2007年10月01日「トキワ荘の青春」
カテゴリー中島孝志の不良映画日記」
とってもとっても静かな映画。1秒が3秒くらいに流れる時空間ですな。
で、いきなり、服部良一メロディかよ。気づいてみたら、昭和30年に連れてかれてた。「Always三丁目の夕日」の少し前だよね。
日本も日本人も焼け跡で今日食べるものにも懸命。けど、明日は今日よりきっと良くなってるという、なんかわかんない確信があってさ。そんな時代。
こんなリズムと音楽はいまじゃ聞かないね。それが好きなんやねぇ、市川準という監督は。
オープニングもラストも「胸の振子」? たしかに名曲でおますな。
自慢じゃないけど、この曲だけでもCD3枚持ってまっせ。元々は霧島昇さんの歌。あの鼻声の歌手ですね。私ゃ小学生の頃からの懐メロファンだからね。この世代の歌手についてはめちゃ詳しいの。テレビチャンピオンに出たいくらい。3日くらい講演できるネタあります。
裕次郎、陽水、EPOもカバーしてますな(そういえば、雪村いずみさんも歌ってたな。悪いけど選曲ミス)。やっぱ、裕次郎か陽水? あるいは、アン・サリー?(これもCD持ってます)
どことなくアンニュイでけだるくてさ。平野愛子さんの「港の見える丘」「君待てども」のテイスト。だから、「お元気ですかぁ?」の陽水にはぴったしなんだなぁ。
手塚治虫さんがいうように、まさしく梁山泊。
トキワ荘ちゅうのんは西武池袋線の椎名町にあったアパートね。1952〜1982年にかけて実在したの。学童社という漫画系の出版社が漫画家の多くをこのアパートへ入居させてたわけ。漫画家が1カ所に集まってたら、こりゃ漫画取りに来るのも楽だもの。
あの手塚治虫も2年間住んでました。
で、憧れの手塚先生のそばで仕事がしたい漫画家がどんどん集まってきた。たとえば、石森章太郎、赤塚不二夫、藤子不二夫(藤本弘+安孫子素雄)とかね。つげ義春やつのだじろうもよく顔を出していたのよ。
この中で世話役というか、みなのまとめ役として存在したのが寺田ヒロオ。演ずるのは、もっくん(本木雅弘)ね。
それにしても、似てる役者、集めてきたなぁ。これじゃ、NHKのドキュメント番組と変わらないじゃん。安孫子素雄なんてくりくりくりそ。赤塚不二夫はバラケツ(瀬戸内少年野球団)じゃんか。
寺田ヒロオは電電公社でノンプロの投手として鳴らしたんだけど、漫画家になりたくて上京したわけ。
当時、まだ22歳。だけど、周囲は漫画オタクだから、漫画以外の世事には疎い。お金がなくなっては、彼のところに電車賃を借りに来たり飯を食べに来たり・・・。で、仲間が集まれば、漫画の話。つまみはキャベツ。
「いつかは手塚治虫になる!」という夢を抱いてるんだけど、芽が出ずに挫折する人、方向を変える人、しがみつく人・・・いろいろよ。
映画の主人公たる寺田にしてもそうだった。
赤塚不二夫さんが売れなくしてねぇ。売れて忙しい仲間の仕事の手伝いばかりしてた。
悩んで寺田さんのとこに相談するわけよ。
「アイデアを1つに押し込んでる。ボクなら5つに分ける」
これ、的確なアドバイスなんです。で、金を貸してたらふく食べてこいって。泣けちゃうよね。
飯が食えないと辛くなるんだよ。お腹いっぱいだと、あんなにあった悩みも少しは小さくなる。寺田ヒロオはこうやって、みなの悩みの聞き役だった・・・自分の悩みはどうすんだ?
「寺さん、古いんだよ。たかが漫画だよ、漫画」
一本気でね、漫画の中に勇気とか元気とか努力とか、そういうものを吹き込みたいと意識してるのが寺田ヒロオなのね。でも、これ、ある意味、自縄自縛になりますな。
石森が売れます。どんどん売れる。藤子不二夫も売れます。赤塚は相変わらず売れない。
前に、赤塚不二夫さんの本を紹介したよね? もうやめようと荷物をまとるてたら、つげ義春さんからアドバイスされて思いとどまったって。
このトキワ荘では批判はなし。だって、欠点はだれより自分がいちばんわかってるんだもの。
「オレなんか、漫画で家族食わせてるんだ。おまえ、昔みたいに1社1社回ってみろよ」とつげから励まされて、赤塚さんはその気になるんだよ。
担当編集者が石森さんの漫画を見て笑ってると、「赤塚、こういうの描かせたらボクよりずっと巧いんですよ」
「ホント? 赤塚君、こういうの描けるんだ」
それが縁で好きなギャグを描かせてもらう。一発で読者を惹きつけちゃう。以来、ヒット街道をばく進します。昨日までやめようとしてた人間が、今日から「スター」になってた。
反対に、筆を折ってトキワ荘をそっと出て行く人間もたくさんいる・・・寺田ヒロオもその1人だったのね。
で、ラストにまた、「胸の振子」か・・・切ないねえ。
♪柳にツバメは あなたにわたし
胸の振子が 鳴る鳴る 朝から今日も
何も言わずに ふたりきりで
空を眺めりゃ 何か燃えて
柳にツバメは あなたにわたし
胸の振子が 鳴る鳴る 朝から今日も♪
この時、寺田ヒロオはまだ20代そこそこですよ。普通なら、これから夢を見る世代。切なすぎて、哀しすぎて、たまらなくなりますね。
けっ、他人に同情なんかされたくないね。また違う夢を見るだけのことよ。こちとら、あんたと違って若いんだぜ。ざけんな、ってか。
で、いきなり、服部良一メロディかよ。気づいてみたら、昭和30年に連れてかれてた。「Always三丁目の夕日」の少し前だよね。
日本も日本人も焼け跡で今日食べるものにも懸命。けど、明日は今日よりきっと良くなってるという、なんかわかんない確信があってさ。そんな時代。
こんなリズムと音楽はいまじゃ聞かないね。それが好きなんやねぇ、市川準という監督は。
オープニングもラストも「胸の振子」? たしかに名曲でおますな。
自慢じゃないけど、この曲だけでもCD3枚持ってまっせ。元々は霧島昇さんの歌。あの鼻声の歌手ですね。私ゃ小学生の頃からの懐メロファンだからね。この世代の歌手についてはめちゃ詳しいの。テレビチャンピオンに出たいくらい。3日くらい講演できるネタあります。
裕次郎、陽水、EPOもカバーしてますな(そういえば、雪村いずみさんも歌ってたな。悪いけど選曲ミス)。やっぱ、裕次郎か陽水? あるいは、アン・サリー?(これもCD持ってます)
どことなくアンニュイでけだるくてさ。平野愛子さんの「港の見える丘」「君待てども」のテイスト。だから、「お元気ですかぁ?」の陽水にはぴったしなんだなぁ。
手塚治虫さんがいうように、まさしく梁山泊。
トキワ荘ちゅうのんは西武池袋線の椎名町にあったアパートね。1952〜1982年にかけて実在したの。学童社という漫画系の出版社が漫画家の多くをこのアパートへ入居させてたわけ。漫画家が1カ所に集まってたら、こりゃ漫画取りに来るのも楽だもの。
あの手塚治虫も2年間住んでました。
で、憧れの手塚先生のそばで仕事がしたい漫画家がどんどん集まってきた。たとえば、石森章太郎、赤塚不二夫、藤子不二夫(藤本弘+安孫子素雄)とかね。つげ義春やつのだじろうもよく顔を出していたのよ。
この中で世話役というか、みなのまとめ役として存在したのが寺田ヒロオ。演ずるのは、もっくん(本木雅弘)ね。
それにしても、似てる役者、集めてきたなぁ。これじゃ、NHKのドキュメント番組と変わらないじゃん。安孫子素雄なんてくりくりくりそ。赤塚不二夫はバラケツ(瀬戸内少年野球団)じゃんか。
寺田ヒロオは電電公社でノンプロの投手として鳴らしたんだけど、漫画家になりたくて上京したわけ。
当時、まだ22歳。だけど、周囲は漫画オタクだから、漫画以外の世事には疎い。お金がなくなっては、彼のところに電車賃を借りに来たり飯を食べに来たり・・・。で、仲間が集まれば、漫画の話。つまみはキャベツ。
「いつかは手塚治虫になる!」という夢を抱いてるんだけど、芽が出ずに挫折する人、方向を変える人、しがみつく人・・・いろいろよ。
映画の主人公たる寺田にしてもそうだった。
赤塚不二夫さんが売れなくしてねぇ。売れて忙しい仲間の仕事の手伝いばかりしてた。
悩んで寺田さんのとこに相談するわけよ。
「アイデアを1つに押し込んでる。ボクなら5つに分ける」
これ、的確なアドバイスなんです。で、金を貸してたらふく食べてこいって。泣けちゃうよね。
飯が食えないと辛くなるんだよ。お腹いっぱいだと、あんなにあった悩みも少しは小さくなる。寺田ヒロオはこうやって、みなの悩みの聞き役だった・・・自分の悩みはどうすんだ?
「寺さん、古いんだよ。たかが漫画だよ、漫画」
一本気でね、漫画の中に勇気とか元気とか努力とか、そういうものを吹き込みたいと意識してるのが寺田ヒロオなのね。でも、これ、ある意味、自縄自縛になりますな。
石森が売れます。どんどん売れる。藤子不二夫も売れます。赤塚は相変わらず売れない。
前に、赤塚不二夫さんの本を紹介したよね? もうやめようと荷物をまとるてたら、つげ義春さんからアドバイスされて思いとどまったって。
このトキワ荘では批判はなし。だって、欠点はだれより自分がいちばんわかってるんだもの。
「オレなんか、漫画で家族食わせてるんだ。おまえ、昔みたいに1社1社回ってみろよ」とつげから励まされて、赤塚さんはその気になるんだよ。
担当編集者が石森さんの漫画を見て笑ってると、「赤塚、こういうの描かせたらボクよりずっと巧いんですよ」
「ホント? 赤塚君、こういうの描けるんだ」
それが縁で好きなギャグを描かせてもらう。一発で読者を惹きつけちゃう。以来、ヒット街道をばく進します。昨日までやめようとしてた人間が、今日から「スター」になってた。
反対に、筆を折ってトキワ荘をそっと出て行く人間もたくさんいる・・・寺田ヒロオもその1人だったのね。
で、ラストにまた、「胸の振子」か・・・切ないねえ。
♪柳にツバメは あなたにわたし
胸の振子が 鳴る鳴る 朝から今日も
何も言わずに ふたりきりで
空を眺めりゃ 何か燃えて
柳にツバメは あなたにわたし
胸の振子が 鳴る鳴る 朝から今日も♪
この時、寺田ヒロオはまだ20代そこそこですよ。普通なら、これから夢を見る世代。切なすぎて、哀しすぎて、たまらなくなりますね。
けっ、他人に同情なんかされたくないね。また違う夢を見るだけのことよ。こちとら、あんたと違って若いんだぜ。ざけんな、ってか。