なんだけど、淡島さんは松竹所属。けどね、淡島さんでなければできない、と言い張って、なんとか撮影にこぎつけた作品なのね。
織田作之助作。自分の身内のことを小説にしたようですな。
時代は関東大震災の少し後。もちろん、舞台は大阪でっせ。勝ち気でしっかり者の蝶子と気弱で道楽者の柳吉の夫婦物語なんやけどな。
これがとても他人事とは思えまへんねん。死んだ母親が見たら、「こら、おまえのこっちゃで」ときっといいまんな。
蝶子は17歳で曾根崎新地の芸子に出てたちまち売れっ子になります。芸も巧いし、なにより明るくて座持ちがいい。学はないけど、ひと言でいうたら、「可愛い女」なんですな。
男は船場の化粧品問屋の若旦那。これがとてつものう甲斐性なし。遊びのことなら天下一品なんやけど。で、妻子がある身で蝶子と駆け落ちしたんで、実家から勘当されてまんねんで。
男と女の仲はおもろいもんでんなぁ。不思議なもんでんなぁ。この柳吉に蝶子が惚れてしまうんや。
柳吉はいまでいうB級グルメ。湯豆腐、まむし、関東煮、かやくご飯。デートというても、せいぜいこんなもん。
「どや、うまいやろ、こんなん、どこいったかて食べられへんで」
こういう男はんが、女から見たら可愛いらしいてたまりまへんのやろな。
甲斐性がない。遊び好き。飽きっぽい。苦労知らず、甘えん坊。ここまで来たら、もう、なにをしてもダメでんな。
やることなすこと、ことごとく失敗しまんねん。まず剃刀屋やりました。関東煮屋、果物屋、カフェ、どれをやってもあきまへん。遊びにはものすごうエネルギーが湧いてくるのに仕事となるとからきしダメ。長続きしまへんねん。
そのうち、この甲斐性無しが腎臓結核になります。蝶子は婿養子のとこに援助を求めます。けど、めちゃくちゃ文句を言われてしまう。
「わてのことを悪う言やはるのはむりおまへん。けど、必ず私の力で柳吉はんを一人前にしてみせます」
啖呵を切ってしまうんですな。
幸い、芸者仲間から資金を得て、カフェを開きます。名前がええの。「蝶柳さろん」ゆうねん。腎臓結核の柳吉を支え、カフェでは客からちやほやされる。
そんなとき、柳吉の父親がとうとう死にまんねん。
けど、蝶子は葬儀にも呼ばれまへん。ほとほと嫌気がさしたんやろな、ガス自殺をはかりまんねん。助かりますけどな。新聞に出る。
柳吉が葬儀に駆けつけてもなんの用もありまへん。位牌は婿養子が持ってるし、居場所がありまへんねん。実質的に廃嫡されてますんや。もちろん、遺産など一銭ももらえまへん。
「あのな、おばはんを連れて行かなかったのは、考えがあってのことや。おまえとは別れたゆう芝居をうって遺産の半分もらおうという考えや」
「うちがアホやった。あんたを信じるうちが」
「どや、なんぞ、う、う、うまいもん食いにいこか」
蝶子を連れていったのが法善寺。道頓堀から千日前へと続く通りの角に「めおとぜんざい」という赤提灯。
出てきたぜんざいは一人に二椀のお椀が出ます。
「なぜ、二つの椀か知ってるか?」
「一人より夫婦のほうがええいうことでっしゃろ?」
「一つの椀にぎょうさん盛るより、少しを二つの椀で出したほうが客は多いと思うんや」
「ふ〜ん」
「おばはん、ここ払っとけ」
「遺産、半分もろたんとちゃいますのん?」
「・・・」
出ると、昔、遊びに連れ回した番頭とすれ違います。女連れでな。呼びかけても無視や。にもかかわらず、「あいつ、景気がええねん」と無心しようとしますんや。そんな柳吉を蝶子はこづきます。
雪が降ってきます。店の軒先で雨宿りならぬ雪宿り。
「頼りにしてまっせ」
蝶子は柳吉より11歳も若いんやけど、立場はとうに逆転してまんねんな。こんな甲斐性なしに、蝶子は愛想もつかさんと。腐れ縁ゆうやつやろな。
ほんに男女の仲だけはわからしまへんなぁ。
私の頭の中では柳吉は断然小林薫さんなのね。蝶子役は・・・底抜けに明るい可愛い女。だれがいいんだろね・・・。