2007年04月27日お待たせしました!「ニュー・シネマ・パラダイス」です。

カテゴリー中島孝志の不良映画日記」

 人の幸せって、もしかすっと2つあんのかもね。
 1つは子どもの頃の夢を持ち続けられるってこと。こういう人は幸いだよね。好きなこと、やりたかったことを、やって生きていけるってのはね。
 もう1つは愛する人を見つけられること・・・かな。

 この映画のテーマって、この2つなんじゃないかなぁ。

 名画の代名詞とも言われる作品。いままで紹介していなかったのね。とっくに披露してたと思ってたんだけど・・・。


だれもが心に温めてる大切なものを形にするとこういう作品になります。

さて、これ、ほとんど、監督の自伝といってもいい映画です。ジュゼッペ・トルナトーレ、33歳の作品でっせ。
「郷愁に惑わされるな!」と監督は名優フィリップ・ノワレ演じる映写技師アルフレードに言わせてるけど、郷愁にいちばん浸っているのがこの人だったんじゃないか・・・。

「シチリアの母親は待つことが仕事。夫を待ち、子どもを待つ。それで一生を過ごしていくから、自分は空っぽ。だけど、すべてがわかってしまう。電話の声を聞いただけで、子どもの人生のすべてを見透してしまう」
 これ、監督の母親像です。少年トトの母親など、まさしく典型的なシチリアの母親ですな。

 さて、舞台は戦争の足音が聞こえてくる頃のシチリアの片田舎。日本人にはなじみがないけど、イタリアってカトリックだから教区映画館というのがあんの。

 映画は村の人々の唯一の娯楽。何時間も前から、みな、並んで待ってる。まっ、テレビもなにもない頃だからねぇ。

 けど、神父さんが運営してるってことは、映倫=神父さん。そう、事前に映画をチェックしてはキスシーンを全面カットしちゃうわけだな。
 いつもいいとこに来ると、そのシーンがプツッと切られて飛んでしまう。「20年近くキスシーンを観てないぞ!」なんて、館内はブーイングの嵐。

 少年トトは、買い物のお金を注ぎ込んで観ちゃうほど映画好き。
 もち、泣くほどお尻を叩かれた。「50リラを映画館で落とした」と嘘をつくトトを助けてくれたのが映写技師のアルフレード。

 戦地に行ったまま戻らないために、父親の記憶がないトトと、子どものいないアルフレードの奇妙なつきあいがはじまります。

 映写室に出入りするうちに、少年トトは完全に映写のやり方を覚えちゃう。
 「おまえにはさせたくない仕事だ。いつも独りぼっちだ。辛い仕事だ。同じ映画を100も観なくちゃならない。最初の妻を亡くしたときだって、映画が終わるまで知らせてもらえなかった」

 ある時、映写室が火事になります。昔のフィルムってのは熱で燃えることが多かったのね。
 で、映画館バラダイスは全焼。
 トトのおかげで一命を取り留めたアルフレードだけど、視力を失ってしまいます。
 「前よりもずっと見えるようになった。人の心がね」

 トトも青年になり、銀行家の娘エレナに恋します。相談相手はいつもアルフレード。彼は反対なんだな。「青い眼の女はむずかしい。やめとけ」ってね。
 けど、映画のシナリオのように2人の恋は進んでいきます。アルフレードの跡を継いで、トトは映写技師になんだけどさ。結局、実らずにトトは故郷を後にするわけ。アルフレードの勧めでね。

「この村を出て行け。手紙も書くな、2度と帰ってくるな。自分のすることを愛せ」

 トトは映画を仕事にします。で、大成功します。「アルフレードが死んだ」という母からの電話で、30年ぶりに故郷に戻るトト。
 映画はここからスタートします。

そして、アルフレードの形見である1つのフィルムをラストシーンで映してくれます。
 それは・・・。

 これこそノスタルジーっヤツ。文句なしの最高作品。175分があっという間だよ。アカデミー外国語映画賞、カンヌ映画祭審査員特別グランプリも当たり前だな。