2007年09月05日怪談

カテゴリー中島孝志の不良映画日記」

 ああ暑い、暑いというより熱い。こんな時はかき氷・・・それに怪談。
 去年の夏は、野毛のにぎわい座で歌丸さんの「真景累ヶ淵」を5回通しで堪能。あまりよかったんで、原作まで読んじゃった。

 で、今年は映画。これ、8月の頭からやってたから、季節外れといえば季節外れ。
 まっ、残暑厳しきおりだもんね。

「牡丹灯籠」と同じく、原作は三遊亭円朝。といっても、牡丹のほうは中国に伝わる話があんのよね。参考までに、真景は神経でいいんだよ、ホントは。


「この後、女房を持てば必ずやとり殺す」−−こんなに恋い焦がれてみたいね。

 主演の尾上菊之助(新吉)がいい。しかし、父親によく似てる。黒木瞳(豊志賀)も娘道成寺みたいでいい雰囲気。
 井上真央(お久)はよく出てますなぁ。予告編にも出演してた。最近の映画、総なめなんじゃないか?
 
 さてさて、いきなり、講談の人間国宝貞水師匠が「宗悦殺し」を語ります。で、この因縁話の素因・・・深見新左衛門が皆川宗悦を斬り殺して累ガ淵に沈めるシーンから。

「煙草、いかがですか?」
「またにしとくよ・・・やっぱりもらっとこうか」

 どうも気になる煙草屋の新吉。この新吉だけど、元々、武家の生まれなのね。けど、狂った父が母親を殺してお家取り潰し。
 で、使用人の勘蔵が赤ん坊だった新吉を引き取ったわけさ。
 
 豊志賀と新吉は14も違う。けど、新吉は憧れてたんだ。年上の女・・・か(森進一?古い)。
 元々、強い縁で結ばれた2人。男女の仲になるのに時間はかからないわけさ。

 縁ですなぁ。だって、この豊志賀。宗悦の娘なんだもの。ある日、父親が行方不明になり、姉妹2人で必死で探す。けど、見つからなかった。
 当たり前さ。累ガ淵に沈んだら最後、浮かばないんだよ。
 
 若い燕(古いねどうも)に夢中の行かず後家。だけど、こうこう男を拘束し、嫉妬に狂うと、ちとかなわんよなぁ。
 娘を三味線の稽古に通わせる親にすれば、堅いと評判だから預けてるのに、「男狂い」となりゃやめさせますよね。

 どんどん弟子が減ります。けど、豊志賀はへっちゃら。師匠のためにも別れようとする新吉と大げんか。
 この時の怪我が命取りになります。

 花火の夜、豊志賀の薬をもらいにきた帰り道、新吉は豊志賀の弟子のお久に遭遇します。
 モテる男は辛いね。結局、ここでも告白されちゃうの。

「家を出て叔父のところにいくわ。もう逢えないの」
「あんたは強いな。どうしたらそんなに強くなれるんだ?」

 豊志賀の束縛を逃れ、新吉は2人で江戸を出る決意をするんだ。自分がいない方が師匠のためにもなる、とも考えたはず。

 煙草屋に寄って、形見の刀を持ち出す。売って、豊志賀の生活費として置いておくつもりだったんだ。
 けど、煙草屋の別室には豊志賀が来てるんだよ。

「新さん、どこにでも行っていいよ。けど、私の死に水だけはとっておくれ」
「師匠、縁起でもない」

 駕籠を呼んで、病いの豊志賀を深川まで帰らせようとしたところに、慌てて煙草屋に入ってくる男がいた。

「新さん、師匠が死んだよ」
「えっ?」

 駕籠をめくってみると、そこにはだれも・・・。
 
 この後、新吉は江戸を出てお久の叔父のいるという羽生に行きます。
 どういうわけか、お久も含めて3人の女を殺します。すべて新吉とは前世から縁のある女ばかり。

 親の因果が子に報い・・・因果はめぐる。お馴染みの一節。
 落語、講談バージョンとはちと内容が違いますけど、それなりに十分、楽しめる佳品。

 まぶい女が目白押し。新吉は、風林火山の亀さんとはこれまた違う雰囲気で鯔背だぜ。なによりテンポがいい。怪談はリズミカルでなきゃあかんよ。
 そんなこんなでお勧め。

 ラストシーンは映画や講談とはちがうけど、これはこれで映像的には成功してるな。