2008年01月10日「インテリジェンス人間論」 佐藤優著 新潮社 1575円
この人、なんでもインテリジェンスをつけるようになっちゃったね。
まっ、いいんじゃない。「燃える闘魂!アントニオ猪木!」の燃える闘魂というようなもんだ。枕詞ですな。
これ、たんなる人間論だと思ってたのよ。けど、ちとちがいます。やっぱ、こりゃ、インテリジェンス論です。つまり、看板に偽り無しなのよ。
まず、取り上げられている人物です。読者の期待に応えて鈴木宗男さんを皮切りに、橋本龍太郎、小渕恵三、森喜朗、プーチン、蓑田胸喜、ラスプーチン、ゾルゲ、金日成、有末精三、イエス・キリスト・・・ほかに文中、登場するのは米原万里、バルトなどの各氏。
そうそう、お間抜け人間として、外務省の現役幹部、OBOG、それと川口順子元大臣等も色を添えてます。
この部分、叱られると丸くなっちゃうアルマジロ高官とか、いつもの常連さんも登場。
けどさ、外務省って、もしかすると旭山動物園より面白いんじゃないか。行動見学できたらいいね。
さて、鈴木宗男さんですけど、佐藤さんは熱いな。でも、かなり、鈴木さんという人は身の回りを綺麗にしてたみたいですな。
鈴木さんは、先の参院選に新党大地として、アイヌ民族の女性学者、多原香里さんを擁立しましたね。
なぜか? やっぱ、北方四島返還の布石なのね。つまり、アイヌ民族を先住民族と日本政府にまず認めさせる。で、「先住民族としての北方四島返還」という新戦略を構築したわけね。カネをかけずに国際法を味方にする効果的な戦略ですよ。
この問題については、橋本−エリツィンでうまくいきそうだった。
けど、橋本さんは選挙に負けて退陣。エリツィンは健康上の問題で失脚。で、後任のプーチンはガリガリの強いロシア復活論者
だからね。
にっちもさっちもどうにもブルドッグ。
では、どうすればいいのか? 現時点で、ロシアが四島一括返還を100%呑まないなら、問題を段階的に解決することが現実的なのね。
1957年、日ソ共同宣言で平和条約締結後、歯舞群島と色丹島を日本に引き渡すことをロシアは日本に約束してる。ここから攻める。
この日ソ共同宣言。それから、択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島からなる北方四島の帰属に関する問題を解決して平和条約を締結する・・・という交渉の土俵を定めた「1993年の東京宣言」の有効性が文書で確認された「2001年のイルクーツク声明」がもっとも有利なわけ。
森喜朗さんという政治家はこのへんがわかる人だった。けど、橋本龍太郎さんはわからなかった。頑固というか、原則論者というか、融通が利かない。事態が動いているということがわかんない人なのね。
面白かったのは、終戦時、大本営に優秀な情報担当の参謀がいたこと。
1945年8月28日、厚木飛行場に米軍機着陸。マッカーサー元帥受容れの先遣隊が着いたわけ。米軍隊長はチャールズ・テンチ大佐。
この人の報告如何で日本の運命はどうとでもなる。
日本側は受容れ責任者として、有末精三氏(陸軍参謀本部第二部長)−情報担当をおくるのよ。
有末部長はたった1つの重要案件を切り出す。それは天皇制護持でもなければ、日本軍の武装解除でも戦犯問題でもない。
いったいなにか?
軍票問題なのね。
米軍が軍票を使ったら、日本はあっという間にハイパーインフレに見舞われる。こうなったら、日本はもたない。絶対に使用させてはならない。
これが優先順位の筆頭なの。
で、交渉に臨むわけだ。
「もし使用したら、社会経済秩序は混乱。共産革命が起こる。革命が起これば・・・」
「元帥からは日本人とのトラブルを避けるように命じられた。軍票は持ってきているが使わない。その点は安心してくれ」
「では、お口に合うかどうかわからないが、サンドウイッチを150人分準備した。日本のビールも準備した」
「食糧はすべて携帯しているから心配には及ばない。軍では酒類は禁止している」
ところが、米軍の下士官たちはラッパ飲みで酒盛りをはじめちゃう。しかも栓など歯で抜いちゃう。ビールを仲間にも渡さず1人占めするヤツらばかり。
こんなものか・・・。
なぜ、有末はサンドウイッチなど用意させたのか? なぜビールを用意させたのか?
これが情報参謀なのよ。リトマス試験紙なのね。
降伏したとはいえ、サンドウイッチとビールくらいは完璧に用意する。まだ日本には余力があるぞ、というメッセージね。
「米軍の対応如何では、日本人はゲリラ戦を展開するかもしれない。その意思も能力もある。思ったよりも事態を理性的かつ論理的に判断している。しかも軍票を使ったら共産革命まで起こりかねない、というシナリオを出してきた」
大佐はバカじゃないからそう受けとったはず。
一方、ビールは米軍の規律をチェックするためのもの。この飲み方では、軍規はかなり乱れているぞ。
軍規の乱れは、即、日本婦女子に対する暴行事件で現れた。もちろん、こんな事件はGHQによって封印された。
けど、有末は軍法会議にかけろとあの手この手で仕掛けるわけ。「人権尊重」というのがアメリカの大義名分だから、ここを突いた。
いやはや痛快。戦争に負けたとはいえ、プライドは失っちゃダメだよな。
まっ、いいんじゃない。「燃える闘魂!アントニオ猪木!」の燃える闘魂というようなもんだ。枕詞ですな。
これ、たんなる人間論だと思ってたのよ。けど、ちとちがいます。やっぱ、こりゃ、インテリジェンス論です。つまり、看板に偽り無しなのよ。
まず、取り上げられている人物です。読者の期待に応えて鈴木宗男さんを皮切りに、橋本龍太郎、小渕恵三、森喜朗、プーチン、蓑田胸喜、ラスプーチン、ゾルゲ、金日成、有末精三、イエス・キリスト・・・ほかに文中、登場するのは米原万里、バルトなどの各氏。
そうそう、お間抜け人間として、外務省の現役幹部、OBOG、それと川口順子元大臣等も色を添えてます。
この部分、叱られると丸くなっちゃうアルマジロ高官とか、いつもの常連さんも登場。
けどさ、外務省って、もしかすると旭山動物園より面白いんじゃないか。行動見学できたらいいね。
さて、鈴木宗男さんですけど、佐藤さんは熱いな。でも、かなり、鈴木さんという人は身の回りを綺麗にしてたみたいですな。
鈴木さんは、先の参院選に新党大地として、アイヌ民族の女性学者、多原香里さんを擁立しましたね。
なぜか? やっぱ、北方四島返還の布石なのね。つまり、アイヌ民族を先住民族と日本政府にまず認めさせる。で、「先住民族としての北方四島返還」という新戦略を構築したわけね。カネをかけずに国際法を味方にする効果的な戦略ですよ。
この問題については、橋本−エリツィンでうまくいきそうだった。
けど、橋本さんは選挙に負けて退陣。エリツィンは健康上の問題で失脚。で、後任のプーチンはガリガリの強いロシア復活論者
だからね。
にっちもさっちもどうにもブルドッグ。
では、どうすればいいのか? 現時点で、ロシアが四島一括返還を100%呑まないなら、問題を段階的に解決することが現実的なのね。
1957年、日ソ共同宣言で平和条約締結後、歯舞群島と色丹島を日本に引き渡すことをロシアは日本に約束してる。ここから攻める。
この日ソ共同宣言。それから、択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島からなる北方四島の帰属に関する問題を解決して平和条約を締結する・・・という交渉の土俵を定めた「1993年の東京宣言」の有効性が文書で確認された「2001年のイルクーツク声明」がもっとも有利なわけ。
森喜朗さんという政治家はこのへんがわかる人だった。けど、橋本龍太郎さんはわからなかった。頑固というか、原則論者というか、融通が利かない。事態が動いているということがわかんない人なのね。
面白かったのは、終戦時、大本営に優秀な情報担当の参謀がいたこと。
1945年8月28日、厚木飛行場に米軍機着陸。マッカーサー元帥受容れの先遣隊が着いたわけ。米軍隊長はチャールズ・テンチ大佐。
この人の報告如何で日本の運命はどうとでもなる。
日本側は受容れ責任者として、有末精三氏(陸軍参謀本部第二部長)−情報担当をおくるのよ。
有末部長はたった1つの重要案件を切り出す。それは天皇制護持でもなければ、日本軍の武装解除でも戦犯問題でもない。
いったいなにか?
軍票問題なのね。
米軍が軍票を使ったら、日本はあっという間にハイパーインフレに見舞われる。こうなったら、日本はもたない。絶対に使用させてはならない。
これが優先順位の筆頭なの。
で、交渉に臨むわけだ。
「もし使用したら、社会経済秩序は混乱。共産革命が起こる。革命が起これば・・・」
「元帥からは日本人とのトラブルを避けるように命じられた。軍票は持ってきているが使わない。その点は安心してくれ」
「では、お口に合うかどうかわからないが、サンドウイッチを150人分準備した。日本のビールも準備した」
「食糧はすべて携帯しているから心配には及ばない。軍では酒類は禁止している」
ところが、米軍の下士官たちはラッパ飲みで酒盛りをはじめちゃう。しかも栓など歯で抜いちゃう。ビールを仲間にも渡さず1人占めするヤツらばかり。
こんなものか・・・。
なぜ、有末はサンドウイッチなど用意させたのか? なぜビールを用意させたのか?
これが情報参謀なのよ。リトマス試験紙なのね。
降伏したとはいえ、サンドウイッチとビールくらいは完璧に用意する。まだ日本には余力があるぞ、というメッセージね。
「米軍の対応如何では、日本人はゲリラ戦を展開するかもしれない。その意思も能力もある。思ったよりも事態を理性的かつ論理的に判断している。しかも軍票を使ったら共産革命まで起こりかねない、というシナリオを出してきた」
大佐はバカじゃないからそう受けとったはず。
一方、ビールは米軍の規律をチェックするためのもの。この飲み方では、軍規はかなり乱れているぞ。
軍規の乱れは、即、日本婦女子に対する暴行事件で現れた。もちろん、こんな事件はGHQによって封印された。
けど、有末は軍法会議にかけろとあの手この手で仕掛けるわけ。「人権尊重」というのがアメリカの大義名分だから、ここを突いた。
いやはや痛快。戦争に負けたとはいえ、プライドは失っちゃダメだよな。