2002年04月01日「だまされないために、わたしは経済学を学んだ」「応援します、あなたの旅立ち」「ハリウッド・スキャンダル」
1 「だまされないために、わたしは経済学を学んだ」
村上龍著 NHK出版 1400円
最近、頑張ってますね、この版元。きっと責任者が代わったんだろうね。いままで、チャチなものしか出してなかったけど、ここ1〜2年、ときに最近は編集者魂を感じる本を立て続けに出してます。
で、これは10万人メルマガ「JMM」に連載された週刊エッセイだそうです。
メインテーマが「日本経済の回復」なんですね。もっとプロとプロ的な読者の意見、提案、感想などを随所に入れるとさらに面白くなると思うけど、それはメルマガという制約を考えると難しいかも。
1999年3月、公的資金の注入が話題になってました。
このとき、「緊急避難的な危機回避と構造的な犀星が混同して議論されている」と著者はこぼしてました。また、「ペイオフは延期になるかもね」ともこぼしてましたか、これはどちらも当たってますね。
「競争社会はたんに弱肉強食であるとは思えない。これはサバンナなどの生態系で草食動物が肉食動物に捕食されることを意味しますが、インパラはいくら努力してもライオンを捕食することはできません。競争社会では、スキルと知識があれば、インパラがライオンに勝てることもありえます。
学歴や縁故が過度に重要視された時代が終わるのでは、という期待があります」
と述べてます。
さて、どうでしょうか?
いま、日本は限りなく「グローバルスタンダード」という名のアングロサクソナイズされつつありますね。
いわく、競争社会、弱肉強食社会の現出、機会平等と処遇公平の徹底ですね。
これって、日本が営々と築いてきた社会とは水と油だ、と思うんですね。わたしはこの国が責任の所在を求めず、すべてを水に流すやり方に疑問と義憤を感じることが少なくありません。とくに、最近、隠すに隠せなくなった政治家と官僚、落ちこぼれ業界(農業含む)の状況を見るにつけ、さらに沸々と湧いてきます。
アングロサクソナイズとは、サバイバルできる人のためのスローガンです。
弱肉強食で勝つのは上部構造の人たちだけで、ほとんどの日本人が属する中間から下部構造の人たちは負けて放り出されるだけです。このとき、セイフティネットもなければ、昔ながらの共同体意識も互助精神などとうの昔に失った日本は、アフリカのサバンナや熱帯雨林のジャングルよりも生きにくい社会になっていることでしょうな。
銀行、証券、生保といった金融機関は完全に負け組です。いま、株価と公的資金でサポートしないと生きながらえることはできません。生活保護と人工呼吸器でなんとか生きてる状態です。図体ばかりでかいけれども、頭のない組織に「ビッグバン」は早すぎたんですね。
1400兆円の個人金融資産は、ライオン外資とハイエナ政府、それにつらなる落ちこぼれ産業にすべてもっていかれますよ。
人の良い日本人はまた、国に騙されるんだなぁ。
100円高。
2 「応援します、あなたの旅立ち」
大平光代著 講談社 1400円
ご存じ、ベストセラー「だからあなたも生き抜いて」の著者、元・極妻、現・弁護士の大平さんの本です。
サブタイトルが「大平流独学のすすめ」となる通り、これって勉強法の本なんです。
・・・けど、どうしても、「だから、あなたも・・・」タイプになっちゃうんです、内容が(そこがいいんだけど)。
だって、勉強法なんて面白くないもの。勉強法ってのは、1人1人違うわけです。目標の内容もレベルも違うしね。なんたって、キャパが違うでしょ。理解力、洞察力、勘の良さみたいなものがね。だから、勉強法の本て嫌いなの(自分でも2冊書いてるけど)。
でも、著者の人生論がそこかしこに書いてるから読んだのよ。
弁護や裁判で知り合った外国人とのコミュニケーションのために、語学の勉強、はじめるんです。いま、朝4時から6時まで、毎日、やってるそうです。
これも独学なのね。司法試験もそうだったみたい。その前の宅建、司法書士も独学。
たいしたもんですね。
で、彼女の独学のノウハウをまとめておきます。
1 あれもこれも1度にしようと思わない。
2 したいと思うことを全部、紙に書き出す。
3 書き出したものに優先順位をつける。
4 いちばんしたいことが決まったら、どうすれば達成できるか、その方法を書き出す。
5 それをするのに必要なものだけを揃える。
6 必要なモノ以外は、目に入るところに置かない。
7 無理な計画は立てない。
英語では、こんな独学ノウハウを薦めてます。
1 英語を使って何をしたいのか、最初に目的を決める。
2 必要な情報は本から得る。
3 本屋へは目的を絞って、それだけを買いに行く。
4 何度も見直すためにノートを作る。
100円高。
3 「ハリウッド・スキャンダル」
筈見有弘著 近代映画社 1800円
芸能人、とくに銀幕(古いね)の俳優、女優てのは、華やかですけど大変ですなぁ。
これ、全編、映画スターの実話と写真が満載されてます。しかも、道徳的にどうのこうのといった話ではなく、ワイドショーが喜ぶようなゴシップ、スキャンダルめいた(というより、そのものズバリ)内容のオンパレード。
だから、タイトルもこうなったわけですね。この手の話題なら、彼らにとっては日常茶飯。枚挙に暇がないもんね。
離婚と結婚を何回も繰り返し、不倫など数え切れず、マフィアとのつき合いはどっぷり。薬漬け、アルコール漬けの毎日。
羨望と嫉妬の世界。
これでは、ストレスのあまり、短命になるのも理解できるというものです。
「アニーよ 銃を取れ」のジュディ・ガーランドは麻薬中毒。撮影もできないくらいフラフラで、降板を余儀なくされました。
薬でダイエットをし、睡眠にも薬、結局、晩年は悲惨だったようです。
セーター・ガールとして有名だったラナ・ターナーの愛人はマフィアの用心棒。でも、これが娘に殺されちゃうわけ。
あのヴィヴィアン・リー(「風とともに去りぬ」でオスカー。でも「哀愁」が好きだったなぁ)も、53歳で、ロンドンのアパートで1人ひっそりと死んでました。
「明日では遅すぎる」のヒロインは美女ピア・アンジェリでした。ジェームス・ディーンの恋人といわれた人ですね。この人、39歳で自殺してます。わたし、いままで女優でこの人より美しい人を見たことがありません。
時系列でスターと映画、その文化的な背景を解説した好著です。
あぁ、あんな女優いたなぁ、あの俳優は良かったよ。こんな思い出を引き出してくれる本です。
180円高。