2002年03月25日ぼくの神さま
カテゴリー価値ある情報」
田中真紀子を追い落としたヒーローが、翌日には政治生命を危うくするほどの立場に追い込まれ、その鈴木宗男を追い込んだ辻元清美が、今度は詐欺容疑で議員を棒に振るようですね。
禍福はあざなえる縄の如し、因果応報・・・。「死刑執行人もまた死ぬ」という映画を思い出してしまいましたよ。
次はだれが的(まと)にかかるのか。この三文芝居は尽きることなく、主役が次々に代わっていく回り舞台のようです。
でもね、善玉はいつも善玉、悪玉はいつも悪玉。こういう二元論は人間の世界にはありません。悪玉のなかにも善が、善玉のなかにも悪が潜んでいるのが、人間だと思うのです。
人間は多元的な価値があるんですね。だからこそ、成長も堕落もする可能性を秘めているわけです。
さて、第74回アカデミー賞の発表がありました。
作品賞を受賞したのは「ビューティフル・マインド」。でも、今回の目玉は主演男優、女優ともに黒人が取ったことです。
主演男優賞はデンゼル・ワシントン(「トレーニング・デイ」)、主演女優賞はハル・ベリー(「モンスターズ・ボール」)でした。
映画の歴史の中で、黒人が受賞したのは38年前、「夜の捜査線」のシドニー・ポワチエただ1人ですよ。「あなたを40年間追いかけてきました」というデンゼル・ワシントンの言葉は感慨深いですね。
この世界も白人と有色人種という二元論がナンセンスになっていくことでしょう。
「キリストごっこ」が意味するもの
ここで、あなたに世界一素晴らしい映画をご紹介しましょう。
おそらく、アカデミー賞とは縁がないと思いますが、わたしにとって最高の映画でした。
「ぼくの神さま」がそれです。
舞台は1942年のポーランドの片田舎です。すでにナチスによって軍靴の足音が田舎にも聞こえてくる時代ですね。
ユダヤ人狩りが公然と行われ、危険を感じた大学教授は息子ロメックを田舎の知り合いに預けます。ロメック役は「A.I」「シックス・センス」「ペイ・フォワード」の子役といえば、ピンと来るでしょ(ハーレイ・ジョエル・オスメント君ですね)。このシティボーイに絡むのが3人の男の子と1人の女の子。うちの2人の兄弟はロメックが預けられた家の子どもですね。
この兄弟の父親も殺されます。飼っていたブタを町に売りに行き、仲間に指されたわけですよ。「ブタを飼うこと」だけで罪になり、射殺された時代です。密告、裏切りですね。父親は亡骸になって村に帰ってきます。
その日から、弟トロの様子がだんだんおかしくなってきます。「キリストごっこ」に熱中するんですね。自分の掌に釘を打ち付けようとする。雷雨の中、裸で走り回る。木に張り付けにしてくれ、と頼む。自分がキリストになって、子どもたちに洗礼を受けさせようとする。キリストになりきろうとするんですね。そして、死んだ父親や仲間たちを蘇らせようとします。
あなたの神さまはだれですか?
ナチスのユダヤ人狩りを逃れて、人々は汽車に乗ってはこの地に飛び降ります。とくに夜中は絶え間なく、ユダヤ人家族が逃げてきます。すると、それを狙って金品を脅し取る若者も出てきます。それがロメックに知られると、打ちのめし、気絶した彼を湖に捨てます。一緒にいた少女を犯します。
復讐に燃えたトロの兄は父親の形見のピストルでこの青年を殺しに行きます。ちょうど、彼は自分の父親を密告した男の子どもでした。場所は汽車のところですね。そして、山賊をしてる最中に殺します。撃ったピストルをロメックが奪い取った時に、ちょうど、ナチスがやってきて、ロメックは連行されてしまいます。でも、だれもロメックがユダヤ人だとは思いませんでした。
朝になると、たくさんのユダヤ人が汽車で収容所に連行されるところでした。将校は幹部に面白い見せ物があると進言します。ロメックに「あのときのようにやれ」と囁いて、ピストルを持たせ、ユダヤ人から指輪や靴を奪わせます。
「いい根性だ」と賞賛を浴びるロメック。
その中にユダヤ人と間違われて連行されたトロの兄がいました。
「彼は友だちだ。ユダヤ人じゃないよ」
これで助かります。
ところが・・・。汽車の向こう側から様子をうかがっていたトロが車輪の下から滑り込んで、ユダヤ人の群衆の中に入ってしまったのです。
「彼は弟だ」「ユダヤ人じゃないよ」と必死に叫びます。ナチスの軍人もトロに聞くのですが、彼は「ぼくはユダヤ人だ」と囁いて収容所行きの汽車に乗っていくのです。
ロメックのほうこそ、ユダヤ人でした。しかし、彼は咄嗟の演技で助かります。
トロはどうして、収容所行きの汽車に乗り込んだかわかりますか? ロメックにとっての神さまとは、いったいだれだと思いますか?
トロかもしれないし、キリストかもしれないし、亡くなったであろう両親かもしれないし、あるいは平和こそが神さまなのかもしれません。
ところで、あなたには神さまがいますか?