2007年08月12日「演技者」 小林桂樹著 ワイズ出版 3900円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 俳優生活60年。小林桂樹さんといえば、やっぱ、サラリーマン物の映画やドラマでしょうね。
 私の年代だと、残念ながら、「三等重役」「サラリーマン出世太閤記」「社長漫遊記」「社長太平記」・・・それに「裸の大将」などはリアルタイムでは見てません。ビデオやDVD。あるいはテレビの深夜映画とかですよね。

 映画では、「連合艦隊」という大作にも主演してるけど、やっぱ、テレビかな。
 とくに記憶に残っているのは、「それぞれの秋」(TBS)。
 これはよかった。脳腫瘍という病気はこうなるのかということもそれとなくわかったし、家族とはいっても、すでにバラバラで各自、秘密は多いし、勝手なことばかりしている。
 けど、それでも家族は家族。いざとなれば、結束する。血は水よりも濃いわけですよ。

 あとは「黒い画集」かな。
 これはサラリーマン物はサラリーマン物でも、原作が松本清張だかんね。極々普通のサラリーマンが蟻地獄に落ちる様をミステリアスに描かれてます。
 3部作が作られてるけど、秀逸はやっぱ「黒い画集−−あるサラリーマンの証言」でしょうな。
 私がビデオで持ってるのは小林さんと原千佐子さんとのコンビ。後に、黒木瞳&いかりや長介コンビでリメイクされてます。

 いま、記憶に残る名優というと、三船敏郎、三国連太郎、成田三樹夫、森繁久弥、岸田森・・・たくさんいますけど、硬軟織り交ぜていろんな役ができるのが、小林さんの特長ですよね。

「役者は顔がなくていい」
「自分のより相手のセリフを覚えておけ」

 演技者として体得したあれこれを、エピソード豊富に語っています。
 500ページもあるからそうとう分厚いけどね、昭和18年、シンガポールまで遠征して撮影してるほどの映画人の思い出話。勉強になりますな。300円高。