2007年05月07日「頭のいい人が儲からない理由」 坂本桂一著 講談社 1365円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 頭のいい人って商売が下手らしい。・・・かもね。現実より、ああだこうだと理屈を優先しがちだもんね。
 「頭のええお人は、できない理由をいわせたら天下一品でんな」
 昔、幸之助さんもそんなこと言ってましたなぁ。面白いことにフォード一世も同じこと言ってるんですよね。商売って、泥臭かったり人間的だったり、理屈に合わないことも多いもんねぇ。

 けど、著者は基本的に賢い人です。お勉強ができる秀才タイプじゃなくて、「地頭がいい」ってヤツね。ここら辺、興味がある人は小生の書いた『地頭のいい人が成功する』(小学館文庫)をチェックしてくださいね。

 さてと、学生時代にサムシンググッド(現アイフォー)という会社を創業します。アドビシステムズとかウエブマネーの代表でもあるのね。
 アスキーやソフトバンクと時を同じくしてパソコンソフト事業を始めた牽引役らしいですね。
 彼らほど目立つ存在ではないけど、知る人ぞ知るという経営者なんでしょうね。この本、講談社以外から出版されてたら売れなかったでしょうな。

 地頭のいい人の特徴は、いわゆる、常識では考えないこと。自分の頭で考え抜くこと。そして、実践すること。これが大切なポイントですね。

 その兆しは、彼が東大生時代、借金返済のためにちり紙交換のバイトをしたときにも現れてます。
 同じ仕事をしても2〜3倍の差があったそうです。たとえば、ある人は毎日、ちがうルートを通って営業する。遠くに遠くに広げようとする。売上が欲しいとそうしますよね。

 けど、ボスからは「稼ぎたかったらコースを3本に絞れ!」と言われるわけ。
 このボスちり紙交換で成功するコツを経験的につかんでたのね。で、坂本さんはいろんなところを流さずに、同じ町内会をまわるようにするわけ。すると、いつもより売上がドンと増えるんだよ。

 考えてみれば、主婦の皆さんはちり紙交換の人ってどんな人かわからないから不安を感じますよ。だけど、いつも同じ人、しかも感じがいい若い人なら安心でしょ。
 「どうせ出すならあの人に」って指名客までついちゃう。

 だから、顔を覚えてもらうために音声テープも自分で吹き込んだり、トラックの上に銀紙貼ったりして一目でわかるように工夫したりね。
 交感するトイレットペーパーだって安かろう悪かろうという品じゃなくて市販のいいヤツをわざわざ自腹で買って用意する。ティッシュだってクリネックスやネピアのようなブランド品にする。
 こんなの、大安売りで買っておけば安いんだからね。

 究極のセールスは、待ちの姿勢から攻めの姿勢に転じたこと。ちり紙交換が一軒一軒アパートをノックして歩いたわけ。「ちり紙交換ですぅ」なんてね。
 恥ずかしい? いやいや、自分の仮説が正しいかどうか確認する実験だもの。恥ずかしいという次元とはちとちがうでしょう。

 もちろん、ビジネスのヒントになる話題もたんまり。
 いま、いちばん勝ちやすいマーケットは「アンチウィルスソフト」の分野だって。これ、儲けがバージョンアップに依存してるってビジネスモデルでしょ。だから、狙い目なのよ。

 本書には書いてないけど、この点はebayとYahoo!JAPANの商戦の歴史を振り返るとピンと来るかもよ。
 ピンと来ない? ならば、中島さんのとこで勉強してみたら? 280円高。